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BUNGEI-BU8|#シロクマ文芸部

「赤い傘っていう話を知ってるか?」

「いや、知らない。童話かなんか?」

能戸高校図書準備室の片隅で、いつものように文芸同好会の自称部長と会長がタワーリング(積読部の活動のひとつ)しながら語り合っていた。

「全然童話じゃない。むしろ怪談…かな」

「ホラー系?ネットかなんかで読んだの?」

「元はそうなのかな。今校内で話題になっていて、お前は聞いたことない?窓の外みたら赤い傘をさした女の子がいて…な話し」

「そう言えば昨日だか一昨日あたりに女子が、赤い傘さした女の子がどうのこうのという話をして、怖い〜とかキャーキャー騒いでたなぁ」

「それだよ!それ、会誌に書かないか?」

「噂話だろ?全然文芸っぽくないじゃないか。まぁ、創作を織り交ぜて膨らませるにしても、俺はなんか気が進まないなぁ…」

その時、本棚の陰から一人の男子が「ちょっと待った!」と、話に飛び込んできた。余りにもびっくりして二人のタワーリングの山が崩れてしまったほどだ。

「驚かすなよ。で、何?誰?」

「なんだよ。同じ学年だし、名乗らなくてもいいよな?実はさっきの赤い傘の話だけど、アレって僕の創作した話なんだよ。中学の頃に夏休みの自由研究みたいなやつで戯れに創った話だったんだけど、なんか今頃になって僕の話を読んだ誰かがネットに投稿したらしくてさ、話題になってるんだよ。証拠の中学時代の原稿用紙も持っているよ。で、原作者としては許せないわけ!無断で勝手に拡散されたことがさ。だから…」

「わかった!この文芸同好会、君の力になりたいと思うよ。だから是非、我が文芸同好会に入って、君の思いの丈を書き綴っていただきたい!」

「ありがとう、入るよ!そして書かせてもらうよ」

文芸同好会に1名部員、いや会員が増えた。
一年0名、二年男子1名、三年男子3名、女子1名…全部で5名になった。念願の『文芸部』いよいよ誕生か?

めでたく誕生となった。顧問の先生も付き『文芸部』という看板もできた。もちろんいつかの夢のように、看板の下で写真も撮った。勢い余って部の歌まで作ってしまった。歌詞を考えたのは詩が得意の二年部員の男子、曲は女子部員が軽音の友人に頼んでできた。

そして記念すべき部誌第一号には『赤い傘の真実』というドキュメンタリーが掲載され、校内外問わず大きな反響を呼んだ。

初代部長は… 当然、赤い傘の彼となった。


[約1000字]

やっと部に昇格させました。受験の前にちょっとでも夢を叶えさせたかったから…
で、肝心の『赤い傘』の話は??? まぁ、そのうちに😅(本当?)

#シロクマ文芸部
#赤い傘


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