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クリニカルラーニング②〜乳がん〜

2021/11/06(土)20時~開催

参加者→ようこ・なほ・まな・ちほ・たっきーさん

【クリニカルラーニングとは】

クリニカルラーニングとは、運営学生同士でイベントで取り上げた疾患の疫学・原因・病態など基礎知識の他、登壇していただいたゲストの伝えたいことなどを踏まえ私たちにできることは何かなど話し合いを通してそれぞれが学びを深めるための勉強会のこと。

【乳がんの概要】

--病態--

スクリーンショット (12)

 早期の段階では乳房内にしこりが生じるのみ自覚症状もあまりない。進行した段階で初めて自覚症状が現れることもあり、発見が遅れるケースも少なくない。がんが進行するとしこりが大きくなって皮膚に潰瘍を形成したり、血性の乳汁分泌やわきの下のリンパ節への転移などがみられたりするようになる。
 乳がんのしこりは固く動かない場合が多いのが特徴で、初期には痛みは伴わない。

 乳房にがん細胞が発生する直接の要因は、未だ解明されていない。しかし、がん細胞が増殖していく過程には、女性ホルモンが関わっていることが明らかになっている。そこに年齢遺伝子の異常、女性ホルモンの状態などが関わって、がんが進展していく。


スクリーンショット (13)

 乳がんは主に非浸潤性と浸潤性の2つに分けられる。非浸潤性癌は、乳管などの発生した場所だけにとどまっている。しこりを形成することは少ない。浸潤性癌は、発生した場所から外の組織へ溢れ出しているものをいう。しこりが確認されることが多いといわれている。

日本での有病率は増加傾向&低年齢化の傾向
また、骨転移を起こしやすい
➡ビスホスホネート製剤(ゾレドロン酸)

発症しやすい乳房の部位
 外側上部 50パーセント
 内側上部 20パーセント

腫瘍マーカー:CA15-3  卵巣がん:CA-125

▶男性乳がん 100人に1人弱の割合で発症、60-70歳で発症しやすい


--治療法--
外科療法
乳がんの手術療法としては、「乳房切除術、すなわち全摘出と、乳房部分切除術」の2つがある。
 乳房切除術では、乳頭乳輪を含め、全乳房を切除する。部分切除後の大きな変形が予想される場合や、術後の放射線照射を避けたい人が適応となる。
 乳房部分切除術では腫瘍とその周囲の正常乳腺を切除する。乳房を温存することが可能であるが、切除範囲が大きいほど乳房の変形は大きくなる。また、乳房内の再発を予防するために、手術後の放射線照射が必要となる。

放射線療法
 ・手術後の局所再発を防ぐために行う。
 ・部分切除後の残存乳房や乳房周囲のリンパ節に照射。また、骨や脳に転移した場合にも  症状の緩和のために照射。
 ※再発には「局所再発(乳房周囲の再発)」と「遠隔再発(他の臓器:肺、肝臓、骨などへの転移)」がある。放射線照射が防ぐことができるのは局所再発。

薬物療法
《化学療法》
 化学療法は乳がんのタイプによって効果に違いがあり、ホルモン感受性のない乳がん(HER2型、トリプルネガティブ)やホルモン感受性の少ない乳がん(ルミナルB型)にはより効果的であるこ とがわかっている。再発の予防や病気の進行を抑えるために行われるが、脱毛や倦怠感、神経障害、骨髄(こつずい)抑制などの副作用がある。
 ➡CAF療法 シクロホスファミド・ドキソルビシン・フルオロウラシル
 ➡AC,EC,FEC療法 
 ※血管外漏出→ADM,E(対処:冷却)エトポシドやビンカアルカロイド(対処:保温)

《分子標的治療薬》
 化学療法は乳がんのタイプによって効果に違いがあり、ホルモン感受性のない乳がん(HER2型、トリプルネガティブ)やホルモン感受性の少ない乳がん(ルミナルB型)にはより効果的であるこ とがわかっている。再発の予防や病気の進行を抑えるために行われるが、脱毛や倦怠感、神経障害、骨髄(こつずい)抑制などの副作用がある。
 抗HER2療法
 ➡トラスツズマブ(副:心毒性)
 ➡ラパチニブ

《ホルモン療法》
 ホルモン感受性陽性乳がん(ルミナル型の乳がん)の増殖には女性ホルモンの刺激が関与すること が知られている。そのため再発の予防や病気の進行を抑えるためには、女性ホルモンの刺激を抑え るホルモン療法が推奨される。
 ➡抗エストロゲン薬:タモキシフェン(乳がん全般に使用、基本は5年間継続)
  副作用:子宮内膜症、子宮体がん、血栓塞栓症 
 ➡LH-RH誘導体:リュープロレリン・ゴセレリン(閉経前)
 ➡アロマターゼ阻害薬:アナストロゾール(閉経後)
 ➡黄体ホルモン製剤:メドロキシプロゲステロン

※乳房温存希望例
 術前化学療法→手術→放射線治療

【患者さんとの接し方】

①適切な声かけ

闘病期間はどの患者さんも心がすごく敏感な状態にある。医療者側は一日に何人もの患者さんと接する機会があるが、患者さん側からすると担当医師は1人であり、接する人も限られる。だからこそ、患者さんにとって医療従事者から受け取る言葉の重みは必然と大きくなり、声かけ一つで一喜一憂してしまう。なので、医療従事者はどの場面でどのような声かけをすれば良いか等それぞれの状況にあった適切な声かけを考えなければならない。声かけの際に、必ず肯定することから入ることは患者さんの敏感な心をケアする上でとても重要であると考える。

②孤独に対するケア

今回のゲスト二人との対談にて、がん患者は「独りぼっちだ。誰にも分ってもらえない。」と孤独を感じやすいと学んだ。私たちは孤独を感じている患者さんを目の前にした際、医療従事者としてだけではなく一人の人間として、相手の存在の大切さを言葉や行動で伝えてあげることが大切だと感じる。

③”慣れ”がもたらす問題

どの医療従事者も働き始めは、緊張感もあり、丁寧に一人一人の患者さんと向き合おうと努力すると思う。しかし、ある程度の経験を積み、仕事に慣れてくると、処方箋を捌くことに集中し、患者さんとのコミュニケーションは流れ作業のように淡々としたものになってしまうのではないだろうか。流れ作業のようなコミュニケーションは、「患者さんの痛みの背景にあるのはなんだろう。」といった一人一人が抱える問題に向き合う時間を自然と減らし、最悪、患者さんの治療効果にも影響を及ぼすことだってあり得るかも知れない。このため、”慣れ”というものは良くも悪くも恐ろしいものである。本団体が開催しているイベントはそのような慣れがもたらす問題を見直し、それぞれの医療従事者が初心に戻る機会にもなっているようなので、私たちも社会に出て理想と現実のギャップを感じた際には定期的に信頼出来る同僚やこのコミュニティメンバーと語り合い、学生時代の活動を思い返して気持ちをリセットすることも大切だと感じた。

④乳がん患者さんだからこそ

乳がんは女性特有だからこそ、乳房切除の治療や服装について等女性医療従事者がフォロー可能な悩みは多く存在すると思う。その点については、患者さんからの相談を待つのではなく、医療従事者が積極的に自身で学び、考え、患者さん一人一人に合った情報提供を心掛けることが大切である。患者さん同士が集まる場所や術後病気を克服しこのような活動をしている方がいるといったサバイバーの明るい未来に関する情報提供も今後はもっとしていかなければならないと感じる。(アフターフォロー領域の充実さを改めて実感。)

⑤薬剤師として

患者さん一人一人への対応も大切だが、患者さんのご家族のサポート、そして次の薬剤師へしっかりと正確な情報を繋ぐことも大切である。患者さんや患者さんのご家族のサポートとしては自身の経験から未来・将来を見せ、選択肢を広げてあげられるような会話の進め方も一つのテクニックとして身に付けていきたい。

【啓発の現状と私たちにできること】


以前、乳がん患者さんと一緒に乳がん啓発活動経験がある運営メンバーの1人から意見が出た。「ちょっとお時間いいですかと声をかけて一緒に駅前で乳がん啓発のチラシを配ったり、イベントなどにも参加させて頂いた。そこでSNSなどの発信も大切ではあるけど、直接相手に伝えることも大切だと感じた。だからこそ私たちも、乳がん患者さんとのつながりが増えたためオフラインでできることがあるのではないか。」これに対し、「オンラインは情報を求めている人が利用するイメージがある。もっと関心を持ってもらうにはオフラインの活動が大事だと思う。」「それなら、薬学的知見、患者側からの視点、両方向からの意見や情報発信もできるんじゃないかな。」「まずは、身近な友達、家族などから、乳がん検診の大切さを広めていく。今回のイベントについて話してあげる、イベント記事を見せてあげることも有効かもしれない。Twitterのリツイート、他の薬学生やつながった人達の情報を自分も発信していくのも小さいことだけど大事かな。色んな人に連鎖していくことも大事。身近な人に伝える、発信することって意外と重要。引用ツイートは発信源の人にも通知がいく。」など次々と意見が出た。

本当に発信したいのなら手段はある。
周りに活動しているひとたちはいる。
一人じゃできないけど、探せば必ず同じ意思を持った仲間はいる。
今回の乳がんなら、セルフチェックのやり方も伝えていくことで早期発見につながるかもしれない。
難しく考えなくても、まずは身近な小さなことからでも誰かの助けになれるのかもしれない。

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