夏と旅とコンプレックス《後編》
一泊遅れで合流するつもりだった友達との高知旅行。
夜行バスに乗りそびれ、後続便の四国行きの席を探すも見つからず焦るばかり。
西日本の大都市と言えば大阪か…と、とっさに調べるとまだなんとか席が残っていた。
当てずっぽうで大阪→高知便を調べると存在して席もわずかながらある。乗り継ぎ時間を何度も確認して、それぞれのチケットを抑えた。
当初、7:20に着く予定だった時刻は14:15になった。7時間の派手な遅刻である。
・・・
乗り遅れたバス代を無駄にして、大幅な遅刻に組んでくれていた予定の変更依頼。
こんなとき、いままではこてんぱんに自分を責めてきた。でももうやめてみようと、少し前に決めていた。
事実(起きたこと)と感情(気持ち)がぐちゃぐちゃになりやすく、すぐに不安になってしまう。そのせいでまわりはもちろん、自分自身も辛かった。
起きてしまったことは仕方ない。謝罪して最善を尽くして、あとはできることをやるだけだった。
とはいえわたしはまだまだ弱い。
友達のLINEグループへ報告する前に、サザンテラスのひときわ雰囲気のよい庭園でひとり缶チューハイを開けた。
まわりのカップル同士の距離は近く、BGMは「サマーヌード」。デートだったら最高の夜だろうな、という考えを押しのけて謝罪文を送る。
返ってきたメッセージは、それはあたたかかった。なんという人格者たちだろうと思うとともに、自分の小ささが新宿の夜に溶けていきそうだった。
翌朝、バスは予定より少し早く大阪に着いた。
エスカレーターの立つ位置が普段と逆なこととと、腰からお尻にかけての痛みは移動した距離を物語る。
カフェでコーヒーを補給し、高知行きの車内に乗り込む。わたしは高速バスが好きだった。長時間ぼーっと物思いにふけることにお墨付きをもらえるようで、とてもワクワクしてしまう。
家にいてもだいたいぼーっとしている気はするけれど。
・・・
友達と連絡を取りつつ外の景色を眺めていると、バスは四国へ入った。
甲子園風にいえば5年振り2回目。なんとなくただよう南国の雰囲気はシュロの木のせいだろうか。
14:00には高知駅前のロータリーに降り立った。思いっきり背伸びをしてから、さっそくおみやげを見にいく。
友達は香川へ出かけていたので、戻ってくるのを待つことになっていた。大好きなゆるキャラ「しんじょう君」のグッズがたくさんあって疲れが吹っ飛んだ。
駅前のカフェでミレービスケットと芋けんぴが刺さったソフトクリームともに、noteを読みふけっていた。何度も読んでしまうお気に入りの記事をまとめていると「あと3分で着くよ!」とLINEが来たので慌てて席を立った。
友達が乗ったシルバーのレンタカーが駐車場に入ってくる。みんな一様に笑顔で手を振ってくれた。
あとから聞いた話だったが、わたしが第一声でなんというか予想をしながら来たらしい。ドアを開けてやけに笑われたのはそのせいだった。
「やっほー」
は、旅のあいだの流行語になった。
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