「ちょっとぎこちないヤツ?」も訳せなかったオバマ大統領の回顧録を再読
いつまで経っても選挙で負けたことを認めない、弾劾裁判2度もやっても罷免できない元大統領の稚拙なスピーチとツイートからなかなか解放されないので、700ページもあるオバマ大統領の回顧録Promised Landをまた読んでしまった。
鳩山を評した、pleasant, if awkward fellow というたった4ワードのフレーズを共同通信が「感じは良いが、やりにくい」、時事通信が「感じは良いが厄介な同僚」とまぁ、何から何までチゲーよ、と言いたくなる誤訳をしてくれちゃって、話題になったよね。それどころか著名な翻訳家の人までもawkwardを「接しづらい、扱いにくい」と訳すのが適切ではないかってなことを書いてて、それにものけぞったけどさ。
そもそも、このフレーズが出てくる第20章は、オバマがアジア諸国との外交をもう少しなんとかしないとなぁ、と思って、対中国政策のために他の国を回ったって流れで出てくる話で、そもそも鳩山さんも、自分と会った数カ月後にはいなくなっちゃったし、クルクル人が変わる日本の首相、ってのはその個人個人がどうのこうのという話じゃなくて、ずっと経済政策が迷走してるってことだよな、って書いたのまで、日本のマスゴミによる鳩山さん個人の攻撃材料にされちゃってて、気の毒だったわな。
でもその章の冒頭に書かれている中国政府への評価に比べりゃ、なんてことない。なにしろ、中国については、いくらこっちがトップと丁寧に言葉を尽くして交渉しても、合意したはずの政策はぜんぜん守らねーし、それを悪びれもせず正当化してくるし、中国相手は疲れる、とか書かれてるんだけど?
国のリーダーの評価にしても、サルコジやメルケル、そしてプーチンに対する観察力はお見事。例えば、メルケルは、自分がスピーチ上手という評判を聞いて、鼻から信用してなかったらしい。サミットの間、騒がしい子供を見るような目でサルコジを眺めていた、とか、サルコジについても、身長165センチくらいで靴は上げ底、口を開けば「EUで起きた良いことはすべてオレ様の手柄、悪いことはすべて人のせい」ってな感じでエンドレスな自慢話が続くんで、通訳の人、大変そう、とか言ってるわけよw
プーチンにしても、何よりも人から軽んじられることが嫌いみたいで、権力のある地位に長いこと居座って奢ってる感じ。対談になると、すぐ、これまでどんなにアメリカの歴代大統領にバカにされてきたかをとうとうと喋り出し、ブッシュの悪口だけで30分はかかったw とかね。
で、鳩山さんはともかく、日本を訪問した際に天皇ご夫妻とも会っていて、その時の印象を綴っている部分の方がよっぽど面白かったんだけどな。これって日本のマスゴミは触れちゃいけないことなんだろうか? 例えば(当時の)天皇に対しては、現人神とされた人を父に持ち、敗戦後はいきなり象徴的な存在、とされた人生ってのはどんな感じなんだろうとか、美智子妃のストーリーはさらに興味深く、初めて民間人として嫁ぎ、裕福な資産家の娘としてカソリック教育を受け、大学で英文学を学んだと聞いたが、ピアノ曲を作曲し、贈ってくれた。とまぁ、オバマといえば、愛妻家として知られ、当時はミシェル・オバマ大統領夫人があることないこと些細な言動の一つ一つをマスコミで揚げ足を取られ、心を痛めていたことが伝わる。さらにご夫妻に心から尊敬の念を込めて丁寧にお辞儀をしたら、アメリカの保守マスコミにtreasonous(国家反逆罪的)とまで書かれたとか、グチってたりもする。
ニュースジャンキーを自称する身として、ずっと表で報道されてきたことは知ってたので、この回顧録に書かれている裏話が面白いわけだけど、そうじゃない人にとっては苦痛の700ページかもしれない。刊行時に「面白い!」と煽ってしまって申し訳ないことをしたw でもこの回顧録、ビンラディンを打ち取ったところで終わっているので、まだまだ大統領就任期間の前半戦。この後の分も楽しみ。
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