「RADIOHEADとアートワーク」 LUD Personal Works vol.6
グラフィックデザイナーの梁取瑶(やなとりよう)です。
今回は、前回からのコラージュの世界観の中でRadioheadの「KID A」のジャケットをオマージュした作品を作ってみました。
僕はロックバンドが好きですが、海外のバンドをちゃんと聴くようになったのはここ2、3年です。その中でも特によく聴くのがRadioheadです。初期のロック色の強いときから今に至るバンドの枠にとらわれないエレクトロニックな音までどこを切り取っても好きです。聴いている間だけどこか別の世界に連れて行ってくれるような感覚があります。
音楽が好きなのはもちろんですが、ジャケットにも影響を受けていて、特に「OK Computer」、「KID A」、「A MOON SHAPED POOL」のジャケットはとても好きです。どのジャケットもグラフィック・アーティストのスタンリー・ドンウッドが手がけていますが、このダークさ、壮大さ、不可解さを併せ持ったアートワークがRadioheadの曲にとても合っていて素晴らしいと思っています。自分もバンドの顔になるようなこんなアートワークが作りたいので、今回はそれを紐解く一つの手段として制作してみました。
その中で感じたのは、本家のアートワークには簡単に真似するのは難しい絶妙な「荒さ」があるということです。ここでいう「荒さ」とは手作業や技術が発達していなかったからこそあった味のようなもののことを言っています。例えば手前の部分が絶妙にボケていたり、手前になんとも言えないデジタルチックなグラフィックが入っていたりなどです。この氷山のように見えるグラフィックも、なんとも言えない抽象的な雰囲気があります。文字を見てもアナログならではのガタガタ感があるのがわかります。
今は技術が発達してくれたおかげで綺麗に整ったものを作るのは難しいことではなくなりましたが、逆にいえば「荒さ」が失われてしまったとも言えます。でもこの「荒さ」の中に心を震わせる衝動的な部分が秘められている気がしています。自分は普段デジタル上でデザインをすることが多く、Photoshopに頼り切っていますが、技術が発達して誰でも綺麗なものが作れるようになってきたからこそ、この「荒さ」をもっと意識したいと思いました。
梁取 瑶 / Yoh Yanatori
Designer
1996年生まれ。千葉県出身。芝浦工業大学デザイン工学部プロダクトデザイン領域卒業。大学在学中よりLiNK-UP DESIGNにてCDジャケット、ロゴ、グッズ等、様々なプロジェクトに携わる。幻想的な作風を得意とし、個人でもビジュアル作品をSNSなどで発信している。
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