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LEMONed

私にはさっぱり分からないのだけど、このビスケットには焼きムラがあるせいで《合格》のハンコをもらえなかったらしい。

一見何も問題は無いのに、どこかの誰かが決めた基準を満たせないだけで《価値》を落とされてしまう。

それってちょっと哀しくはないかい?と思う。


工場で製造されている商品だけでなく、農家さんが育てた野菜もちょっと曲がっていたりサイズが揃わなかったり小さな傷や虫喰いがあるだけで商品価値が無くなったり…。

《価値》って何なんだろう?

って、最近よく思う。


3年前、店をオープンした頃は同じようなお菓子を作っている人が周りにいなかった。

だから「他の人たちはどんなお菓子を作ってるんだろう?」と思い、いろいろ調べて関東や関西、沖縄などから取り寄せて食べたりしていた。

面白いもので、どれも【小麦・卵・乳製品なし】で作っているお菓子なんだけど、作り手さんが違うと個性が出るというか。

例えば同じ米粉のマフィンでも全く違うものに仕上がっていて、すごく興味深かった。


最近は福岡県内にも(そんなに多くはないものの)グルテンフリーのお店が増えてきたように思う。

地元のメディアで紹介されたり、お客様がたくさん集まっていたり、そんな華やかなお店の中に埋もれながら、私はひっそりと、のっそりと、お菓子を作っている。


本当は周りを氣にせずどっしり構えていたいけど、お客様が来なかったり通販のご注文がなかなか入らなかったりすると「他にもたくさんお店あるし、うちなんて誰も選んでくれないんじゃないだろうか」と谷底まで落ち込んだり、食べてくれた人の「美味しかった」のひとことで上昇したり、なんだかゆらゆらぐらぐらと心が落ち着かない。

(↑超絶ネガティブモード時)


1個400円前後の高いマフィンに《価値》を感じてもらうために、私は精一杯のことをやれているだろうか?


ふとそう考えた時に、「あ、まだ全然できてないやん」と思った。

もっとやれることはあるハズなのに、悲劇のヒロイン劇場に足を踏み入れてしまい、スポットライトを浴びて「ヨヨヨ…」と泣いていた。

そんな暇があるなら、頭と手を動かせ。自分。

何やっとんじゃい。

(いらすとやさんのこういうイラストめちゃツボる…)


今までいろんなお店のお菓子を食べ比べてみて感じた違い個性

そして、うちの強みは何なのか?

「あぁ、美味しかった」で終わらずに、「また食べたい」と思って頂けるようになるにはどうすればいいのか?

使う材料を変えるのか。

レシピを変えるのか。

それとも《自分自身の意識》を変えるのか。

そこをしっかりと考えなければならないタイミングがやってきているように思う。


素材は今でも充分良いものを使わせて頂いていると思う。

技術も知識も経験も不充分な私にはもったいないくらいの、素晴らしいものを。

その良さをお客様にうまく伝えられていないのは、活かしきれていないのは、私自身の未熟さのせいだ。

ただ「オーガニックなんですぅ。だからちょっとお値段高いですが安心なんですぅ」くらいの伝え方だったら、スーパーのPOPにちょこっと書いてあるような文言と変わらないと思う。

「長崎産 柔らかくて、お鍋に最適」みたいな。(イメージは白菜ね)


違うのよ。

私がやりたいのは、ヴィレヴァンのPOPみたいな仕事なのよ。

あのPOPに秘められた、《なんかよう分からんけど、この面白いスタッフさんがそんなに熱烈にオススメするなら信じてみようかな。なんかハズレは無い氣がするぞ》みたいな、独特のセンスと謎の説得力。(伝われ〜)


言葉の奥にある想いを、素材の持つを、その後ろにいる生産者さんたちへの感謝を、うまく盛り込みつつもシンプルに美味しさを伝える仕事を。

そろそろ、しないとな。と思っているところ。


※タイトルにしている『LEMONed』は私の敬愛するhideが立ち上げたブランドの名前。
「LEMON」は「不良品」という意味を持つスラングで、そこに過去形の[ed]を付けたもの。
私もそろそろ《売れないネガティヴおやつ屋》を過去形にしたい。

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