アイツの願い|#シロクマ文芸部(約800字)
手紙には『うちゅうせいふく』と書かれていた。
「なんだよ、これ。七夕の短冊に書く願い事を書いてくれって言ったのに… 」
「だから願い事、できたら良いな、と思うことを書いたんだけど」
電話の向こう側で、アイツはしれっと答えていた。熱を出して欠席し、クラスの七夕飾り作りに参加できないアイツと連絡をとったんだけど、とんでもない願い事にビックリしてしまった。
「宇宙征服って、そんなことをいつも考えていたのか?」
「いつもというか、最近?できたら良いかなって」
最近の話か… 熱を出しておかしくなったのかな。でも、虫だって退治出来なさそうなアイツが世界征服以上のことを願うなんて、やっぱりおかしい。
「なんで宇宙征服したいの?」
「えっ?宇宙征服なんてしたくないよ!?」
「え?じゃあ何?『うちゅうせいふく』って?」
「あ!宇宙でも着れる制服っていうか… 誰が着ても、男子でも女子でも、地球人じゃなくても着たら「素敵だな」と思える制服があったらいいなって。熱があって漢字が思い出せなくて、いや今も『制服』の漢字がパッと出てこなくて、だから全部平仮名で書いたんだけど… 」
「わかった!戦争みたいな征服じゃなくて、学校で着る制服、だね。漢字に直して僕が代わりに書いておくよ。早く熱が下がるといいな。じゃあね、お大事に」
そうなんだ。アイツはそういう奴。来年中学に進学する僕たちだけど、中学の制服になんとなく違和感を感じているらしいんだ。男子はズボン、女子はスカート、みたいなきまりに息苦しさがあるらしい。好きな服を着て通学… というわけでもないらしい。そこは公私混同したくないような。
あぁ、ユニバーサルデザインな制服… が、英語と日本語がごちゃ混ぜになって『宇宙制服』になったんだな。帰国子女のアイツらしいや。
お題『手紙には』を見て、TOP画像を『手紙』で検索して選んでいる時に今の画像が目に飛び込んできて… 「うちゅうせいふく」と書かれた手紙の物語を考えてみました。