【SS】ビール傘|#毎週ショートショートnote
山道を歩いていると、急に雨が降り出してきた。男は、途中で拾った杖替わりのビニール傘を差した。骨が少し曲がっていたが、雨をしのぐには支障なかった。
池の脇を通り抜けようとした時、男はぬかるみに足を取られて転びそうになり、傘を手放してしまった。傘は池の方へ転がり、やがて沈んだ。
「あ〜、雨合羽を出さなきゃな…」
男が池に背を向けてリュックを下ろした時、声が聞こえた。
「あなたが落としたのは、この金の傘ですか?それとも銀の傘ですか?」
「は?ボロい普通のビニール傘です。全然違いますし、あなたは誰ですか?」
「私は池の精。正直者のあなたには、金の傘を授けよう。」
男に金の傘を渡すと池の精は消えた。
「今のは何だったんだ?でも新しい傘をもらえて助かった。」
金の傘を差すと、上の方で泡が立つ音がして、傘の雫はビールの香りがする。舐めてみると、ビールの味がした。
「俺、アルコール駄目なんだよな。」
[407字] 博士出番なし
銀の傘を選んだら、どうだったのでしょうね。あと、金の傘でも、ジンジャエールとかに変えてもらうとか…
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