味覚受容体の新たな役割
苦味に対する味覚受容体は舌だけでなく、口腔外の細胞にも存在するが、この苦味受容体は胆汁酸の内因性センサーとしても機能する可能性があるようだ、という独ミュンヘン工科大学からの研究報告。
苦味受容体は味覚センサーとして、食品中の潜在的な毒素を検出して回避する役割を果たしている。比較的最近の発見では、苦味受容体が肺、脳、胃腸管の細胞、血液細胞、精子細胞にも存在することが示されている。
ヒトは体内でも苦味物質を生成するので、苦味受容体は内因性物質に対する内因性センサーとしてしたのかもしれないという疑問が生じるが、その場合は、対応する体液中の内因性物質の濃度が、口腔外の組織および細胞の内因性苦味受容体を活性化するのに十分であることが必要となる。
胆汁酸は内因性苦味物質の良い例であり、さまざまな体液中に存在する。そこで、研究チームは、約25種類あるヒトの苦味受容体のうちどのタイプが生理学的濃度の胆汁酸に反応するかを調査した。この目的のために、チームは確立された細胞試験システムを使用し、機能実験と分子モデリングアプローチを組み合わせた。試験された 8 種類の胆汁酸には、一次胆汁酸、二次胆汁酸、三次胆汁酸、および共役胆汁酸が含まれていた。
5種類の苦味受容体が試験した胆汁酸に反応することが明らかになった。
「これに関連して、測定された受容体の活性化閾値は、文献でヒトの体液について報告されている胆汁酸濃度と非常によく一致しました」と筆頭著者で博士課程学生のフロリアン・ツィーグラー氏は述べている。
「さらに、モデリング研究によって苦味受容体TAS2R1への胆汁酸の結合を特徴付けることができただけでなく、実験活性データの違いを再現することさえできました」と共著者のアントネラ・ディ・ピツィオ博士は述べている。
「我々の結果は、胆汁酸と特定の口腔外苦味受容体との間に生理学的関係が実際に存在し、後者が胆汁酸レベルの内因性センサーとして機能することを示唆しています。また、苦味受容体の進化には食品の苦味成分などの外的要因だけが影響を及ぼしているわけではないという仮説も裏付けています」と責任著者のマイク・ベーレンス博士は述べている。
http://dx.doi.org/10.1038/s42003-023-04971-3