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プロレスとはなんなのか ―愛には愛で返そう―

プロレスとはなんなのか、
ずっと考えている。

台本があって、勝ち負けも決まっているとかいないとか、プロレスラーはなぜ身体を壊して闘うのか、私たちは何を見ているのか。 


  G1CLIMAX34 が終わり、ザック・セイバーJr.が覇者となった。
銀色のテープが舞って、テーマソングが流れる。雑誌の表紙もパネルもザック一色に染まった。
今年の夏、1番強いのは彼だとプロレス史に刻まれた。

私が応援していたのはKONOSUKE TAKESHITA

DDTの頃から応援していた竹下。
竹下は誰にも負けない、と

だって強いから。
 
でも、トーナメント初戦で負けた。
ジーンブラスターを食らって負けた。

マットが強く叩かれる。
3カウントと同時にゴングが鳴って、
目を覚ましたかの様に辻陽太を突き飛ばしながら右肩を上げた。
だけどもうゴングは鳴り終わっていた。


 まだ、竹下は立ち上がる気だったんだと思った。 
でも同時に、竹下がここから先には進めない とわかった。

プロレスは事前に勝敗が決まっていて、それまでの流れを如何に見せるかだ。
という人がいる。

そうなんだと思う。
応援したって、開始のゴングが鳴ったときには勝敗はついている。

竹下はG1に出ると決まったときから優勝なんてできなかったのだ。
外敵として新日のレスラーに倒されるために呼ばれたのだ。

世代交代が謳われる今大会で、初参戦の外敵が勝つことはない。

この一撃を避けてジャーマンで投げっぱなした後に、全力でエルボーをぶつける。
ー本気でそう思っていた。

竹下幸之介noteより

じゃあどうして、
どうして、倒れたの
エルボーをぶつけて辻が倒れたら、竹下は勝っていたの? 

本当は勝敗のシナリオなんてなくて、ただ本当に負けたんだろうか。

私たち観客は、何をみているんだろうか。 


 私たちは、巧妙に構成されたショーを見ている。
誰かどう勝つか決まっている。 

タッグマッチは特に分かりやすくて、やられ役(ジョバー)がいる。
基本的にユニット対決が行われるが、目玉選手が、その日のメイン試合までの前座ともいえるタッグマッチですんなり負けてしまっては華も気勢も削がれる。
そのために、ジョバーがゴングを鳴らしその日の大会やユニットとしてのストーリーを次へ進めてくれる。

シングルマッチでは、選手同士の個々のストーリーがぶつかり合う。
ベルトが賭けられるような大会では、ベルトの歴史を汲んだ上で団体の興行として運営される。

その中で観客は多少のアドリブ性のある攻防を、それぞれに想いを乗せて見る。

またその中で選手は変化していき
技の威力や精度、受け身、読み、キャラクター性などが上達、確立されていくのだ。

確立された「強さ」同士の闘いは観客を楽しませる。

それが興行としてのプロレスの骨組みである。




プロレスはショーであり、シナリオのある興行でしかない。
強くなったからといって、勝敗が初めから決まっていたんじゃ
本気で相手を痛めることも 勝利を喜ぶことも意味が無いと思うかもしれない。

だけど、例え負けると決まっている試合でも
相手に大きなダメージを与えることができたら、相手はそれをさらに越した強さで勝たなくてはいけない。

強く強く、相手を打ち投げるほどに
相手はさらに強くなくてはいけない。

勝たなくてはいけない、と決まっているからだ。


指定の決め技で、明らかな力の差で
負けても勝っても面白くない。

だから選手たちは、双方の強さや技量をアピールするために技を受けたり
身体を仕上げて物理的に強くなることで、試合のレベルを引き上げ合う。

強くなるほど強い相手と組まされるようになり、よりエネルギッシュで洗練された試合ができる。 

強くなることで、選手自身も全力で闘うことができるし観客も迫力のある試合を見ることができるのだ。


 アニメでも漫画でも、作者がそうすると決めたものを私たちは受け取ることしかできない。
でも、一度膝を着いた登場人物が立ち上がる姿を私たちは熱く見届けることができる。
儚く散ったものを、受け止めることさえできる。

そうやって、その作品が好きだと言う。


今回の試合後に竹下は

胸張って 堂々と、
竹下幸之助のファンだって、DDTのファンだって、AEWのファンだって、そう言えるように
俺もっと強くなるから。

と言った。 
嬉しかった。
強いひとが、もっと強くなると言った。

プロレス界がどうなろうと、誰が勝とうと私の生活は変わらないし、私自身が強くなる訳でもない。
それでも、希望みたいにまぶしかった。

負けたから、次があるんだと思った。

勝っても負けても次があるのがプロレス

わたしたちは何を見ているのか。
プロレスとはなんなのか。


でもたぶん、みんな本当に勝ちたいんだと思う。
シナリオなんてなくて、ただ勝ったり負けたりしてるんだと思う。
だって、応援が届いたらレスラーは立ち上がって
次は絶対勝つ、って言うから
いつもそうやって言ってくれるからです。


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