リニスタ大阪追放計画/前編
THE GROOVERSを観に大阪から博多まで小旅行を企てていた。もう藤井一彦氏が57歳って考えると、100回観るのは難しいのかもしれない。間違いなくカウントダウンが始まっていて、いてもたってもいられなくなり計画した。朝5時に起床。寝坊は許されない、というか私が私を許せない。一泊きりの旅行なので荷物はあくまで軽く、ギターも置いていった。iPadが一番重いくらいで慣れない空港までの電車へ、なんてことない顔で乗り込む。
出発20分前に空港に到着。時間にルーズな私にしては頑張っている。正しくビビっている。おや喫煙所もあるのか…まぁ後にしてまずは発行したQRコードでチェックインってやつだ。が、何度かざしてもチェックアウト締切のエラー。重たい唾を飲み込み、3度目のエラーでようやく制服に帽子の女性に意を決して、しかしあくまで動揺を悟られないように堂々とハキハキした発声で「アノコレ…」と聞くと、不思議だよね。悪いのは俺なのに、すっげえ申し訳なさそうな顔を俺に向けてんの。
帽子の女性はとても俺を気遣った言葉選びで、「飛行機というのは30分以上前に搭乗手続きしないとダメで、お前はもう今日飛行機には乗れないよーん。『台風で飛行機大丈夫かなあ』ちゃうねん。乗られへんねんそもそも。」
もしあの場に体調の悪い方がいたなら見せてやりたかったよ。桃の名前の航空会社と見積もりを間違えた余裕が、私の顔に絶望を塗りたくった、あの顔を。あれ見たら少しは晴れがましい表情になるだろうよ。
あくまでQRコードでのチェックインが締め切っただけで、20分前だし今からでも搭乗手続きできるんじゃねって思うじゃん?ハハッダメだってさ。新幹線で博多に向かうわ。指定席買ったのに乗り場を間違えて自由席に座る羽目になったけど、座れているってことは全く問題ないよね!
私が見てきた全てのこと、無駄じゃないよってきみに言ってほしい。どうして今日はYUKIのハローグッバイがこんなに沁みるんだろうか。力みなぎるよ、わなわなと。なぜかシワだらけの乗車券を握りしめた手にな。
今夜は何か起きそうな気がする。自分のライブでもないのにこんなことを想うのは初めてだ。色んな過ちの度、世界と自分を接続しているか細いワイヤーを確認しているようで、同時に毎日私に接続されている6本の細っちょろい弦が恋しくなり、アコギでも持ってくればよかったなと思った。絶望の度に詩が生まれ、絶望の旅にもまた詩は生まれるのかもしれない。
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