クリニカルラーニング①~二分脊椎~
2021/09/17(金)19時~開催
参加者→ようこ・なほ・まな・ちほ・たっきーさん
【クリニカルラーニングとは】
クリニカルラーニングという単語はなじみのない方が多いと思うので、簡単にクリニカルラーニングについて説明します!
クリニカルラーニングとは、運営学生同士でイベントで取り上げた疾患の疫学・原因・病態など基礎知識の他、登壇していただいたゲストの伝えたいことなどを踏まえ私たちにできることは何かなど話し合いを通してそれぞれが学びを深めるための勉強会のことです。
【二分脊椎の概要】
1)二分脊椎とは
二分脊椎は脊髄の形成異常が生じる先天性奇形。
生まれつき脊椎(背骨)の一部分が 二つに分かれており、 そこから本来なら背骨の中にあるべき脊髄(神経)が外に出てしまっている。そのため、様々な症状・障害も引き起こされる。
背骨から飛び出した脊髄が皮膚に覆われているか否かで二種類に分類分けされる。 ①顕在性(開放性)二分脊椎 ②潜在性二分脊椎
2)主要原因
(1)栄養学的因子(葉酸の摂取量不足)
(2)環境因子(糖尿病、肥満、てんかん薬の内服、妊娠前期の高熱発作、放射線被爆、ビタミンA の過剰摂取)
(3)遺伝子因子
妊娠前から葉酸サプリメント服用することで、発生リスクは70~80%低減可だが、残る20~30%症例は遺伝子異常が関係しており予防困難。
3)症状・合併症
水頭症(90%)キアリ奇形を過半数の患者で認め、10%の患者では無呼吸発作、喘鳴、嚥下障害を認める。
※MRI等の精密検査で水頭症の検査が可能。
整形外科領域では、歩行障害・足部の褥創、脊柱側弯など、
泌尿器科領域では、尿失禁、尿路感染症が70~80%の患児に発生する。
また、成人男性の過半数で性機能障害(不妊症も)が発生する。これは精巣発育不全および神経障害のために惹起される。
小児外科領域では、大便失禁が最大の問題である。軽度から中程度の知能障害が、約半数の患児で発症。
・神経管閉鎖障害(二分脊椎症、無脳症)に対して葉酸効果あり
・無脳症は死産または生後数日で死亡することが多い
4)排便管理方法について
・摘便:患者さん・ご家族が肛門から指を挿入して、腸管内に溜まった便を用手的に取り除く方法。
・グリセリン浣腸:毎日定時で浣腸を行い、まとめて排泄させて失禁防止
患者さんの時間に合わせて施行できる点も優れている。
*参考資料
https://www.byouin.metro.tokyo.lg.jp/shouni/section/geka_01.html
【私たちが出来ること】
1)今からできること
・ゲストのSNS発信を協力する
→医療従事者に比べ一般の方の病気に対する理解度は低いと思うので、患者を取り巻く環境にいる人たちには病気についてよく知ってほしい(身近なところでは友達等)ため。
・当たり前を見直す
日常生活は周りの人たちや環境で成り立っているため、周りへの感謝の気持ちを持つことで、患者さん一人一人の当たり前を知ることが出来る。
→当たり前を見直すと、家族や周りの人に感謝の気持ちが生まれて、薬剤師として働きだしても患者さんや家族に感謝の気持ちを持てるのではないかと考えた。周りへ感謝することで、患者さんの当たり前を受け入れていけるようになると思うので、患者さんの当たり前を理解したうえで私たちに出来ることを実践していけるのではないか。
信さんの尿漏れパットは、薬局の薬剤師から提案されたものであると聞いた。
私たちは、患者さんとの会話をただの世間話とは思わずに「これがつらい、改善できないかな」という些細な一言を聞き洩らさないことが大事。そのため、日頃からアンテナを張っておくことで視野が広がり、結果的に患者さんのために繋がるのではないか。
また、当たり前を見直し、自分の考えが正しいのかを考えることでよりより患者サポートが出来ると考える。
2)将来出来ること
・まずは疾患を正しく理解すること
疾患について正しく理解したうえで、不安なことや症状の現れ方は個々人によって異なるため何がその方にとって何が一番不安なのか聞いてあげることが大切。
臨床の問題点を正確に抽出し、その中で優先順位の高いものから解決策を考え、適切に実行していくこと。(場合によってはカタルシス的介入等を用い)薬のこと以外でも積極的な情報収集を行う必要がある。
・視野を広げて、様々な可能性を考える。
→他職種とのチーム医療で患者さんの背景に着目することで、些細な不安要素等にも気づき、患者のQOL向上につながる行動が出来るのでは。
【伝えたいこと】
1)自分の強みをアピールする
まずは自分自身を知るところから始めること。自分を客観的に見るために自己分析・他己分析を、就活に関係なく低学年から行うべきだと感じた。
過去にあった自分のネガティブな部分は、もしかしたら強みになるかもしれない。自分では自覚が無くても、周りからそれは強みだと言ってもらえることもあるかもしれない。いろんなことに積極的にチャレンジすることで新しい自分の発見もあるかもしれない。あらゆる可能性を広げながら自分の強みを武器にしていけたらと思う。
2)当たり前を疑うこと
見た目とか言葉だけを鵜呑みにしないせず、ちょっと立ち止まって考えてみる。多様性を受け入れ、自分の考えを押し付けない。
そのためにはたくさん経験をする必要があると感じた。こういう機会がないと当たり前を考えない気がするし、時間が経つと薄れてしまう。学生だからこそ、イベントや勉強会など交流できる場を大切にしていきたいと思う。
当たり前を疑うという点を薬剤師の目線で考えてみると、「服薬指導」という言葉に対する疑念が生じた。ただお薬についての説明を行うのではなく、些細なことでも患者のことを捉えて踏み込み、患者さんの生活があることを前提にお薬の話を進めていくこと。また、症状が副作用によるものなのか、生活サイドの乱れによるものなのかの判断すること。これらのように患者の日常生活をお薬に繋げていくことが、求められている服薬指導であるのではないかと考えた。
【運営の声】
イベント準備期間では、運営メンバー内でそれぞれチームに分かれ、決められた役割(モデレーター・ファシリテーター等)に沿って準備を進めていきます。今回はLinks-milの初めてのイベントだったため、試験要素も強かった分、不安もありました。しかし、週1回行われるミーティングで不安や問題点を出し合い、より良いイベントになるよう皆で試行錯誤し本番に臨みました。イベント当日は大きなミスもなく、参加者からも嬉しいお言葉をいただけて、運営側の改善点はいくつもありましたが、初めてのイベントとしては上出来と言えるほどの仕上がりになったと思っています。
一つのイベントを終えた今、運営メンバーの一員として、「それぞれが納得いくまで話し合える仲間の存在」はものすごく大きいなぁと感じています。皆が同じ想いを持っているからこそ次回に向けての話し合いも活発なものになるし、毎度とても密度の濃いミーティングが出来るのだと思います。
私たちのイベントでは、「ゲストが患者さん」です。学生団体の中では珍しい形式のイベントではありますが、学生のうちから患者さんやそのご家族の想いに耳を傾けることで、現場(医療者と患者間)での問題点や自身の理想像等を見つけることが出来、将来、より良い医療実現に貢献出来る薬剤師になれると考えています。
また、イベント終了後にはクリニカルラーニングが開催されます。ここでは、イベントで取り扱った疾患の基礎知識を身に付け、登壇していただいたゲストの「伝えたいこと」について話合い、自分たちにできることは?について考えました。このように、イベント終了後はしっかり自分たちで学びを深め、今後に生かせる仕組みが出来ているというのもこのコミュニティの強みであると言えます。
【コラム~ビタミンについて~】
脂溶性ビタミンの覚え方:脂溶性はこれDAKE
◉ビタミンD
・欠乏症:くる病(小児)、骨軟化症(成人)、骨粗鬆症
・過剰症:高カルシウム血症
・生理作用:紫外線が合成に必要。
腸管でカルシウム吸収促進。
腎臓ミトコンドリア(1α位水酸化)。
肝臓ミクロソーム(25位水酸化)。
・プチ情報:干し椎茸などに多く含まれる。スーパーなどで買った椎茸は1時間ほど日光に当てた後冷凍すると栄養価がUP。
◉ビタミンA(レチノール、レチナール、レチノイン酸)
・欠乏症:夜盲症
・過剰症:催奇形性、頭蓋内圧亢進
・生理作用:ロドプシンの合成に関与。
核内受容体に結合して遺伝子の発現を転写レベルで調節。
・プチ情報:緑黄色野菜、レバーに含まれる。
ビタミンAの誘導体であるレチノイドは急性前骨髄球性白血病(APL)治療薬として用いられる。
◉ビタミンK
・生理作用:血液凝固(プロトロンビンの合成)に関与
骨形成(オステオカルシンの合成)に関与。
・プチ情報:グルタミンタンパク質が関与。
ビタミンK₁(フィロキノン)とビタミンK₂(メナキノン)が存在。
◉ビタミンE(トコフェロール)
・生理作用:抗酸化作用をうまく利用した薬が主。
脂肪酸のラジカル的連鎖反応を遮断し過酸化脂質生成を抑制。
→脂質異常症の人に用いられたりする。