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日本は本当に「オワコン」なのか?水際対策で日本へ入国できない留学生114人に聞いた本音と葛藤
今世界中には40万人のインバウンドタレントが日本に入国できないでいる。そのうちの15万人は、少子高齢化が深刻化する日本社会の未来の担い手である留学生達だ。政府は水際対策を緩和し、1日あたりの入国者枠を拡大すると同時に、留学生の入国手続きを簡略化することで調整しているが、留学生が優先的に入国できる枠は特に設定していなく、実際入国できるまで時間がかかると予想される。
Lincは、『「日本に来てよかった」を最大化させる』事をミッションに、インバウンドタレントのライフイベントを支援する企業として、水際対策で日本へ入国できずにいる114名のユーザーに対して彼ら彼女らの「今」を知るべく、先日アンケート調査を実施した。
アンケート調査の概要
調査対象:入国制限により、日本への入国を待機している外国人留学生
調査期間:2022年2月14日~18日
調査方法:インターネットを通じた任意回答
調査人数:114人(中国78人/ベトナム36人/マレーシア1人)
年齢比:18歳以下:12名/19-24歳:89名/25-30歳:10名/31歳以上:3名
本アンケートを通じて、直近2年間の日本の実質的な鎖国政策の影響、そして、今後も日本がインバウンドタレントに「選ばれる存在」になるために社会全体がどのような行動を取っていくべきかを考えるきっかけになれれば大変嬉しく思う。
アンケート調査結果が示す留学生の本音と葛藤
日本に留学する事を決めた理由
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何故日本に行きたいかの質問に対し、実に全体の6割の方は日本での生活に憧れがあるからと回答している。また、5割を超える方が日本の文化(アニメ・漫画といったサブカルチャー含む)や食べ物が好きと回答しており、元々の留学の動機が「日本が好き」だからであるという事が分かる。「日本はインバウンドタレントの眼から見て既に魅力の無い国」的な論調が多い中、現時点ではまだまだ好意的に思ってくれている人も多くいるということが調査から分かった。
また全体の15%、中国単体で見たとき約2割の回答者は「親に勧められたから」を選択している。コロナ禍前では毎年2,000~3,000万人程のインバウンド観光客が日本を訪れ、その際に日本を好きになったという人も多くいるだろう。私が懸念するのは近年の鎖国によって留学する当人である留学生だけでなく、彼ら彼女らを取り巻く親や親戚まで日本に対する心象が相当悪化しているのではないか、ということだ。その場合、人の移動が正常化したとしても「日本に来なくなる」といった事が予想でき、日本に与える社会的・経済的ネガティブインパクトは相当なものになるだろう。
現在までの待機期間の長さ及び入国制限が更に続く場合の選択
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待機期間に関して、今回アンケートに協力してくれた留学生の5割以上は1年以上も来日できずにいる事が分かった。
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そして今後も入国制限が続く場合、どうするか?という質問に対し、約44%の方が「いつまでも待つ」と選択おり、「キャンセルする(もしくはした)」「行先を変更する」と既に来日しない結論がでている方が約18%との結果となった。
「いつまでも待つ」と選んだ方が想定以上に多くいると驚かれた方もいるのではないかと思う。ただ決して楽観視はできない。
何故なら今回50名の回答者のうち詳細に何故この回答を選んだのかコメントを残してくれた方が37名いたが、
「日本留学がずっと夢で、決意したから初心を貫く」、「(コロナが)海外で本格的に流行するリスクがない。まず自国勉強してから日本に行って試験を受けることができる、勉強代や生活費も安くなる」
等とポジティブな理由で「いつまでも待つ」と回答したのは10名(約3割)しかいなかった。
残り7割の方は「もう他の選択肢が無い」「待つしかない、どうすることもできない」「長い間準備をしてきたので、受験を終えたい」
等と既に長い期間時間も労力も費やし、今更変更したくてもできないといったサンクコストの高さに対する葛藤が垣間見える結果となった。
既に来日しないと決めた全体の2割の回答者からは
「もう21歳なのに2年近く待たされ、大学もまだなのに、もう耐えられない」「入国を長く遅らせると、人生の発展に重大な影響を及ぼす」「待つ時間が長い、将来の予定がずっと変更してる、時間が無駄すぎて。。今韓国を考えてる」「疲れた」等と苛立ちと疲弊と失望の声が聞こえた。
隣国である韓国や他国にスイッチする動きも顕著に出てきており、正に「日本はもう選ばれないのでは」との危機感を覚えた。
そして本当に危機感を感じざるを得ないのは「2022年4月まで待つ」と「まだ分からない」と回答してた全体の4割の留学生だ。
「青春時代を浪費する余裕はない」「入国制限のため、同級生はすでに2年生、3年生になっているが、自分はまだ大学にすら入学していない」「日本に行きたいのは夢だが、時間も大事じゃないか」「家族と話し合って決めたい」
等と来日を諦めきれない気持ちと、鎖国の現状に対する失望や焦りの狭間で揺れ動く本音が見える結果となった。
仮に今待機している15万人全員が今回のアンケート回答者と同じ状況であると仮定した場合、4月までに開国出来なければ実に全体の56%である8.4万人が来日を諦めかねない。。
この8.4万人に加え、アンケート結果から分かった来日できても日本に対し不満がある可能性が高い留学生の割合を合計すると、実に全体の87%である13万人の留学生が日本に対し失望する事になる。この13万人を取り巻く友人や家族も同様に日本に対しネガティブな感情も持つ可能性が高い事を考えると、100万人単位の人がこの度の鎖国によって日本離れしかねない。
正に「オワコン」への始まりではないだろうか。
想像しただけで戦慄を覚える。
中長期的に日本経済を支える高度外国人材を失う恐れ
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現在日本で毎年就職する新卒は約40万人おり、そのうち〜5万人は留学生である。就労の観点で見た時、現在入国できずにいる15万人の留学生が中長期的に日本の労働市場に与えるインパクトの大きさが改めて良く分かる。
卒業後の進路について聞いたところ、86%のベトナム人留学生と53%の中国人留学生が「日本で就職したい」と回答した。そして31%の中国人留学生は「まだ分からない」と回答した。
「日本で就職したい」と回答している方からは「日本での就職経験は大切で、帰国しても活かせる」「日本人が仕事をする態度に尊敬する」「中国で競争が激しいから」「日本がとても好きだから日本に残りたい」等のコメントが寄せられた。
そして卒業後の進路について、日本で就職するか「まだ分からない」と回答している中国人留学生が3割いる事も興味深い。入国制限で待機している留学生15万人人のうち、約半分の7.5万人は中国からの留学生である。単純計算すると2.3万人は将来日本で就職するかまだ迷っているいるということになる。
不透明な水際対策で日本に失望し傷心した中国人留学生を振り向かせ、将来日本で働く事を選択させることができるか、今後の日本の労働環境・条件の向上と高度外国人材政策の充実に期待したい所である。
岐路に立つ日本、4月が分岐点か
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JICAの統計によると、少子高齢化が深刻化する日本が、政府の目指す経済成長を2040年に達成するためには現在の4倍近い674万人のインバウンドタレントが必要になる。
単純労働力のみの確保だと経済成長は担保できない。優秀な人材を多く集め、「一人当たりの労働生産性」を高める事が急務となっている。
日本で高度人材ビザや技術・人文・国際関連業務ビザを獲得しているほとんどのインバウンドタレントも元留学生だ。日本語に堪能であり、日本の文化や商習慣にも適応出来る彼ら彼女は高い労働生産性を誇るだけでなく、日本経済の発展に必要不可欠なイノベーションの起点になる人材でもある。
―― 日本の人材難はイノベーションを起こすうえでネックになってますか?
もう終わってるというか・・・。
ある概念が固定されると変えるのに何十年とかかってしまう。変革に向け最も簡単なのはダイバーシティ(人材の多様性)の加速でしょう。色々な国の人と過ごし、一緒に仕事をする事(がイノベーションに繋がる。)
―― 久夛良木 健 「プレステの父」 近畿大学情報学部学部長
従って今の水際対策による留学生の入国禁止は単純に「留学」という側面に留まらず、中長期的には日本の労働市場、ひいては経済全般に対し深遠な影響を与える可能性が高い。
また一年以上も入国制限で来日できない留学生が5割もいる中、この蓄積されてきたフラストレーションは彼ら彼女らを取り巻く親族や友人にも大きな影響を与えると思われる。
国家・民間双方において日本の国際社会における評価の下落はもはや不可避である。
そしてアンケート結果からも分かるように、4月という日本の教育機関の入学シーズンまでにもっと大規模な開国ができなければ、多くの留学生は日本に見限る事になるだろう。ここが一つの分岐点になるかもしれない。
インバウンドタレントに「選ばれる国」になるか、「見向きのされない国になるか」、日本は今岐路に立たされている。
終わりに(共感と拡散)
最後まで読んでくださって本当にありがとうございます。最後に何点かお願いだけさせてください!
1. 共感したら是非拡散 & ♡を押してください!
「外国人材・インバウンドタレント」という多様性は日本の未来に必要不可欠です。水際対策で来日できず苦しんでいるインバウンドタレントはまだまだたくさんいます。彼ら彼女らの生の声をより多くの方に知ってもらうべく、そして一日でも早く日本へ来れることを実現すべく、今後も積極的に情報発信して参ります。共に日本を「選ばれる国」にしていきましょう!
共感して頂ける方、是非拡散して頂けますと幸いです!
3. SNSフォローしてください!
良かったらTwitterをフォローしてください!スタートアップ、日中ビジネス、資金調達、マネジメント、自己啓発関連の話がメインです!最近は入国制限の影響や水際対策、高度外国人材政策関連についても積極的に発信しております。
「外国人材の受け入れ」という言い回しには正直違和感しかない。
— Shiyo Naka @ Linc CEO (@shiyo_naka) January 25, 2022
受け入れる努力は勿論賞賛すべき。
でも悠長過ぎやしないか?
「受け入れ」とか言ってると気づいたら誰も来なくなりそう。
「選ばれるために」何をしないといけないか考えたい。
手遅れになる前に、選ばれる努力をもっとしたい。
3. 一緒に働きませんか?
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