【SS】沈む寺|#毎週ショートショートnote
「お前の寺は、檀家がもうほとんどいないじゃないか。儂のところで使ってやってもよいぞ。まぁ、一生見習いだけどな」
寒村の山奥で和尚さまと二人で寺を守っている沈念に、所用で訪れた隣村の寺の和尚さまが声をかけた。
「私は、この村で生まれこの寺に育てていただきました。ご恩返しのため離れることはできません」
「親切心もわからんとは哀れなものだ」
鼻先でフンッと笑い、隣村へと帰っていった。
「沈念よ、お前はまだ若い。やりたいことがあるなら…」
「和尚さま。私は昔のように笑顔がたくさんあふれる村に戻したいのです。戦でたくさんの命が散り… この寺に眠る方々に、安心して眠っていただけるためにも、私は祈り続けたいのです」
ある日、そんな村に一人の若者が訪れた。
「沈念、戦から帰ったぞ!もうすぐ同士や新たな仲間たちもこの村に戻る。久々に村祭りの打合せでもしよう」
長かった戦も終わったようだ。久々の多くの接待客来訪に寺の床も沈みそうだ。
[410字]
一休さんみたいな小坊主を思い浮かべながら書きました。
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