#3 第1段階【出会い】
「お前は生まれたばかりの頃は光輝いていたのに、いっぱい鎧を重ねて着込んでしまってるんだ。」
これは亡くなったパートナーに言われた言葉。
どうしたらいいの?
ひとりでどうしたらいいの?
一緒に歩いて行こうと思ってたのに!
着込んだ鎧、どうやって外すの?
わかんないよ!
鎧なんて全部脱ぎ捨てて、元の光輝いてた自分に戻りたいよ!
なんで私だけ幸せになれないの?
こんなに頑張ってるのにーーー
もういい加減幸せになりたいよ!!!
打ちひしがれ、力も湧かず、食欲もない。
でもいつまでもボーッとしてられない。
結婚してないのに会社がくれた1週間の忌引休のうちに、いろいろ片付けなくちゃ。
そうして体を動かしているうちに、会社は辞めようと心のうちに決断した。
辞めてはいけないと、頑張ってきたけれど望む幸せにはなれない。
もう会社に役立てる何かが出来るとも思えない。
このまま続けてもただ時間の浪費になるだけのように思えた。
とはいえ、辞めて何をするか。
出来ると思えるものはなにもなかった。
とりあえず大好きなリフレクソロジーの独学を始めた。
またそのときたまたま知った、高校生に社会人がお話するボランティアにも参加することにした。
何とかして生きる意味を見つけたかった。
二〇一一年三月。
そんな時に起きた東日本大震災。
ボランティアが終わり、仙台駅に帰る東北本線の車両内で私は被災した。
車両内で数時間、降りて歩いて帰宅するまでまた数時間、辺りはすでに真っ暗になっていた。
街灯の消えた空には美しい星々が瞬いていた。
一人で避難所に行くのも少し不安で、玄関に一番近い部屋にあった毛布にくるまって夜を明かした。
翌朝目を覚ますと、まるで大きな手が部屋ごと振りまわしたかのように室内はひっちゃかめっちゃかになっていた。
大切に少しずつ集めていたティーカップはすべて割れた。
大好きな食器も割れた。
飾っていたスワロフスキーも壊れた。
パートナーとの思い出のものも壊れていた。
ビスケット何枚かとペットボトルの水、それだけあれば十分だった。
お腹は空かなかった。
震災後初のボランティアは六月だった。
その女性は同じボランティアメンバーだった。
とても人当たりのいいその女性は元ファーストクラスのCAさんで、
コミュニケーション下手な私と行き帰りのバスの中で親しく話してくれた。
バスを降りると彼女は、勤務場所がすぐ近くだと言い、お茶に誘ってくださった。
珍しく私はそのご好意を受けることにした。
この女性の紹介で、私は人生の師と出会う。
師が伝える教えは自分が求めていたもののように感じて、なにかとても惹かれた。
もっと学んでみたい!と心が走り出していた。
それまでの経験から短期間の学びと実践では私の人生が変わるとは思えなかった。
みっちり学びたい!
私は一年間、師の元で指導を受けながら実践を重ねることにした。
そして二十年間勤めた会社を辞めた。
師の学びがスタートするとすぐに、私は高くなっていた鼻を付け根からへし折られた。
そしてそれは一度や二度ではなかった。
「Ruruさんは精神年齢が小学生なんですよ。どうするんですか四十にもなって!」
みんなの前で言われてショックだった。
(なによっ。私の何がわかるのさっ、ふんっ。)
またあるときは
「あなたはモテないんですよ。」
(どーせモテませんよ。私だってあなたのこと好みじゃないしっ。へんっ。)
「あなたは人生で一度たりとも貢献したことがないんですよ。どうするんですか?」
(うっ・・・)
これまで私は自分のことをなかなかいい奴だよね?と慰めてきた。
人のことも考えてるし、会社のことや社会のことも考えてるし、と。
でもこれは自己評価。
師の教えの中にこういうものがある。
「自己評価が高いときは他者評価は低く、自己評価が低いときには他者評価は高いものだ。世の偉人たちはみな自己評価は低かった。」
まさにこの時の私は自己評価が高いので、周りからはなんだアイツ、と思われていたのかもしれない。
あるいはそんなことすら思われないほど人気はなかった。
これらの言葉はあまりにも衝撃的で、ひとつひとつが矢のように刺さり、恥ずかしさや怒りを通り越して頭は真っ白になった。
頭から爪先まで凍ったように冷たくなり、息の吸い方すら忘れたかのようになることもあった。
やばい。。。
どうしよう。。。
どうしたらいいんだろう。。。
ちゃんと貢献してきたつもりだった。やり方が違ってたの?
だとしたら今までのやり方を全部捨てて一からやり直さなきゃ!
いつも頼まれた仕事をやりたいかどうか、出来るかどうかを考えて受けたり断ったりしてきた。
そんなことをしてる場合じゃない。
今まで積み上げたと思ってた実績、ちっぽけな自信、出来るとか出来ないとか、やりたいとかやりたくないとか。
そういったこと一切合切切り捨て、まっさらにして一から何でもさせてもらおう!
それから師のところで学んでいる人たちに同行して頭を下げ、頼まれるお手伝いはなんでもさせていただいた。
エクセルで資料作成をしたり、音声テープを起こす作業をしたりした。
今までやってきた仕事に近い実務作業はできる自信があると思っていたけれど、
実際には師の望むクオリティにはまったく到達できなかった。
そしてやればやるほど疲れることに気づいた。
あるとき、いままでやったことのない大舞台でのナレーションのお仕事を頼まれることになった。
絶対出来ないと思っていたのに、いざ終わってみたらプロの方からも褒めていただいた。
自分が出来ると思ってたことをするよりも、周りからのアドバイスを謙虚にお受けした方が喜ばれることに気づいた。
こうして師の教えの”自己評価と他者評価は真逆になる”ことを体感することができた。
その他にも一流ホテルでのセッションを見せていただくことで、一流の環境や所作を経験したり、
徹夜して大きなイベントの準備や資料作りのお手伝いしたり、
様々な幅広い経験をさせていただきながら、一年が経とうとしていた。
#4 第1段階【論理の積み重ねの先に真理はない】へ続く
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