【#にじ甲2023 振り返り】笹木はシュートを投げない、を考える
#にじ甲2024 育成配信が既に佳境
ついに全校の育成配信がスタートし、各高校に続々とライバーが入学してきています。ワクワクが止まらないのと同時に全校、とてつもなく上振れてほしいと切に思っています。
今回は昨年度の #にじ甲2023 を振り返る第二回、岡山県代表まめねこ工科高校のエース笹木咲投手について代名詞とも言える「シュート」という変化球を中心にデータをまとめてみました。
笹木はシュートを投げない
427球中、38球 割合にして8.9%
岡山県で育成をスタートしたレオス監督のお目当ては、沢村賞選考委員でカミソリシュートが武器の平松政次さんでした。笹木投手はその平松さんのような最大変化量のシュートを武器に、1年生のときからまめねこ工科高校のエースとして投げ続け、本戦ではチームを4位に導く大活躍を見せました。
しかし本戦でのシュートの割合は8.9%(38球)と「変化量が多いのに全然投げていない」という印象を持ちます。
緑特能変化球中心 速球割合54.8%
ツーシーム、全ストも含めた速球の割合が54.8%と変化球中心にしては多くなっています。ツーシームが18.5%、フォーシーム(通常スト + 全スト)36.3%です。
キレ◯ が死に特能になりかねない球種配分
パワプロではその投手の持っている最も変化量の大きい球種にのみキレ◯の効果が載ると以前は周知されていたらしく(自分は最近検証動画のコメントで初めて知りました)、現在もその仕様が変わらないとすると、強化されたシュートを使わないのは勿体なく感じます。
変化量が多いから多投するというわけではない?
アンジュ投手のデータをまとめた際に右打者には得意球のシンカーを投げにくい(右33球、左打者には120球)という傾向がありました。
笹木投手の対戦打者の打席の左右を見ると右バッターとは66回対戦して219球、左打者は57回対峙して208球を投じています。
上のグラフでも高速シンカーの左打者への偏りが目に留まりますが、シュートは右バッターに使うことのほうが多く、それならばもっと投球割合が多くても良いのではと思いました。
結局笹木投手のシュートは打席の左右以前に投球割合そのものが少なく、その理由は別にあると考えます。
なぜシュートを投げないのか
(この見出しを書いていて一瞬椎野四段活用が頭をよぎったのですが、まめ工の笹木投手は激つよ投手で各監督の育成法こそが唯一の正解です。あくまで本戦でのシュートという球種を分析するという意図です。)
ストレートを決め球にできるから
通常ストレートの空振り率は30%超え、通常ストレート(f_four_seam)の被打率 .220 、全力ストレート(f_full_power)の被打率 .231 は特に優秀で、十分決め球として使えると思われます。
ツーシームファストは長所と短所がはっきり数字に出ていて、被打率が高いかわりに空振りも多く奪えています(48.6 Whiff%)。
決め球に何を投げているか
決め球に占めるフォーシームの割合は半分以上、一方全体では投球割合の多いツーシームを決め球としてはあまり投げていません。
シュートは2s以降の決め球としても使われていません。緑特能変化球中心、変化量7、キレ◯が載って強化されている球種です。
斜め変化はカーブ系が少なく高速シンカーは増えるというアンジュ投手と同じ傾向です。
左右の揺さぶりでスライダーが活きた?
先の[表1]球種別のStatsを見るとスライダーが被打率を低く抑えることができています(19 - 3 で被打率 .167)。これは打者の頭の中に笹木=シュートのイメージがあるおかげで反対方向のスライダーが活きた(強化された)可能性もあるかもしれません。対右バッターの被打率は .277(65 - 18)ですが、スライダーは .167(12 - 2)とよく打ち取れています。
平松政次氏「投手の基本は、あくまで直球とカーブ」
ここまでデータをまとめてきて、シュートについて「なにか弱い部分があるから投げ難い」とする何かを見つけることはできませんでした。
シュートを投げない理由は推測になるのですが、「下方向の変化球のない投手は、緩急を活かしてストレートで刺すというのが基本の投球スタイルになる」ためと考えます。V甲のしぐれうい投手がその典型で、そこに左打者へ逃げながら落ちていくシンカーも織り交ぜたのがヘル高のアンジュ投手になります。
笹木投手の場合は球種が豊富ですが、落ち玉を持たないためストレートが決め球になり、そのストレートが非常に強力だったため(平均球速158km/h、ノビC、ナチュラルシュート)良い成績を収めることができたと考えます。
投球スタイルについてパワプロから離れますが、カミソリシュートの平松さんは2015年に以下のように語っています。
パワプロにももしかしたらこの考えが反映されているのかもしれません。
(別の可能性を捻り出してみる)
・変化量が少ないほうが扱いやすい球種だった
・持ち球にシュートと同じく利き腕方向に変化する球種が多いため(ツーシーム、高速シンカー、ナチュラルシュートのストレート)利き腕方向に曲げたいときのシュートの優先度が下がった
という可能性も無くはないかと思います。また身も蓋もない話ですが
・シュートという球種自体が強くない
という説は、笹木のデータだけでは否定も肯定もできないです。
まとめ
このnote では笹木投手の投球記録から球種別の投球割合やそれぞれの球種について被打率や空振り率などを見てきました。
笹木投手の投じた427球のデータから観察できたことは
最大変化量でも投球割合が10%に満たない球種もある、理由は不明
斜め方向の変化球は打者から逃げていく使い方が主(右対左のシンカー、右対右のカーブ)、但しカーブ系は2s以降にはあまり投げない
(おそらく下変化のない投手は)ストレートが決め球になる
ツーシームファストは空振りが取れるが被打率高い
笹木投手の場合はストレートの被打率が低い(通常 .220 全力 .231)
以上から更に調べてみたいテーマは
利き腕に方向に横変化する球種、スライダー、高速スライダー、カットボールは決め球になるのか(2s以降の投球割合)
カーブ系でもスライダーに近いスラーブと、変化方向がほぼ真下のパワーカーブは決め球になるのか
ストレートの空振り率と被打率の関係
カットなら23年コーヴァスのローレン投手、パワカなら22年にじ高の剣持投手(変化量5)あたり、他に一球種に特化するのではなく全体をバランスよく伸ばした勇者育成の魔王様も分析できたらと思います。