ika・syake・ika・ika
事務所にかかってきた一本の電話は大手の運送会社からのものだった。銀座にある部署で全国の配送状況を統括しているらしい。担当の男性によると、北海道の海産物を販売している会社に詐欺の疑いがあるという。高齢者が被害にあっている可能性がある場合、住んでいる地区の高齢者の総合相談機関に協力してもらっていると説明をうけた。
電話の相手は、販売会社は今年会社登記をしていること、被害の疑いがある住人は週一回商品を代引きで受け取っていることをつたえてきた。配送伝票に記載されている商品は、
「最初が鮭、翌週がイカ、翌々週イカ、鮭、イカ、イカ」
事務所内では、
「イカが多すぎるやろ」
とツッコミがはいった。一回の購入金額は約八千円。現在、総額で八万円近く購入している。関東で約十二万円の被害があり詐欺が発覚したという。
「大家族なら鮭を週一回購入しても『あり』かな?と思うけど、八千円分のイカは食べ切れない」
「いや、イカ好きの家族かもしれない」
代引きで受け取っているのだし、どうしたものかと事務所内は騒然となる。突然見知らぬものが訪問して、
「お宅、イカ買いすぎですよ?騙されていませんか?」
などと言おうものなら、こちらが不審者である。
この一件は、当事者に注意喚起するために、近隣一帯に消費者被害のパンフレットを配布した。