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「旅」を終えて【メタファー:リファンタジオ ネタバレ有りクリア後クソ長レビュー】

選挙戦、駆け抜けました。応援してくれた皆さんありがとうございます。選挙中撮りためたSSは515枚。たくさんの思い出をありがとうございます。これから良き王国を作るために、粉骨砕身、国民ファーストで頑張ってまいります。

本記事は以下のような内容を有しています。危ないと思われる方はこの時点でお引替えしください

  • ネタバレだらけです

  • 基本的には「好き」を書いていますが、一部完全版に向けた要望も書いてます


幻想とは、現実に影響をもたらさない、無力な作り物か?

メタファーのテーマの一つは、シンプルに見るとこの問いにNOを突きつける事だったと思います。ただ、きっと多くのプレイヤーは最初から心のどこかにそのNOを持っていただろうと思うんですよね。特にRPGを愛している人ほど、たくさんの幻想の物語に勇気づけられ、支えられてきたはず。だから、最初から最後まで、この問いに対する驚きみたいなものは無いというか、そうだよねっていう感じだというか。でもそんなことは作り手も分かってるはず。その上でどんな展開をするんだろうっていうのがとても興味あるところでした。

メタファーは「アトラスが王道ファンタジー」を作るという触れ込みで始まったプロジェクトですが、ふたを開けてみたら「ファンタジーの皮をかぶったドロッドロ現実」だったという、本当にアトラスらしい作品でした本当にありがとうございました。

冒頭のアニメーションからひどい扱いのパリパス。隠遁するユージフや、自らを偽る二ディアなど、ファンタジーだからこそ現実のメタファーとして差別や偏見などを強調して描くことができる。だから描かれているは全てが現実の自分たちに返ってくる。そして、そこに挿しこまれる小説という形での私たちの現実は、理想郷のように描かれているが実際はそうでないとプレイヤーは知っている。という構図はなんてアイロニックなんだろうと思いました。この常にメタな視点が呼び起こされるというストーリーテリングはとても新しい体験で、キャラクターたちのセリフ一つ一つが重みを増す絶妙なギミックだったと思います。

ストロール…私たちの世界もいざこざばっかりだよ。

それでも、現実だからこそ存在する不条理に、どう立ち向かうのか。そこに不安というもう一つのテーマを絡めて構成されたストーリーは、まさに王道と言うべきものでした。実はこの世界が幻想で本当はお前が生きているのは新宿なのだーっていう展開も想定はしてましたが、安易にそうはせず、まっすぐに主人公たちの旅を描いてくれたんだなと感じます。ルイの立ち位置も、もっと複雑な物にできたと思いますが、王道として分かりやすく振り切ったんだろうなという印象(でも途中、ゾルバがいなかったらどうするつもりだったの、とは思うw)。

幻想は現実のメタファーであり、不安と恐れを味方にすれば未来が拓けるという事を学ぶ術。この幻想(ゲーム)を終えても、私たちの現実の未来はここから繋がっているんだという事に気づかされたように思います。

現実を変えるのは、ここからの私たちなんですよね。王様。

何故「旅」だったのか

最初は(特に)ペルソナとの差別化で入れたのかな、くらいに思っていた「旅」要素ですが、本当にゲームになくてはならない物だったなと思いました。

このゲームは奇跡的に日本では衆議院選挙、アメリカでは大統領選という歴史の節目に重なるようにリリースされました。ゲーム内のメッセージが現実と交錯するように感じられたのはそのせいもあったかもしれません。

今の私たちは政治や世界にこれほどまでに必死になれているだろうか。不安を誰かに預けて見ないふりをしていないだろうか。幻想の世界で時にはコミカルに描かれる候補者たちは、いったい誰のメタファーだったのだろう。幻想は現実の複雑さをデフォルメして分かりやすくするけど、私たちは現実ではゴダードの様な人達を力で屈服させるわけにはいかない。でも現実には、自分とは違う人達にレッテルを貼って分断が進んでいるように思う。

彼の事を老害なんて言葉で片づけていいのかな

インターネットの世界では自分が興味のある情報しか流れてこないのは当たり前で、現実社会でも世代や経済力で住み分けがされている。地域のつながりも少なくなっていって、私たちは分かり合うことからどんどん遠ざかっている。いつも同じような人たちと触れ合っていると心地いいけれど、新しい刺激や緊張を強いられる経験からは遠ざかる(ゼロとは言わない)。そんな生活の中で、私たちは知らない間に停滞しつつあって、夢や幻想を描くことをしなくなっているのかもしれない。

そんなことを思いながら、本作で重要な要素となっている「旅」に思いを馳せると、新しい何かとの出会いを演出するため、そして「わかりあう」という事を体験するためにとっても素晴らしいデザインだったと思う。ただマップを歩くのではなく、ファストトラベルするのでもなく、仲間と時間を過ごしながらやがて目的地に着くという演出は、世界の広がりを感じさせるとても豊かな時間でした。

最初は「あーステータスUPをこの時間にやれって事ねー」くらいの考えでいたのですが、しっかりと数回分のセリフが作られていて仲間への理解が深まる時間になっているんです。今作は王の資質は比較的簡単にカンストするので、むしろステータスUPの方がオマケと言わんばかりの仕立てになっています。

ペルソナでは基本的にコミュイベント(今作のフォロワー)を通じてキャラの掘り下げが行われていましたが、今作ではそれ以外のシーンでも触れ合えるようになったのがとてもいい。これは、異種族パーティーである主人公たちがお互いの事を知るという事を描くにあたって、無くてはならない物だったと思います。オフの時間にしか話さない感じっていうのが確かにあって、そういうのがキャラクターたちの人間らしさを引き立てていたなって思います。

ジュナと過ごしたかどうかで彼女へのイメージはかなり変わると思います

そうした交流の中で挿しこまれる絶景地でのやり取りもまた微笑ましくて、みんなで世界をめぐっている感覚が強まっていきました。もう一生このままみんなで旅したいよ。

ニューラスの書いた絵はサントラに同梱されるみたい!

そう思ったらトゥルーエンドでしっかり旅に出てにっこりしちゃったので、制作陣の掌で踊らされてるなって。でもいいの、もっとちょうだい!

もっと旅したいよぉぉぉぉ

実際の旅もそうですけど、ただ何かの目的を達成するために最短距離を行くわけじゃなく、その道中や情景、友達との会話何かが一番の思い出だったりします。鎧戦車の機能(ステUPや種の栽培)だけを意識すると勿体ないなと思えるテキスト(セリフ)量に大満足でした。

世界設定とゲーム設定の統合が美しい

体験版レビューでも書いたんですが、この世界では音楽は最古の魔法なんですよね。それが最初に触れられたうえで、最後の重要な展開に持ってくるの、予想はしてましたが美しかったですね。新宿を背景にこういう事やって感慨深いところに、35年の重みを感じます。

最初の設定が最後に出てくるの、大好物です

設定と言えば忘れてはならないのがカレンダーシステム。ペルソナではやや空気となっていた感もありますが、本作では旅程を考える必要が生まれたことできちんと存在感が出るようになったと思います。この辺ちゃんと考えなかったせいで、1周目最後に全部の料理が作れませんでした(ヌシ釣りがどうしても日程的に無理だった…)。せっかくなので、もっと複雑な旅程が組んでみたかったな。拠点戻らずにふらつきたいw

そして何よりアーキタイプ。不安と恐れを味方につけた物だけが使える真の魔法。これもユングからきている概念で、ペルソナも元型の一つです。元型もまた集合的無意識に存在する普遍的イメージなので、誰かからそれを感じることによって自分もその意識に同調できると私は理解しています。P3以降はキャラクターの設定を強調するためかペルソナの付け替えができるのはワイルドである主人公だけとなってしまいましたが、本来集合的無意識を扱うのならば、絆の深まりに応じて元型を共有する方が理に適っていると感じます。

人と触れ合うことで出会って人の行動に感化されることで「あ、この人って
すごく実はナイトっぽいな」とか「実はこの人って本当に戦う人だな、戦士だな」みたいな感じの人と触れ合うと自分の中に生まれながらで持っていてナリを潜めていたファイターっていうようなアーキタイプが目覚めるみたいな構造になってるんですよ

『メタファー:リファンタジオ』CREATOR'S VOICE「This is "Metaphor: ReFantazio"」

また、ユングの元型の考え方では、自己という元型が心の中心にあり、そのほかの様々な元型と向き合い、統合していくことで「個性化」がなされるといわれています。最終的に発現するロイヤルのアーキタイプは、複数のアーキタイプのレベルを上げていくことで履修可能となるものですが、こういった「一見ゲーム的には普通の事だけどちゃんと背景にある理論を表現している」のはとても美しいなと思います。

その上でロイヤルを除くアーキはスキルの付け替えができる事でジョブシステムとしても奥深さが増しており、とても楽しくPT編成を考えることができました。こういうシステム面の工夫と背景設定が整合しているのホントに好きです。

キャラの個性とジョブシステムとしての柔軟性が両立してて最高でした

音楽という魔法があってよかった

体験版レビューでも書いたのですが、本当に重厚で世界観とマッチしていて、どのシーンも最高にプレイ体験を引き上げてくれました。音楽が自分の心情を表しているという設定も相まって、パーカッションが凄くいいなって思いました(読経も歌というよりはリズムだと思うんですよね)。自分の鼓動っぽく感じて凄くリズムでノせられるというか。躍動感や重厚感がリズム側からガンガン発せられてて、シーンごとの没入感が凄かったです。その中でも、既存の宗教音楽をベースにしつつも長現山妙常寺住職の本良敬典氏が歌い(唱え?)上げる楽曲群は非常に象徴的でした。特にオープニングで流れる「英雄譚序曲」や、先制取った時のバトル曲「猛き者たちよ」などは一度聞いただけで情景が目に浮かぶようで、聞きほれてしまいました。

音楽と演出の一体感と言えば、やっぱり仲間の覚醒シーン! 特に最初であるストロールは「お前が立候補するんじゃないのか」くらいの熱さでしたね。自分の名前を名乗る演出が最高にしびれたので、全員がそうじゃなかったのはちょっと残念でしたが。ちなみに、英語版のストロールのシーンもめちゃくちゃカッコいいです。声優さんはFF16でディオン役を務められていたスチュアート・クラークさん。セリフ回しもちょっと詩的で、改めて英語で全部やり直したくなりました!

バトルと編成が楽しい

倒し方分かってる雑魚と毎回毎回コマンドバトルとかするのって時間の無駄じゃないけど面倒くさいじゃないですか。そういったところはやっぱり爽快にプレイしてほしい

『メタファー:リファンタジオ』CREATOR'S VOICE「This is "Metaphor: ReFantazio"」

というわけで、ファスト&スクワッドについては既に体験版でレビューした通りなのですが、全体通じて非常に爽快にプレイできたなという感じでした。レベルが低くても経験値が高めの敵はわざとスクワッドで倒したり、選択の幅が合ってとても楽しかったです。

全体的に満足という前提で、製品版で改めて感じるところとしては、ファストの比率が高くなることで単調さがでることでしょうか。せめてアーキ(もしくは操作キャラ)をフィールド中でクイックに変更できると、かなり楽しくなったんじゃないかなと思います(P5Sでそれを体験しちゃってるので、どうしても思い出しちゃいましたね)。アーキごとのアクションも1種じゃなく、バリエーションあったりとか。

コマンドバトルはペルソナ譲りのテンポの良さで、エンカウントしてもサクサク終わるので全然ストレスありませんでした。特に序盤は困ったらお金の力で解決したり…w 一部の算盤は「消費金額とダメ2倍」という追加効果を持っているので、耐性無視でぶっ叩きました。多くの攻略サイトが「最初はステを魔に振っていくといいぞ」って書いてるんですが、私はこれのせいで最初から力全振りでした。MP消費もないのでダンジョン攻略も捗ります。結果としてプリンス覚醒後も物理万歳でクリアできちゃいました。脳筋王子でごめんね…(´ω`*)

やはりお金…! お金は全てを解決する…!

アーキは合体システムと違ってスキルが自由に付け替えられるのがよかったですね。おかげでいろんなパーティービルドができて楽しかったです。クリティカルバフ付けてお金ばらまいたりw

後半になるにつれて通常戦闘の難易度がさほど高くなくなってくるんですけど、全ドラゴンをノーダメキルできるかという遊び方ができたのも楽しかったですね。プリンスでプレス増やしてワンターンで押し切ったり、ハイザメの回避で相手のプレス全部削ったり、ヒュルケンベルグが全種バリア張って完封したり…みたいなのをいろいろ試すのも楽しかったです。

もはや詰将棋

完全版が来るかもしれないけど…

最早お約束の完全版はむしろ来るのを待ってるまでありますが、上記のアーキ切り替え含めてこんなことがあったらいいなぁ

  • 旅程の自由化や絶景追加、旅中のイベント追加

    • もっと旅したい! 焚火囲みたい! 毎回拠点戻らなくてもいいじゃない

  • ダンジョンと敵のバリエーションを増やす

    • 特にサブクエは同じようなダンジョンと敵であまり変わり映えが…

  • 空白の1年のあれこれ+新しい旅の話

    • 「1年後…」はもともとそのつもりなんじゃっていうw

    • 絵の場所にマリア連れてってあげたいです。おねがいします。

  • EXPアイテムはまとめて使えるようにして…

    • 一個ずつ連打で使うの辛かったですw

  • 恋人イベントは無くていいかな…

    • なんせ王様だし、正室と側室みたいな感じになるの嫌だな…

最後の方こんなことになるから、ひたすら連打する羽目に…w

幻想の旅を終えて

この物語は、単純に感動したとか、楽しかったとか一言でいう事は難しい。すごく現実を投射していて、胸が苦しくなるシーンが多かったから。それだけ、私は幻想を描くことをせず、不安や恐れと向き合ってこなかったのかもしれない。

そう思って、自分にとっての英雄ってどんな人だろうと考えてみることにしました。自分にとって尊敬できて、頼れる人々。いつかそうなりたいと思う人々。そんな元型を心に抱いて歩み続ければ、いつか自分が実現したい何かを形にできるかもしれない。そんなことを思いながら、自分なりにできることをしたいなと思わせてくれる作品でした。

最後の主人公んの選択肢「できることをしたい」が好きでした

この作品をプレイした皆さん自身の旅が、素晴らしいものになることを祈っています。

※一番書きたかったキャラクターの事は、既に5000文字も超えてるので別記事にしようと思います。ていうかその他の細かいことも含めて一回で書ききれない!