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「LINEジャーナリズム賞 23年5月〜7月期」で選ばれた記事は… 難聴や闇バイト、やまゆり園事件を取り上げた"心を動かす"3記事を紹介

2023年から四半期に分け実施している「LINEジャーナリズム賞」。さまざまな社会問題を題材として、読んだ人の心を深く動かした記事を、閲覧数やSNSでの拡散数、ユーザーアクションなどをベースに選考し表彰しています。

今回は23年5月から7月にLINE NEWSに配信された、100万本を超える記事の中から3本を選出しました。

重度の難聴の少女、そしてその父親が直面する見えない障壁と、広がる難聴理解の輪を取り上げたFBS福岡放送ニュース、事故で命を落とした息子が「闇バイト」に加担していたと知らされ、真相を追う父親の姿を描いたNHK NEWS、「やまゆり園事件」で大きな傷を負った当時の入所者が一人暮らしを実現する姿を追ったTBS NEWS DIGの記事。心を動かす3本を紹介します。


補聴器つけた愛娘、保育園を転々としても現れる壁 会社を辞めた父が挑む“難聴理解”は未来への一歩

FBS福岡放送ニュース(2023年6月27日掲載)

編集部コメント

「補聴器をつければ聞こえるんでしょ?」もし自分の子どもに聴覚障害があるとわかったら、きっと同じように考え、願うと思います。現実はそうじゃないということを突きつけられ、社会の"冷たさ"のようなものも感じてきたと思います。

親御さんは保育園からクレーマーのような扱いを受けたそうです。それで心が折れてしまってもおかしくないのに、立ち上がります。辛い時、娘さんの明るさに救われたこともあったと想像します。

恥ずかしながら、難聴の人が後ろからの音に気づきにくい理由を私はこの記事を読むまで知りませんでした。知ることで、自分の中でそれが当たり前になっていく。そのことに改めて気づかせてくれたこの特集記事が、より多くの人に届くことを願います。

LINE NEWS編集部 青木務

障害のある子どもたちの生活に迫った一本。決して悲観的な内容で終わらせず、何が問題でどういうアクションがとれるのかが丁寧に取材されています。そのため、読み終えた後は「世の中が良くなる」一端を見ているような感覚になれました。

ただ、その過程には親ですら見逃してしまいがちな盲点の発見であったり、子どもを思うがゆえの行動によってクレーマー扱いされてしまったりと、予想もできない壁が多々あることも明らかにされています。

難聴は孤独感にさいなまれることも多い境遇ではあるものの、常にポジティブに行動を起こす家族の姿は、非常に頼もしく、想像力の広がりを感じました。こういった記事が増えることで、誤解や偏見などが減っていくように思います。

LINE NEWS編集部 嘉島唯

「どうして息子が」闇バイトの果てに…

NHK NEWS(2023年5月30日掲載)

編集部コメント

「交通事故で死亡した息子は、窃盗事件のメンバーだった」。

大学に入学してわずか2カ月の間に、息子に何が起きたのかを追う父親の姿を丹念に取材していきます。

ホストクラブで働き、「人気になりたい。有名になりたい」と動画配信で語っていた息子の姿は、父親が知らないものでした。息子がなぜ闇バイトに加担したのか、なぜそんな死に方をしなければならなかったのか。その答えは最後まで返ってきません。

なにより胸に迫るのは、闇バイトの手軽さと裏腹にある危険性を忘れないでほしいと訴える父親の言葉です。
ネットを通じて簡単に社会の暗部と繋がれてしまう現代。甘い言葉に乗った末、加害者や被害者になることがないよう、多くの人に読んでもらいたい記事です。

LINE NEWS編集部 葛西耕

息子が事故で亡くなったー。ただでさえ辛く耐え難い知らせとともに突きつけられたのは、息子が闇バイトに加担していたという事実でした。息子の知られざる一面に、真相を求め探し続ける父親の姿を描きます。

"普通の大学生"だったはずの息子の足跡をたどり、徐々に明らかになる闇バイトの実態。当時車に同乗していたメンバーが死亡事故について記した「何の感情もわいてきません」というあまりに希薄な言葉に、これまで報じられてきた闇バイトとは別の恐怖を覚えました。

もっと他の方法があったのではないか、なぜ闇バイトだったのか。どんな思いも、もう息子には届きません。親としての責任とやるせなさが込められた、一緒に被害者に頭を下げることも叶わないという父親の声が、誰かの選択を変えるきっかけになったらと願っています。

LINE NEWS編集部 荒川のぞみ

『いなくなればいい』死刑囚の差別的言動。血だらけで通報を助けた被害者が、7年目に示す「答え」とは

TBS NEWS DIG(2023年7月19日掲載)

編集部コメント

「今幸せ」。記事内で尾野一矢さんの父・剛志さんはそう言い切った後、「でも幸せでいいのかなって」と続けていたのが印象的でした。

重度の知的障害があり「津久井やまゆり園」の事件の被害者でもある一矢さん。記事では、事件後に一人暮らしを始めた一矢さんが見せた変化と、家族や介護者の思いを通して「障害者なんていなくなればいい」という植松死刑囚の主張への「答え」を提示します。

「意思疎通もできるし、普通の生活もできる」と話す剛志さん。実名で取材対応されているご両親の覚悟とともに、「決してきれい事だけでは語れない」現実が痛いほどに伝わってきます。

事件から7年を経た現在も、社会の分断を感じる瞬間は多くあります。それを少しでも解消するために私たちにできることは何か。この記事は、それを考えるきっかけとなるのではないでしょうか。

LINE NEWS編集部 前田将博

「津久井やまゆり園」の入所者ら45人が殺傷された相模原障害者施設殺傷事件。この凄惨な事件を起こした植松聖死刑囚は、重度の障害者を「心失者」という造語で呼び、「生きている価値はない」などと差別的な主張を繰り返しました。

事件の被害者であり、重度の知的障害と自閉症がある尾野一矢さんの生活を知ると、植松死刑囚の主張は間違いであると改めて実感し、多くの命が奪われたことに憤りを覚えます。事件によって心に深い傷を負いながらも、一人暮らしを始め、前に進んでいく一矢さんの姿は微笑ましく、「うちの息子は心失者でも何でもない」という父・剛志さんの言葉に強く共感しました。

このような事件を二度と起こさないために、そして、すべての人が尊重し合って生きられる世の中にするために何ができるか、深く考えさせられました。

LINE NEWS編集部 奥村小雪

当事者の心情に迫り、社会問題を切り取った3本を紹介しました。次回は23年8月から10月の期間に配信された記事を対象に選考・表彰します。日々さまざまなニュースをお届けしているLINE NEWSをぜひ覗いてみてください。

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