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【副院長コラム】家族のちからを支援する

精神科の治療には、薬物療法だけでなく心理社会的治療と呼ばれるものがあり、当院では多職種による面接やデイケアで行う集団プログラム(SST・認知行動療法・心理教育)があります。その中から、今回は2024年8月より再開する家族教室、家族心理教育についてご紹介いたします。

家族のちから

私達は医者が診断して患者が従う従来の医療スタイルではなく、希望や問題を抽出しそれに対してパートナーシップを組んで取り組んでいくスタイル(SDM:共同意思決定)を採用しております。それによって作られる支援体制には私達スタッフだけでなく、ご家族も含まれていると考えています。ご本人のリカバリーを目指す上で、ご家族だから出来ることがあります。

実際に、ご家族から支援された人とそうでなかった人とで、再入院した人の割合に大きな違いがあるという調査結果もあります。

しかし支援といってもどのように支援したら良いのか、そもそも普段どういう声かけをしたらいいのか、悩まれるご家族は少なくありません。悪化してほしいと願うご家族はいないでしょうが、苦しくもがいているご本人と日常をともにしていると、つい「気持ちの問題じゃないか」「怠けてるだけじゃないか」と言ってしまったり、あるいは「病気になったのは自分たち親の育て方が悪かったんじゃないか」と悩み、「出来ることはしてあげたい」とご本人ができることまで手を出してしまったりする場合もあります。ご本人の病状や気分に巻き込まれてしまうこともあります。多くの場合、ご本人と接する時間が最も長いのはご家族ですから、そのような気持ちや状態になってしまうことだってあるでしょう。

感情表現の仕方と再発率について

感情表出(EE)という言葉を聞いたことはございますか?
ご家族の本人に対する感情表現の仕方は、病気の再発に影響を与えていることが分かっています。この感情表現の仕方を字の通り「感情表出」と言い、Expressed Emotionの頭文字を取ってEEと呼びます。本人に対して、批判的、敵意的、感情的に巻き込まれた仕方での感情表現が強く見られることをEEが高い(high EE)、そうでない場合をEEが低い(low EE)と言います。

High EEな感情表出の3つのタイプ

1.     批判的
本人に対して不満や文句を表すこと
(例 「何もしないで怠けてる」「いい年して仕事もしないで」と言う)

2.     敵意的
本人を敵視するような感情をぶつけること
(例 「いっそあなたがいなければ・・・」等の感情をぶつける)

3.     情緒的な巻き込まれ
過保護・過干渉になってしまうこと
(例 「私しか分かってあげられない」と思う、少しのことで動揺してしまう)

家族の感情表出が高くなってしまう時

家族の感情表出が高くなってしまう時として、例えばご本人の症状が激しかったり慢性的な場合や、家族の病気に対する知識が不足している場合などがあります。
ご本人は毎日デイケアに通って治療に取り組んでいてもご家族からは何をしているか分かりづらいため、批判的・敵意的コメントをしたくなることもあるでしょう。あるいは、どのように本人に接すれば良いのか分からない中で良かれと思ってした言動が過保護・過干渉的で、ご本人にとっては辛く感じられ、反発されたりすることもあります。ご家族がもがいている中で結果としてhigh EEになってしまうことが多いように思います。

ご本人をサポートしていく上では、high EEからlow EEの感情表現に変化させていくことが重要です。そして程よい距離感を取れるようになることで、ご家族も負担が軽くなります。こうした状況を変化させることができるのが家族教室・家族心理教育です。

当院でも家族教室を実施してきました。家族教室では、専門家が精神科治療、疾患、薬についての正しい情報を伝えるだけでなく、ご家族の悩みや戸惑いに寄り添いながら、家族のストレスを減らし、対処する力の向上を目指したプログラムを提供しています。

実は新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、感染防止のために休会しておりましたが、2024年8月から再開する運びとなりました。4ヶ月1クールで、毎月最終週の木曜日午後に当院デイケアルームで開催しています。医師、精神保健福祉士、薬剤師らが担当し、参加は当院通院中の方のご家族のみとなります。ご興味のある方は主治医かメディカルサポートセンタースタッフまで気軽にお声掛けください。

(2024年8月 副院長コラムより)

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