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【再発掘・雑誌が伝える意外な人間模様⑫】農村嫁(Y県S地区)53人万引きで逮捕される
こんにちは、ゆかりんこと、篠原由佳です。
昔の雑誌に掲載されている面白い話題や、気になった話題を
皆様にご紹介する読み物です。
いまやネットで検索すれば、大抵の情報が入ってくる時代ですが、
検索しても「出てこない」とか、「詳細が分からない」とか、
活字でしか残っていないような貴重なお話を深掘りしつつ、
皆様と共有できればというシリーズ。
今回は、農家の嫁53人の万引きです。
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旧正月に農家の嫁53人が万引きで逮捕
今回は、いきなり引用から入りますが、
まずは農家の嫁と刑事のやり取りをご覧ください。
###引用開始###
「だんなさま、どうかかんべんして下さい。おらァ手袋を盗む気持ちはなかったッス」
「そんなウソいっても駄目だ。お前がマントの下にそっとかくしたのを、この目でみてたんだからな。欲しければ金出して買ったらいい」
「金なんかないッス」
「旧のお正月だというのに、金がないというのか。ばあさんからもらったらどうだネ」
「おらのおしゅうとさんは、嫁はこづかい銭はいらないってくんえっす。だけども、このこどもがシモヤケで手をはらしているから、手袋が欲しいってみていたら……」
「とにかく、家の人に金を持って、引きとりにきてもらうより方法はないネ」
「そればっかりはかんべんして下さい。おらがこんなとをしたと分かれば、家を追いだされます。死ぬよりほかにないッス。どうか、ないしょにして下さい」
(『週刊サンケイ』1960.3.21号)
お分かりのとおり、これは万引きをした農家の嫁と、
それを取り調べている刑事の会話です。
1960(昭和35)年の新正月から旧正月にかけてのこと。
Y県のS警察署が万引の特別捜査を行いました。
すると、驚くことに、S市内の商店街では、
農家の嫁が53人も現行犯で捕まったのです。
なぜ彼女たちは万引きをしてしまったのかーー。
そこには農家の嫁が置かれていた厳しい現実がありました。
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