【Investor's Sight #1】「未来に向けて『一緒に踊る』」ー荻原国啓さんとの対話
株式会社Liquitousは2022年5月に、さらなる事業促進にむけた資金調達を行いました。それぞれの分野でご活躍の皆さまに出資いただき、新たなシナジーの創発も展開していきます。
出資という形で、弊社の取り組みを応援いただいている皆様にインタビュー「Investor's Sight」を行い、弊社に期待することなどを伺いました。
今回お話を伺ったのは、社会インパクトある起業家輩出のために、スタートアップ企業・起業家へのインキュベーション、エンジェル投資、経営支援事業を展開する、ゼロトゥワン株式会社 代表取締役社長・荻原国啓さんです。
――Liquitousの事業に対する率直な印象は
「新しい民主主義のDXに貢献する事業」「合意形成のプラットフォーム事業」だと聞いて、将来の社会にとって非常に大切な大きなテーマであるとともに、非常に難しいチャレンジになるだろうな、というのが率直な印象でした。
社会にとって大切な大きなテーマは、たいていの場合、すでに社会で長く話題になっています。「よりよい民主主義のあり方」や「新しい公共のあり方」というものは、活発に提唱されはじめてから十数年が経ちますよね。民主主義や行政には、市民セクターはじめ様々な立場の連携がこれまでもずっと求められきたと思います。誰もが長年課題だと感じているが、浸透させることが難しいとてもチャレンジングなテーマだな!と思いました。
また、Liquitousの事業を聞いた時に、自分が貢献したいなと思って取り組んでいる社会的なテーマの中に、「市民性を醸成すること」や「ウェルビーイングを高めること」があり、非常に関連する事業だなとも感じました。もし、Liquitousのプラットフォームが浸透したら、市民がもっと積極的に社会参加するようになり、ウェルビーイングを高めることにつながってくるんじゃないか、と期待が持てワクワクしました。
Liquitousの事業の難しさは、単純にシステムを導入して、地域のモデルとして納品すればハイ終わり、ではないところです。
Liquitousの取り組みは、それぞれの自治体や組織が合意形成したい目的やテーマを前に進めるために必要な住民・行政・政治家など様々な立場の関係者に対して有用性を理解していただいた上で、その良さを根付かせていく必要がありますよね。息の長い活動をしなければならない事業です。
なので、ベンチャーが取り組むには資金面でも体力面でも極めてビハインドが高いチャレンジングな事業とも言えますが、Liquitousには、とても大きなポテンシャルがあると思います。そもそも今の社会では「社会を作っていく行為の主導権がどこにあるのか?自分たち一人一人である」という民主主義の根本が揺らいでいる。わたしたちには思考停止して諦めムードが広がってしまっている。いま、わたしたちの多くは政治家や行政を批判するだけで、変えていこうとする主体者が少ない。この課題に一石を投じる役割がある。この現状を変えていく大きなポテンシャルがあると思っています。
――もちろん既存の選挙の仕組みも重要で、弊社としては、決して直接民主主義を目指しているわけではありません。
やはりどうしても数年に一回の選挙だけだと、意見を表明するという行為が“非日常”のものになってしまいかねません。けれども行政や政治で決められていくことに意見や意思を表明するということは、本来もっと日常的に行われるべきですね。
――逆にこうしたベンチャーだからこそ、この領域に取り組む意義のようなものを感じていらっしゃいますか?
ベンチャーは起業時はとても脆弱な存在です。しかし裏を返せば、いろんな資源を「もっていないこと」が大きなアドバンテージになり得ます。自分達をとりまく環境の中で、リソースが“ない”ということを悲観しないマインドセットが極めて重要です。資金がないからこそ使い道の優先順位をしっかり考えるし、人がいないからこそ自分達で問題の解像度を上げるために徹底的に勉強してトライすることができると思います。リソースが限られているからこその創意工夫やハングリー精神は、大きな会社では生まれない力です。
またLiquitousの事業はこれまでの社会の構造的なジレンマや課題に対して切り込む存在です。長年の蓄積や既存の枠組みの中で運営されている大きな組織や事業体にはどうしても実行できないこともたくさんあるはずです。その機会を最大限に活かしていけばいいと思います。
――投資という形でLiquitousの事業を「応援」しようと決断いただいた背景・経緯は?
Liquitousのような社会的な事業は、単にDXで効率化しようといったスローガンだけだとすぐに終わってしまうと思います。こういった領域こそ、使命感を持ってなんとか今よりもっともっと良い社会を実現しよう!民主主義をDXしよう!というピュアな熱意を持つことが極めて重要だなと思ってます。僕の中でそんな熱意をもった起業家を応援したいし、推進したい!という強い思いがあるので、栗本さんたちの活動にシンパシーを感じました。若い人がピュアに持っている熱意に常に期待を持っています!
今は社会に実現させるハードルが高くても、未来に向けてムーブメントを起こしていこう!という動きに一緒に加わりたいですね。応援投資させていただくことを通じて、いわば「一緒に踊る」感じ。その一員になれるといいなと思いますね。
――荻原さんと、Liquitousの関係の理想像は、どういったものでしょうか?
事業ですから、もちろん健全に運営していかなければならないですが、なにより今描いているビジョンを実現していくことがLiquitousにとっての成功だと思います。その理想像を投資家サイドもぶらさずに同じ視点を共有することがまずは重要です。その上で、経営上の現実も一緒に見つめていかなければなりません。うまくいかない時に、易きに流れたり、無意味な意思決定をしたりということが経営ではありがちですけれども、お互いの関係として「流されない経営」をしていかなければなりませんよね。どちらかが弱気になっている時には、鼓舞していかなければならないと思います。
事業をやっていく上では、短期的な目線だけでなく、長期的な視野も常に同時に持っていないといけない。流されない経営というのは、足元ばかり見て長期的なミッションを失ってはいけないということ。「いまライバルと比べて勝つか負けるか」といった低い視点ではなく、「社会にとっての共通善」実現のために多くの関係者をまきこんでいくと味方は自ずと付いてくると思います。