【SS】消しゴム顔②|#毎週ショートショートnote
「あ、消しゴムが… 拾ってくれ、井上。」
「どの辺ですか?博士。」
「机の裏の方だ。」
今日も植物学者の木下と助手井上は、研究室でレポートをまとめている。パソコンで原稿作成するのがほとんどだが、その前の下書きは昔ながらの紙と鉛筆だ。消しゴムの出番も多い。
「ありましたよ、博士〜! 痛ッ!」
井上は消しゴムを拾い机の下から出る時に、頭をぶつけた。更に、その衝撃で机の上の消しカスが、パラパラと井上の顔の上に降ってきた。
「うわ〜っ!」
「ウワッハッハ!!すごい顔だな。カスまみれだ。消しゴムのカス顔だな。ワッハッハ…」
「もう…人のことを、ヒルガオ科サツマイモ属の朝顔新種みたいな言い方しないでください、博士!」
「すまん。しかし…アハハハ…」
笑いのツボに嵌ってしまったようだ。こんな時にどうすれば良いか、助手の井上はわかっている。
「ちょどしてろ!」
久々に聞く故郷(山形)の言葉に、博士はハッとするのだった。
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あんまり消しゴム顔っぽくないですが、ご勘弁を…
※ 加筆 2022.6.11
「ちょどしてろ」は「おとなしくして」という意味です。「いつまでも笑わないでください、博士!」といったところでしょうか。