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Photo by
keitafukui
【SS】てるてる坊主のラブレターと三日坊主のクレーター|#毎週ショートショートnote(裏お題含む)
てるてる坊主は恋をした。隣の軒先で揺れている風鈴に。
風鈴の彼女は、てるてる坊主の僕を見かけたらチリン…と笑いかけてくれた。その音色に僕は一目、いや一耳惚れした。
僕らの叶えるべき願いは"明日を晴れにすること"なのだが、風鈴の彼女を見てからはそんなことどうでも良くなってしまった。
てるてる坊主の祈りは月に届ける。お月様も「はい、わかりました」と毎回叶えてくれるわけではない。天には天の事情もある。
それなのに僕は「隣の風鈴さんに僕の気持ちを届けてください」と異例な祈りを届けた。お月様は驚いたが…考えておきますと答えた。これ以上できることは何も無い。時々聞こえる彼女の声に一晩中胸をこがすばかりだった。
幸い翌日は晴れた。僕の寿命も伸びて、そのまま吊るされていた。
ある日風鈴の短冊が文字の書かれた新しいものに変わった。音色も恥ずかしげに小さくチリリリン… と鳴っていた。
お月様が、僕の代わりに恋文を書いて届けてくれたようだ。クレーターに隠れ文章を考え、三日坊主になる前に仕上げた力作らしい。
チリリリン… 風鈴の音色と一緒に僕は風に揺れていた。
[約480字] ルビ編集分含む
二つのお題を混ぜて400字程度にまとめるのは、難しいとしみじみ思います。本当に、何をやっているんだろう、私って…