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kokoankokoan
【SS】伝説の安心感②|#毎週ショートショートnote
今度の植物学学会で、木下教授の助手の井上も少ししゃべることになった。初めての体験なので、緊張が隠せない。
「いつも通りでいいんだぞ、井上」
「頭ではわかっているのですが…」
「ハハハ」
「笑わないでください!博士」
井上は一生懸命、会場に来ている人たちは、ナス科ナス属のジャガイモだと思い込もうとするのだが、どうしても高名な教授たちの顔が浮かんでしまう。
「博士は緊張した時、どうされているのか教えてください」
「いや〜、緊張はしたこと無いからわからんなぁ」
いつでもマイペースな博士に愚かな質問をしてしまった…と、更に落ち込む。
「あぁ、そう言えば、コレがあると安心するっていうものはあるぞ。貸してやろうか?」
「是非!」
それは、普通の折りたたみ傘だった。その傘を持つと、不思議といつでも晴れるので、幸運を招く伝説の武器と思っているとのこと。
傘を渡され、自分の安心感の源は博士だと痛感した。
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木下博士が持っているような傘、あったのです。亡くなった祖母が持っていたんですけれど。茶色地に黄色い小花模様の折り畳み傘で、天気予報に不安の時に持っていたらしいのですが、その傘を持つと雨に降られなかったそうな。だったら毎回その傘を持っていれば、雨に降られなくて良いんじゃないかと言うと「この傘、けっこう重いのよ。降らないのは嬉しいけど、カバンが重くなるから持ちたくないのよね」とのことでした。