【SS】ネコクインテット②|#毎週ショートショートnote
「猫の鳴き声がしないか?」
植物学者の木下は、研究室の窓の下辺りからニャーニャーと鳴き声が聞こえることに気づいた。
「本当ですね。ちょっと見てきます、博士」
助手の井上が確かめると、子猫が1匹ウロウロしていた。首輪が付いているので、どこかの飼い猫だろう。とても小さいから、隙間から逃げてきたのかもしれない。
「首輪に名前とか電話番号とかないのか?」
「書いてあります!連絡してみますね、博士」
やがて飼い主が引き取りにやって来た。
「見つけていただき、本当にありがとうございます。五つ子の猫で、いつも5匹で楽しく賑やかに歌でも歌うように鳴いていたんです。でも、1匹でも欠けると寂しいものです。」
飼い主は、何度もお辞儀をして帰って行った。
「ほんの一瞬いただけなのに、なんだか寂しくなったな。」
「じゃあ、博士、これでどうです?」
井上は、庭から芽吹いたばかりのネコヤナギひと枝を、コップに差した。
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猫が5匹出てくれば良いか…みたいな話になって、ちょっと残念。でもネコヤナギで、博士と助手の世界が少しは描けたかも… 花穂は五つで!