「なんでも帳」からイラストができるまで
私は大学時代に彫刻を専攻していたのですが、ひょんなことからデザインもするようになり、そのままデザイナーという職業に落ち着きました。そんな私ですが、今まではポスターやチラシなど主にグラフィックデザインをメインにいろんなことをしていたんですが、入社してからイラストを描く機会が一気に増えました。今回は入社してからいくつか担当させてもらったイラストの中から1つ取り上げて、ラフ案から完成までにつてお話したいと思います。
1. 描き始めるまえに
さて、イラストを描こうとなった時に「よし!じゃあイラストを描くぞ!」と言っていきなりは描き始めることはしません。私の場合は、最初は調査から始まります。例として直近で描いたイラストについてお話したいと思います。
弊社は外国人人材紹介サービスをいくつか展開しているのですが、その中でも外国人採用をもっと身近にするメディア『jopus biz(ジョプス ビズ)』の特集カテゴリーの見出しイラストを担当させていただきました。
『jopus biz』は「外国人を採用したいけれども、どうやって採用すれば良いのか分からない」という採用者のためのメディアです。なので、「採用者側から見てビジネスとしての誠実さも感じさせながら、取扱説明書のようにわかりやすく親しみやすいイメージを連想させるようなイラストがいいなぁ〜」ということで、まずはそのテーマに合うようなイラストを調査することから始めました。(このコンセプトを決める会議については、また別の機会にお話ししたいと思います。)
調査は、主にGoogleの画像検索やPinterestなどを使います。私はもっぱらPinterestを使用しています。Pinterestには『ボード』という気になったイラストを集めておけるツールが付いているので、そこに参考になりそうなイラストをまとめておきます。その中からまた選別して「こんな感じのイラストでいこう!」と方向性が決まったらラフ案を描き始めます。
2. 「なんでも帳」
「なんでも帳」というのは、イラストのラフ案から会議のメモまで”なんでも”そこに書き込むので「なんでも帳」と私が勝手に呼んでいるノートです。「なんでも帳」と言いながら微妙にこだわりがあって「エントランジェ ディ コスタリカ」のA4サイズのリングノートを「なんでも帳」として使っています。
この「なんでも帳」にラフ案を描いていきます。中身は写真のようになります。汚いので申し訳ないですが、こんな感じで描いています。今後はもっとラフ案を綺麗に描けるようになりたいですね……。
基本的にはシャーペンか鉛筆でラフ案を描きます。今回はシャーペンで描いています。ラフ案なのでゴリゴリとたくさんラフ案を作っていきます。時間があれば、いろんな種類のラフ案を試し書きしながら「これはいいんじゃない?」というものを選ぶ作業もします。時間がないときは、2、3パターンぐらいのイラストを用意して、それらのラフ案を持ってメンバーに相談に行きます。
で、先ほどのラフ案から選ばれたものだけ、ペンで書き直します。ペンで書き直すのは、写真を撮ったあと、Illustratorにその写真を取り込んで上からなぞったりするのですが、その際に線にムラがあると描き起こす時に大変だからです。あと、太いペンを使って線の太さを変えてイラストの雰囲気がどれぐらい変わるかも確かめたりします。こんな感じで、ラフ案を綺麗にしていきます。複雑なラフ案ではない場合、スマホで撮ってメール経由でパソコンに送信します。複雑なイラストの場合はちゃんとスキャンします。
3. Illustratorでイラストを作る
こんな感じでラフ案をIllustratorに取り込んだら、一番下のレイヤーにラフ案を敷いてその上からなぞるようにしてイラストを描いていきます。(画面上ではわかりやすいように上に置いていますが、本来は一番下のレイヤーに敷いています)
そして、一番最初に出来上がった草案がこちらになります。誠実さと共に親しみやすさを感じさせるような鮮やかな青色をメインカラーにしながら、『jopus biz(ジョプス ビズ)』のイメージカラーであるオレンジをポイントして利用しています。
草案のパターンを2つにしたのは、線画をメインにして少しコミカルな雰囲気を強くして親しみやすさを強調させようか……もしくは、採用者側向けのサービスということで、他の『jopus』サービス(jopus, jopus scout, jopus career)とは利用者の年齢層が若干ズレるので、より大人っぽさを押し出した雰囲気にするか迷ったからです。
迷ったときはすぐにデザイン部の皆さんに相談します。私は自分の作ったデザインを言語化するのが下手くそなので、相談の時が一番緊張します。相談するときは「どうしてこんなデザインにしたのか」「この色はなぜ選んだのか」などデザインの理由を説明しながら、自分が今悩んでいる相談事を話します。
実際の相談ではいろんな意見をもらえます。「外国人感がないよね」「ここまでコミカルでなくてもいいんじゃない?」「もっと生身の人間に寄せてもいいかもね」「青色が鮮やか過ぎるかも」「画面いっぱいに絵があって窮屈な感じがする」などなどです。それらの意見を参考にして、今度は修正作業に入ります。それが次の草案になるわけですね。そうやって、相談→修正→相談→修正……というサイクルを繰り返します。
4. 最終確認
そうして、修正を何度か繰り返して最終的にここに落ち着きました。特集カテゴリーの見出しイラストであるので「この画像をクリックすると記事のまとめページにいけるよ〜!」という意味で、三角形の目印を右上につけました。イラストも最初のものより、よりリアルな人間らしいものに変更し、髪の毛や眉毛、肌の色などで多国籍感を出すようにしました。
5.まとめ
私の場合は、こんな風にしてイラストを作っています。おそらくイラストレーターさんのラフ案の描き方とは大きく異なるかと思います。イラストレーターさんの場合はもっと丁寧に描いていると思います。私の場合はラフ案が本当にラフなので……今後はもう少し丁寧かつスピードをあげてラフ案を描けるようになったらいいなぁ、とは思っています。今後もいろんなところでイラストを描く機会が増えそうなので、まずは今使っている「なんでも帳」をイラストやデザインのラフ案でいっぱいにできるようにしたいですねぇ。