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初めて文章を書いた時のこと
ーわたしは幸い人間で、見えないふりをするのには長けていた。ー
私が描く文章を、最初に褒めてくれたのは
小学校六年生の担任の先生だった。
卒業を目前に控えた私たちは、
6年間を振り返った卒業文集を書くことになった。
どんなふうに書けば良いのか、原稿用紙を眺めて1時間が終わったりもした。
その頃すっかりいじめにも慣れていた私に、
相談する友達なんてもちろんいなかった。
だからみんながどう描いているのかを知らずに、私は学生生活としての6年間ではなく、自分のその短い生涯を振り返ってみることにした。たったの12年を。
うまくかけたかはわからないが、とりあえず原稿を埋めて提出すると、数日後担任の先生に呼び出された。
わざわざ呼び出されるんだから怒られるんだろうと思って肩を竦ませていた私に届いたのは、あなたの文集をクラスの人たちにきかせてやってもいいか?と言う内容だった。
他の生徒は6年間を行事ごとに振り返り、楽しかったことなどを書き連ねているのに対し、そんなことには微塵も触れず、自分の思いや人生について描いた私の文集を褒めてくれた。
むず痒くて嬉しくなった。でもいじめられてるような私の文集を、みんなに聞かせるのは正直迷った。また馬鹿にされるかもしれない。
その結果、どうせあと数日しか共に過ごさないのであれば、聞かれたって構わないし、そもそもそんなに真面目に人の話を聞く奴なんていないだろうなと思い承諾した。
その文集が私の、人生最初の文章だったと思う。