イヴァンカ・トランプをチヤホヤしてはいけないワケ
「頭におぼろ昆布のっけたオッサン」に先駆けてイヴァンカ・クシュナーが日本にやってきた。それは構わないが、安倍麻呂もマスゴミも騒ぎ過ぎ。
ツイッターでもイヴァンカをこき下ろしていると、これまたお決まりのように美人に嫉妬しているだの、妬んでいるだのとクソリプが飛んでくるのだが、上の写真からもわかるように、金さえ湯水のようにつぎ込めば人間どうにでもなるものだ。お父ちゃんも実は「このハゲ〜〜!!」なのだが、トランプタワー内にあるクリニックでお一人様一回の植毛ン万ドルの治療を受けていると、トウモロコシのてっぺんに生えているぐらいの毛は買える。
イヴァンカのことが羨ましいんだろ、という糞リプもあったが、実際にあんな人間が父親だったら親子の縁を切って隠遁生活をするか、そばにいたらこっちが死にたくなるだろうと思いこそすれ、まぁ親を選んで生まれてくることはできない点でイヴァンカをかわいそうだとは思う。
いちおうイヴァンカの肩書きはadvisor to the Presidentなので「補佐官」と呼ばれているが、英文の記事だとこのタイトルは使われていない。有名無実の役職だとわかっているからだ。実際に大統領職の補佐ができるような経歴や実績なんてないし、ホワイトハウス内に事務室をあてがわれて偉そうに仕事しているように見えるが、それも無給のボランティアだ。
それを丁重にお迎えして、デレデレとツーショットにおさまるどこぞの首相は笑い草。マスゴミがろくな背景取材もせずに「イヴァンカ基金に安倍が57億円を拠出」ってな紛らわしい見出しをつけるから、ツイッターでンなもんに税金使うな、国内でやれって書いたら、これまた偉そうに「税金ではなく外貨準備高、支出先は世界銀行が設立した国際女性基金」と指摘をいただいた。ってことは、国内では使えないお金で、既にG20サミットで出すと決まっていたものを、世界銀行がイニシアチブとって実際の運営をする基金にアイディア投げただけのイヴァンカに改めて「僕ちゃんからのプレゼントでぇ〜す」って渡した、ってことかい。
それとは全く別にイヴァンカをビジネスキャリアもあって、イケダンと3人の子どもを育てている立派な女性のロールモデルと持ち上げるのは危険だと思う。これはドナルド・トランプが大統領候補として指名を確定させた共和党大会でのイヴァンカのスピーチだが、一人の母親として有給産休の義務化を訴えたり、父親に労働法を変えて育児支援すると言ったり。結局なんにも実現していない。
このスピーチでは、いかに自分の父親が素晴らしい人物かを切々と訴えているんだけど…ウソばっかり。息をするようにウソをつくってのはお父さんそっくりなんだな。例えば、父の職場では女性幹部の方が多く(ウソ)、子どもができたとなると誠心誠意サポートする(ウソ)。実際に妊娠した部下に「仕事できなくなるのは困る(中絶をほのめかしている)」と言ったり、「妊娠とは自分勝手な行為だ」と発言している。
男尊女卑的な傾向が強い共和党大会で女性の権利を堂々と訴えたものだから、その時だけ拍手がまばらだった、ってのもおかしいけどさ。それってヒラリーが言うような政策じゃね?って揶揄されてたけど、それもそのはず、父親が共和党から立候補した時点で、イヴァンカは地元ニューヨークでは、社交界の皆様に合わせたように民主党員として登録してたんだよね。だから共和党大会で自分の父親に一票を投じることができなかった。
ブランドとしての「イヴァンカ・トランプ」は2000年代後半にどこかの宝石商と組んで「イヴァンカ・トランプ・ジュエリー」を売り出し始めたのが最初。いちおうウォートンのビジネススクールを出て社交界デビューしてモデルもやっていた頃。それが2010年あたりから服や靴やバッグも出し始めた。価格としてバナリパとJクルーの間で、アン・テイラーにラメやストーンを足したぐらいの無難なデザイン。すまん、買ったこともないし、細かいところは知らんw
旗艦店がSoHoのMercer St.にあった時期もあるらしいけど、それも知らないなぁ。今はトランプタワー内にあるだけじゃないの? だからブランドとしてはリスクの高い路面店展開ではなくて、デパートなどに卸す形ね。いちばんノッていた時は高級デパートのノードストロームやニーマン・マーカスでも扱ってたけど、トランプ大統領登場で「あまり売れない」ことを理由に契約を切られた。これは表向きの理由で実際は金持ちリベラル層がイヴァンカ・ブランドを扱うお店をボイコットし始めたから。他にも、デザインをパクったと訴えられたり、スカーフが「燃えやすい」と回収騒ぎになったりもしたし。
でもそのボイコット反動で、もっと価格帯の低いディラードやメイシーズではトランプ支持者がなけなしのお金はたいて頑張ったのか、今年の2〜3月には急激に売り上げが上がった。それもつかの間、今では去年の同時期よりもどこも売り上げは落ちている。アパレル業界では「最初の定価で売れる率」ってのがあるんだけど、イヴァンカ・トランプはそれが30%台から20%台に落ちた。おそらく海外在住組から「イヴァンカ・トランプ安売りしててワロタ」って報告があった時期。
今は盛り返してますよ、イヴァンカ・トランプ・ブランド。中国で。なんでも彼女を「女神」と奉る熱狂的なファンがいてバカ売れらしい。父ちゃんが就任早々に米中首脳会談の席にイヴァンカが並んでいる写真が出回って「なぜオマエがそこにいる?!」とこっちのマスコミでは非難轟々だったんだけど、この時に中国での独占商標を取り付けたということらしい。元々イヴァンカ・ブランドのものはほとんど中国製なので地産地消になったという解釈もできそうだけど、もっと怖いのは、6月頃に縫製工場の待遇が最悪、みたいなことがバレて調査されてたんだけど、その人たちがなぜか中国で逮捕されたり忽然と消えてしまったというニューヨーク・タイムズの記事もあったりして。
まぁこういうアパレル界のゴシップ系記事はRacked.comにいくらでもあるんで、好きな人はそっちを読むとして。
追記:ワシントン・ポストのこの調査報道記事もすごい。
イヴァンカにスピーチをさせると「母親として〜」で始まる苦労話がしょっちゅう出てくるんだけど、これも眉唾。彼女にはライザとシシという2人の「ナニー」がいて、子育てをしている(イヴァンカは「手伝っている」としか言わない)。Xixiさんは中国の人で、トランプがよく「うちの孫のアラベラは中国語ができるんだ、どうだすごいだろう」とホワイトハウスで爺バカをかますことがあるんだが、もちろんそれはナニーに教えてもらっているから。ナニーって何?って言われそうだけど、日本語だと何がいちばん近いだろうね。子育て代行人? 乳母? 要するに住み込みかそれに近い状態で子供の面倒を見ている人たちのこと。
そして共和党大会の演説でぶった「父に働く母親を支援する法律を作ってもらいます!」っていうのは、こういった高級取りの親がナニーを雇っている場合に税金控除ができるって話で「幼稚園落ちた日本死ね」ってな切実な子育てやってる人には関係ない。
私がイヴァンカを持ち上げる提灯記事を非難するのは、こういう恵まれた環境にいる女性を応援するより、もっとやることあんだろ、という気持ちがあるから。昨年もジェンダーギャップ指数世界111位、先進国の中では最低、ってことで話題になったダボス会議の世界経済フォーラムが出してるこの数字、今年のがまた発表されたところだけど、日本はさらにワースト記録更新の114位。イヴァンカに尻尾振ってる場合じゃないだろ、ってことで。
4月に放映されたジョン・オリバー(コメディアン)の番組でもイヴァンカ夫妻をおちょくっていて、でもこれが事実なだけに笑うだけでは済まされない気がしている。イヴァンカのイケダン、ジャレッド・クシュナーについても長々と文句が書けるんですが、それはまたの機会ということで。