EPA,DHAは心血管疾患リスクの低減に有効
本日は、エイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)を豊富に含むω-3系脂肪酸が、心血管疾患リスクの高い人に有効である、という発表がありましたのでご紹介いたします。
▶論文概要
エイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)を豊富に含むω-3がHDL機能に及ぼす役割を調査するため、心血管疾患リスクの高い147人をω-3群(魚油1gずつ-EPA370mgとDHA230mg、1日3回、EPA+DHA合計1,800mg)とω-6群(ひまわり油1gずつ-リノール酸760mg、1日3回、リノール酸合計2,280mg)のいずれかに無作為に割り付け、8週間試験を実施した。オメガ3はラージHDL(HDL = 28.7%)を改善し,スモールHDL(HDL10 = -10.6%)とHDL中の非エステル化脂肪酸(NEFAs-HDL)レベル(-16.2%)を減少させた。オメガ3は、サイズ改善とその脂質、抗酸化物質、酵素組成の変化によるHDL機能性に関連した心血管疾患リスクの低減に有効であった。
▶論文情報
Omega-3 Fatty Acids Improve Functionality of High-Density Lipoprotein in Individuals With High Cardiovascular Risk: A Randomized, Parallel, Controlled and Double-Blind Clinical Trial
(中国)
Front Nutr. 2022 Feb 23;8:767535.
発行日:2022年2月23日
HDL-Cといえば、健康診断でも測定項目にあり、LDL-Cとは違い、善玉コレステロールという認識があります。
これは、HDL-Cが心血管保護、冠動脈疾患および死亡率の低下と関連していることからかと思われます。
しかし、2017年に行われたデンマークの人口(35万人以上)を含む2つの重要なコホート研究で、HDL-C値が低い人と極端に高い人で死亡率が上昇することが示され、HDLの心血管に対するベネフィットを巡る論争が大きくなりました。
このようなことから、現在では単にHDL-C量だけで判断することができなくなってきています。
エイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)は、血圧の制御、血糖代謝、リポタンパク質リパーゼの発現および合成の増加、およびそれに伴うトリグリセリドの減少、脂質代謝の改善、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)の減少、HDL-Cの増加、超低密度リポタンパク質(VLDL)の減少といったさまざまな経路を調節することにより心臓血管の健康を改善できることが実証されてきました。
しかし、コクランレビューでは、食事やサプリメントに含まれるω-3系脂肪酸は全死因死亡率と関連しないと結論付けられました。
このようなことから、この論文では、心血管リスクの高い個人を対象に、HDLの持つ抗酸化能、組成、サブフラクション分布に焦点を当てて、ω-3脂肪酸がHDLの機能性に及ぼす影響を調べ、心血管疾患リスクへの影響を精査しました。
HDL-Cは、EPAで強化した魚油よりもDHAで強化した魚油の方がより強い影響を受けることが示唆されていますが、DHAを組み込むと大きなHDLのコレステロールの増加は6.7倍になり、EPAは3.8倍と、DHAのほうがより効果がありました。
結論として、EPA、DHAは、HDLの機能性をよりよくし、心血管リスクの低減に有効であった、としています。
この論文のほか、最近出された論文では、
・EPA+DHAと魚類の摂取量が多いとCHD死亡リスクは低下する
J Am Heart Assoc. 2021 Nov 30;e022617.
・オメガ3脂肪酸サプリメントが、T2D患者において心不全入院の発生率に有益な効果を示す
JACC Heart Fail. 2022 Apr;10(4):227-234.
というように、リスクの高い人ほど、EPA、DHAの有効性がよりはっきりと示されています。
普段から、魚を食べる機会を増やすことはなかなか難しいとは思いますが、缶詰やチルド食品でもすぐに食べられる商品はたくさんありますので、サプリメントなども利用しながら、取り入れていただければと思います。
先週ピックアップした論文はこちら👇
ぜひこちらもご覧になってください。
◆2022年 4月22日 【小児】
【後ろ向き研究】VDのカットオフ値は生後1か月児、2か月児ともに低BMI群より高BMI群の方が低かった
◆2022年 4月21日 【脳機能】
ビタミンB12補充は、ビタミンB12欠乏症の患者において、少なくとも短期的には認知機能を改善する
◆2022年 4月20日 【歯科】
ビタミンCレベルと歯周病状態とは関連性があり、その関連性は喫煙の有無に影響される可能性がある
◆2022年 4月19日 【腸機能】
【in vivo】B. longumは便秘マウスの腸管バリアを調節することにより、便秘を解消する
◆2022年 4月18日 【メタボリックシンドローム】
2030年には中国人成人の6割以上が腹部肥満に悩まされることになる
中国では2030年、あと8年で成人のなんと6割が肥満になるということです。
この論文では、中国は肥満と高齢化がパンデミックだと指摘しているほど、急速に悪化してきていることを示しています。
これは他人ごとではないようにも思います。
ちょっとした知識のあるなしで、自分の将来の健康が左右されるということも十分考えられます。
少しでもこのようなエビデンスが一人でも多くの人の健康に役に立つように、これからもコツコツと情報発信していきます。