【SS】オノマトペピアノ②|#毎週ショートショートnote
植物学者の木下は、実はピアノが弾ける。中学3年まで習っていたそうだ。中学の音楽会では、2回ほどピアニストをしたこともあるらしい。
今日は、顕微鏡をのぞきながら何やら演奏している。タタタタ…タンタタ…指先で机を軽く叩きながら、机の上を指先が右へ左へ移動する。時々トントンと跳ねたりもする。博士はノリノリであった。
「博士、何をしているのですか?」
「オッと失礼。思わず顕微鏡の向こう側の世界を、即興してみたくなったようだな」
「どんな世界だったのですか?」
助手の井上も同じものを観ているはずなのだが、音楽になぞらえたくなる気持ちがわからなかった。
「ほら、このブタクサの花粉は、トゲトゲした先がキラキラ光って歌っているような感じがするだろう?井上」
「はぁ…」
「くるみ割り人形の『金平糖の精の踊り』が浮かんで、思わず机をピアノ代わりにタンタカと弾いてみたのさ」
博士の頭の中はお花畑…ではないようだ。
[410字]
博士にピアノが弾けるという設定までつけてしまった… 植物も言葉を解するみたいな話を書こうと思っていたはずなのに😅