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海砂糖|#シロクマ文芸部

海砂糖。
それは海の世界で幸せを呼ぶ魔法のお菓子。
星のようにキラキラ輝いて
見ているだけでも幸せな気持ちになる。
一粒、口に含んでみれば
ほろりととろけるやわらかな甘みに
 アマイネ
思わず笑顔もこぼれる。

今宵は人魚の国の結婚式。
満天の星空の下で、恋人たちは永遠の愛を誓う。
愛の祈りをまとった星が流れ星となり
海に落ちて細かな星屑になり… 
小さな小さな星の形をしたお菓子になる。
それが海砂糖。

海砂糖が生まれる時
小さな灯りがそこかしこ灯ったように輝く。
海の世界の住民たちはそっと口を開け
降り注ぐ小さな光のかけらを待つ。
やがて一粒、口の中に舞い降りてきて
静かにとろける瞬間に幸せを感じる。
 シアワセダネ
ほのかな甘味に
誰かの幸せを祈る気持ちも感じながら…

食べられなかった海砂糖は
海の深淵まで落ちていく。
でも、くじらたちがたずねてくる。
大きな口にたくさんほおばり
幸せをかみしめる。
 ミンナ、シアワセニナレ
時々潮を吹いて、海砂糖も空に巻き上げる。
キラキラと輝きながら空へ帰るものもある。

海砂糖は陸のものには届かない。
たとえ星空の下
くじらの潮吹きのそばにいたとしても
キラキラした形だけが届いて
口元に届くことはない。
お魚や人魚の声が聞こえないものには
ただの潮にしか思えないのだから…


[約500字]
お魚の言葉って、カタカナな感じがする…

#シロクマ文芸部
#海砂糖

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