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地震の爪痕、担任からの性暴力、教育虐待の末に母殺害…「LINEジャーナリズム賞 24年5月〜7月期」受賞の3記事

さまざまな社会問題を題材として、読んだ人の心を深く動かした記事を、閲覧数やSNSでの拡散数、ユーザーアクションなどをベースに選考し表彰する「LINEジャーナリズム賞」。

今回は2024年5月から7月にLINE NEWSに配信された、100万本を超える記事の中から3本を選出しました。

能登半島の現状と"復興"への思いを伝えた現代ビジネス、小学生時代に受けた性暴力に向き合う女性を取り上げた毎日新聞、"教育虐待"の末に母親殺害に至った娘の思いと事件の背景に迫ったFNN PRIME onlineの記事。心を動かす3本を紹介します。


いまも癒えない「能登半島地震」惨状の爪痕…避難者は3000人超え「ここにはもう住めない」

現代ビジネス(2024年6月1日掲載)

編集部コメント

「見捨てられた能登」「生きているうちには復興しない」。

インターネットが発達し、情報が広く誰にでも届くようになった現代でありながら、能登の今を伝えるニュースは著しく減少し、自分たちの関心低下に対するような言葉が胸に突き刺さりました。

震災報道では、憤りや悲しみなどの感情を強調したものも見られる中、筆者は人々の声を淡々とつづり、倒壊した家屋や隆起した海底の白さ(かつて水面下だったため)も、地震前の暮らしや光景を静かに想像させます。

記事中の「宝立七夕キリコまつり」は今年は中止となったものの、前向きに動き出す人間の強さを感じます。歩みを継続的に伝えることで、被災地に寄り添い、課題を明確にする報道の役割を再認識しました。

LINE NEWS編集部 杉本良博

元日に発生し、最大震度7を観測した能登半島地震。

5カ月後の6月1日、取材者は能登の復興状況を確認するため瓦礫などが多く残る現地を訪れます。

金沢から車で2時間半。路面が波打つ、のと里山海道を走り、通行止めの道を迂回しながら避難所や朝市を巡る描写に、まるで自分自身も能登の"いま"を直接目にしているような感覚に襲われました。

「復興なんか出来るのか」「何をしていいのか分からない」。現地で出会った人々は、それぞれの立場から率直な思いを口にします。

私も1年ほど前に能登を訪れる機会があり、ゆったりと流れる空気や人々の温かさを思い出し胸が締め付けられました。報道量が大きく減少している今こそ、自分にできることは何かと改めて考えさせられました。

LINE NEWS編集部 荒川のぞみ

担任から性暴力…「自分が壊れてもいい」と向き合った、30年前の悲劇。女性が実名で語り続ける理由

毎日新聞(2024年7月12日掲載)

編集部コメント

小学校時代に担任から性暴力を受けた女性が、約30年後に被害を打ち明け、加害者と対面して謝罪を含む合意書にサインさせるまでの過程と、その後を追った記事。

彼女は自身の半生について、加害者に「『支配』され続けてきました」と表現していましたが、逃れられない記憶をもとにつづられた生々しい当時の状況、そして元担任や教育委員会の対応などから、修復しようがない傷の深さと、この問題の根深さが痛いほどに伝わってきます。

「ないですよ、手応え。だって、まだ何も変わっていないですよね」

性被害を防ぐための活動を続けている彼女は、その手応えを聞かれ、そう言いました。この言葉を我々ひとりひとりが受け止め、社会全体が変わっていかなければならないと、強く感じました。

LINE NEWS編集部 前田将博

「どうしても記憶から逃れられない」小学生で性被害に遭い、大人になってもPTSDの症状に苛まれる女性の言葉に胸が痛みました。

性暴力は、心に消えない傷を残すことから"魂の殺人"と言われます。加害者に会い謝罪を要求するには、相当な覚悟が必要だったでしょう。未来の子どもたちのため、行動された女性の勇気に心から敬意を表します。

そして、ここまで自力でやらなければ被害が認められない現実に憤りを覚えました。当事者だけの問題にせず、周りの人々が協力して性暴力を許さない社会にしていかなくてはなりません。家族や教師、教育委員会も含め、我々大人が知識を持ち、子どもたちが被害を受けないよう、もし被害に遭った時には手を差し伸べられるようにしなくてはならないなと、改めて感じました。

LINE NEWS編集部 奥村小雪

母殺害…殴られ、切られながら医学部9浪。獄中で娘が思う「本当は母に伝えたかったこと」

FNN PRIME online(2024年5月9日掲載)

編集部コメント

2018年に起きた凄惨な事件は今でも鮮明に覚えていました。

記事内でも参照されていた「母という呪縛 娘という牢獄」でも書かれているとおり、母を殺めるに至る一部始終は、今読んでも喉元に残るような苛烈なものです。

記事では、書籍の内容を参考にしつつ、学校の同級生や教師などの周辺取材を通して、事件が起きるまでの異常性があぶり出されており、さらに直筆の手紙で現在の彼女について、記されています。

どのような日々を送り、母親に対してどのような感情を抱いているのか、どうすればよかったのか――。記事を読むと、客観的に見ても地獄のような日々であることが痛いほどに伝わります。

現在の彼女が、親世代・子世代に向けた切実な願いも、非常に説得力がありました。

LINE NEWS編集部 嘉島唯

壮絶な"教育虐待"の果てに起きた娘による実の母親の殺害。

「いずれ、私か母のどちらかが死ななければ終わらなかったと現在でも確信している」と裁判で語りながらも、獄中からの手紙で、当時の母を思いやりながら「駄目な私も、お母さんの子供として受け入れてほしかった」とつづる気持ちは、想像を絶する娘から母への痛切な思いを感じました。

記事では、書籍「母という呪縛 娘という牢獄」、中高の同級生や高校時代の恩師への取材、そして獄中からの手紙を通して、なぜ自ら母を殺めるに至ったか、痛ましい経緯が詳らかにされています。

最後に記された、教育虐待の最中にいるかもしれない親子や周囲の人々に向けた彼女の思いは、1人でも多くの人に届いて欲しいと思いました。

LINE NEWS編集部 井上眞理子

事件や社会課題の当事者たちの切実な思いを紡いだ3本を紹介しました。日々さまざまなニュースをお届けしているLINE NEWSをぜひ覗いてみてください。

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