オケヨという女・皇嗣家から嫁もらうまで、59年目の人生①~生誕は昭和41年。ネズのお告げで生まれた女
※本連載はドキュメンタリー強めの小説です
※サムネイラスト:カピ子
昭和41年8月、熱い日差しが地上を照らす中、ウメコは産院へと急いでいた。もうすぐ孫、のちに「小室オケヨ」となる子が、この世に生を受ける知らせを聞き、胸をざわつかせながら駆けつけているのだ。彼女は56歳。鎌倉の古びた寺で、三畳一間の土間を与えられ、下駄職人の妻として暮らしている。
そんな彼女が「丸姫さま」の存在を知ったのは、ほんの1年前のことだった。丸姫さまは前の年、大山ネズの神様から直接言葉を受け取るようになり、鎌倉市小町の片隅に小さな神殿を兼ねた住まいを作った。以来、地元では「神の使い」として知られるようになり、人々が相談に訪れるようになった。
ウメコもその一人だった。養女のヤソが妊娠したとき、不思議な胸騒ぎに駆られ、思い切って丸姫さまを訪ねたのだ。そのとき、彼女はこんな言葉を告げられた。
「あんたの家に生まれる子は、並みのややこじゃないよ。大きな波を呼び寄せるややこじゃ。丙午の女として生まれて、この世を動かす特別な子だ!」
丸姫さまの低い声は、深く胸に響く力を持っていた。その言葉を聞いた瞬間、ウメコの心は揺れ動いた。「丙午」――火の馬の年に生まれる女が激しい宿命を背負うという言い伝えが頭をよぎり、不安と期待が入り混じった感情が胸を満たした。
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