【SS】フシギドライバー②|#毎週ショートショートnote
「この間、懐かしい人に会ったんだよ、井上!」
植物学者の木下は、助手の井上に興奮して話しかけている。よっぽど嬉しかったに違いない。
「どなたにお会いしたんですか?僕も知っている人でしょうか、博士。」
「あぁ、お前も覚えているだろう。銅像の真似をするコンテストの時、二宮金次郎をやっていた人だよ。名前はなんだったっけな?」
「漫画を読む二宮金次郎をやるなんて変わった方だなと思った…ちょっと不思議というか… あ、不思議…伏木さんですね。思い出しました。」
「そうだ、そうだ。伏木くん!彼がな、今はタクシーの運転手しているんだよ。この前、学会の帰りに拾ったタクシーの運転手がそうだったんだ。」
タクシーに乗ったら「木下博士ですか?」と声をかけられビックリし、「どちら様でしょうか?」と尋ねると、漫画を読むポーズを見せられて思い出したようだ。
「あの頃は漫画家を目指していたのにな。不思議だな、伏木くんは。」
[410字]
研究費捻出のために参加したイベントで知り合った人と、思わぬところでの再会。ちょっとした同窓会気分だったのではないでしょうか。
漫画家から転身してのタクシー運転手。もしかしたら転身ではなく兼業かもしれませんが、どちらの仕事も深夜まで起きていそうで、体調管理に気をつけてもらいたいと思います。もしかして、運転手しながらネタを探しているのかな…