【SS】逢いたい菜|#毎週ショートショートnote
年が明けてまた植物学会があり、ローディー教授が来日した。今度もバラの花束を持って会いにきた。
「Ms.Tachikata, my heart is yours forever. So …」
「んねず。おめとはおづぎあいさね」(山形弁)
何度も断っている。が、今回はどこかで気の合う女性と知り合えたようだ。学会が終わったらその女性と帰国した。もう現れないで欲しい。
ようやく日常が戻り、隔週で通う警察でのボランティアに向かう。入り口脇の花壇にはパンジー等が咲いていた。近所の研究所で働く木下教授や助手の井上が植えて育てている。
「バラよりも、野の花みたいなのが好きなのよね…」
しゃがんで花壇の花を眺めながら独りごちていると
「立方さん。菜の花がそろそろ咲きますよ」
背後から井上の声がした。ビックリして転びぶつかる。
「あ、痛たた… ごめんなさい。えっ、どこに菜の花が?」
「ほら、そこの… もうすぐ咲くのに会えますよ」
立方さんは『逢いたいな』と思った人に会え、幸せな気持ちで「あら本当…」と答えた。井上も「楽しみですね」とにっこりした。
[512字] ルビ編集分含むけどオーバーしすぎ😭
ローディー教授退場、の巻。
井上も立方さんに普通に接することができるようになったようです。