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【似非エッセイ】校庭の片隅で|#シロクマ文芸部(約800字)
木の実と葉を集めてみた。
「やっぱり全然ちがうよ」
「遠目で見ればサクランボみたいなのにね」
春先には、雪のように真っ白な花びら(実際は総苞片と呼ばれる花の付け根の葉)4枚の花を咲かせ、秋になると夕陽のように真っ赤に染まるサクランボに似た実を実らせる木が小学校の校庭の片隅にあった。そして、冬になるとサクランボはその姿のまま茶色く枯れて… よく見るとトゲトゲのたくさんついた鉄球のような痛い姿になる。
今なら『ヤマボウシ』という木だとわかるのだが、あの頃は何という木なのか知らなかった。調べようともしなかった。
「偽サクランボの木だね」
「嘘つきのサクランボだよね」
勝手にサクランボがなっていると思い込み、違うからと偽物とか嘘つき呼ばわりしていた私と友だち。
「この木は、サクランボなんてかわいい呼び方じゃなくてザクランボが良いんじゃない?」
「ザクランボ… ザクロンボでも良いんじゃない?」
「そっちの方がいいかも!ザクロンボ!決定」
私と友だちは、そんなザクロンボの木の下で待合せをして昨日見たテレビの感想を語り合ったり、通信簿の点の打ち明け話したり、気になる男子の話をしたりしていた。
「隣のクラスのKくんってカッコよくない?」
「私は…わかんないな。なんで隣のクラスの男子を知ってるの?」
「だってうちのクラスにカッコいい子がいないから」
「そうかぁ…」
私はだいたいいつも聞き役で、この日はKくんという男子がいることを初めて知った。顔を見たら…確かに友だちの好きそうなタイプだと思った。私は顔よりも名前の方に興味を感じた。なんとなく貴族っぽい雰囲気の漂う響きだったから。で、名前負けしていない顔ではあるかな…と、友だちの趣味の良さ?を認めたが、やっぱり自分の趣味とは合わないなとも思った。
ザクロンボの木はいつも黙って、そんな私たちを見守ってくれていた。
いつも素敵なお題をありがとうございます。
今回は小学校の思い出語りになりました。