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生と死と食とセックス
今朝、眠い目を擦りながら娘と朝食を食べていた。
娘はレーズンパンを、私はダイエットのために沼(ボディービルダーの減量食)を。
沼って栄養価もちゃんとあるし、しっかりお腹に溜まるんだけど何故か満たされない。
お腹は満たされるのに、何か物足りなさを感じるなんてセックスみたいだ、と思う。
タイプの人とセックスをしないと気持ちまで満たされないのと同じように、やっぱり白米を食べないと満たされない。
朝からそんなことを考えていると、ママ友のグループLINEの通知が鳴った。
ロック画面に表示されているメッセージの冒頭だけ取り敢えず確認すると「悲しいお知らせです」
と。
何だ?と思ってすぐに開いて確認してみると、娘と同じクラスのママが昨日亡くなった、と役員のママからの連絡だった。
幼稚園入園と共に膵臓に癌が見つかり、ずっと闘病をしていたがついに命の炎が燃え尽きてしまったようだ。
幼稚園で会えば必ず会話をする、仲の良いママだった。
子供同士も仲が良かった。
ただ最近は、明らかに体調が悪そうだった。
髪もウィッグになったし、眉毛もなかった。
元々華奢な人だったが最近は更に細くなっていて、先日のお遊戯会では旦那さんに支えられながらなんとか立っている、という状態だった。
だからといって「どこか悪いの?」なんて聞くことも出来ず、陰ながら回復を願っていた状態での残念な知らせ。
しばらく涙が止まらず「ママ、どうしたの?」と娘が心配そうに私を覗き込んだ。
さっきまで「早く食べちゃいなさい」と娘に注意していたが、もうそんな言葉も出てこない。
彼女は自分の子供とこうやって朝の何気ない時間を過ごすことが出来ないんだ。
今日あなたが無駄に過ごした一日は、昨日死んだ人がどうしても生きたかった一日。
なんて言葉をよく聞くが、まさにそうだ。
私が娘のマシンガントークに耐えきれず「あーうるさい!!マジで1人になりたい!!」と思っていたあの時間は、彼女が喉から手が出るほど欲しかった時間だっただろう。
もう寝る時間なのに覚醒して全然寝ない娘に対して「早く寝てくれ…」と思っていたあの時間も、彼女にとってはもっとこの時間が続けば良いのに、と願った時間だろう。
もちろん幼くして母親を亡くしてしまった娘のお友達は可哀想だと思うが、同じ母親として、まだ幼い我が子を残して逝く辛さを想像すると胸が張り裂けそうになる。
今まで、早く自立してもらうためになるべく支度は娘自身でさせていたが、今朝は全てやってあげた。
今私が突然この世を去ることになったらきっと、もっと娘を甘やかしてあげたかったと後悔するだろうと思ったから。
バスに乗って行った娘を見送り、家に戻るとUくんから「今日夜何やってるー?」と相変わらずのLINEが来ていた。
いつもなら「空いてるよ」とすぐ返事をするところだが「死」という概念に全て精力を持っていかれ「今日は家族で出かける予定入っちゃってる」と返した。
SEX AND THE CITYでミランダの母親が亡くなったと聞いて、サマンサがしばらくセックスをしてもイケなくなってしまった回を思い出した。
2月は私の親友の命日もある。
彼女も若くして癌でこの世を去った。
最近全然がん検診に行けてないから、久し振りに行かなきゃ。
私は絶対に健康でいなければならない、と改めて思う。
娘の支度に手間取ることも。
明日お弁当じゃーんめんどくさーって明日のこと考えてることも。
満たされねーって思いながら食事をしてる時間も。
もちろんセックスしてる時間も。
全て、生きてるってこと。
感謝して生きるほど出来た人間じゃないけど、せめて実感して生きていきたい。
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