新生LinkinParkを、どうしても受け入れられない
LinkinParkは、私のすべてだった。
私が小学生の頃、母が車でMD(時代を感じる)を流していたことがきっかけでリンキンを知った。
チェスターの独特なシャウトに魅了され、中学生の頃買ってもらったウォークマンに、初手でハイブリッドセオリー・メテオラ・ミニッツトゥミッドナイトを入れてもらって大喜びしていた。
当時TOKIOも大好きだったのだが、アーティストとして好きになったわけではないため、TOKIOのライブ前日でもリンキンを聴いている私に、伯母(SMAPの大ファン)に呆れられたのを今でも覚えている。
私が邦楽を全く聞かず洋楽ばかり聴いているのは、確実にリンキンの影響だ。
リンキンのジャンルはロックバンドとよく言われているが、私はそれに違和感を覚える。
私は音の種類等、詳しいカタカナはわからないが、ロックよりもメタル寄りの歌声ではないのだろうか?しかしチェスターの歌声だけでバンドジャンルを決めつけてしまうのもどうなんだろうか…
と長年一人でもんもんとしているのだが、毎回「これはリンキン独特の音だ、Linkin Parkというただひとつのジャンルなんだ」という結論に行き着く。
似たようなバンドなんてない。唯一無二のバンドなのだ。
リンキンは私のすべてだった。
彼らのライブに行って直接曲を聴くことが、私の人生の夢だった。
2017年、その夢がようやく叶うチャンスが来た。
日本でのライブ講演が知らされ、母と行くために2枚応募した。
当選通知を見た瞬間は今でも覚えている。これでようやく夢が叶う。
リンキンの生の曲を身体全体で聴けるんだ。
楽しみで楽しみで仕方がなかった。
2017年7月21日金曜。
仕事に向かおうとした瞬間、目覚ましテレビの速報が入った。
あれ?チェスター?
下には灰色の見出しで「リンキンパーク チェスターさん 自殺か」
は?
気づいたら、洗顔していた母のもとに走って、チェスターが!!!と叫んでいた。
泣き崩れてパニック状態だったが、仕事に遅刻してしまうという理性が働いて、親に最寄り駅まで送ってもらったものの、電車でも思考はぐっちゃぐちゃだし、私がリンキン好きと知っている会社の後輩に声をかけられ泣き崩れ、仕事にならないため午前で早退した。
帰ってからずっとリンキンの曲を聴いてずっと泣いていた。
これは日本でチェスターの訃報があった日にアップロードされたMVだ。
事前に予約投稿していたのだろう。
ここには、私と同じファンが大勢映っている。
こんなにも、あなたを愛する人たちがいるのに、なぜ自殺してしまったんだ。
ひとしきり泣いて泣いて声を上げて泣き続けたあと、湧き出てきた感情は、チェスターに対する怒りだった。
ワールドツアー真っ只中になに自殺なんてしてんだよ。チェスターがいなくなったら他のバンドメンバーはどうなる?世界中の大勢のファンが悲しむことなんて微塵も考えなかったのか?
なに勝手に自殺してんだよ。なんで。なんで。
身勝手なのは私だろう、神のようにチェスターを崇めていたが彼は私と同じ人間だし、絶対的な地位に立っている彼でも、彼だからこそ、押しつぶされる何かがあったのだろう。
押しつぶされる何か…?
もしかして我らファンの批判的な声が原因なのか?
2か月前にリリースされた新アルバム・ワンモアライトを、私は買っていなかった。今までのリンキンの曲とはあまりにもかけ離れていたからだ。
サウザンドサンズの時からなんとなく、路線が変わったように感じていたが、今回は買わなくていいやと母と話していた。
もしかして、私たちがチェスターを苦しめたのか?
気が狂いそうだった。
それでもチェスターへの怒りは、身勝手にも止められなかった。
あれから7年。
リンキンが、新ボーカルに女性を起用して再スタートを発表した。
言葉にできない感情で体中が埋め尽くされた。
あの頃のリンキンはもういないという絶望。なぜここにチェスターがいないのかという怒り。チェスターの穴を埋められるのかという不安。賛否の否の方が強いだろうに、それに耐えられるのかという心配。
これらをずっとループしていた。
確かに、男性だとどうしてもチェスターと比べられてしまうだろう。
女性のほうが、新生として受け入れられやすいかもしれない。
だが、Youtubeの配信でシャウトがかすれているのを見て「ほらやっぱり」となってしまい、見る気が失せてしまった。
7年経っても、チェスターの死を受け入れられない。
メンバーは力を合わせて前を向いているというのに。
ロブの脱退もショックだった。
あの頃のリンキンはもういないという現実を見せつけられたようだった。
それでもワールドツアーが発表された時、日本の地名を探した。
日本ではやらないのか、と思っていたら先日、2月に埼玉でライブをすると発表されたではないか。
どうしよう。
The Emptiness Machineは聴いていた。アレクサにリンキンの曲をリクエストした時に流れたからだ。
リンキンらしいサウンドで、気に入ってはいた。
新しく出るアルバムを全くチェックしていなかったが、きっと私が好きそうな曲が詰まっているんだろう。
それなら生で聴いてみたいと少し思った。
しかし、過去チェスターが歌った曲もきっと演奏するだろう。
チェスターの歌声・シャウトで脳が覚えている曲を、他の誰かが歌っているのをどうしても受け入れられない。
受け入れる勇気が出ない。
「リンキンのライブに行くまで死ねない」
だからチェスターが亡くなった時、私は一生死ねなくなってしまったなぁ、と思った。
リンキンのライブへ行きたい、という感情が残っているという理由だけで、ライブの応募を迷っている。
母に相談したら「チェスターじゃないなら行く意味あるの?」と言われてしまった。
確かにそうだ。私たちはチェスターがボーカルのリンキンに惚れたのだ。
同じ思いの人がいないか検索をかけたら、9割の人が「12年ぶりのライブ楽しみ!」と言っていた。
皆すごいな。もう新生リンキンを受け入れられているんだ。
会場まで距離があるので、有給を使用しなければいけないし、交通費・宿泊費もかかる。
ライブに行っても「なぜチェスターはいないのか?」とモヤモヤした感情を抑えられないだろう、わかりきっていることに大金をかけられない。
でも行かずに後悔しないと言い切れる自信もない。
行っても行かなくてもわだかまりは絶対に残る。詰んでる。
この原因となったチェスターを、私はこの先ずっと恨み続けるのだろうか。