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【SS?】北風と南風|#シロクマ文芸部(約700字)

北風といつか競ってみたいと南風は思っていた。

南風は「北風って吹雪というすごい風を起こすんだよ」という言葉を聞き、自分の台風とどちらがすごいのか知りたかった。

北風もそんな南風の挑戦を聞いて心が少し動いた。しかし、南風も太陽と同じ暖かさや暑さを持っている。かつて太陽と競って負けたことを思い出した。マントを飛ばすのは無しにしよう…それだけは固く心に誓っていた。

神様が決めた通りに、自分たちの風の季節は守っている。それを乱さないようにしながら、どうやって北風と南風、言いかえれば吹雪と台風とどちらがすごいのか…を決めるにはどうしたら良いだろう。

「何かを吹き飛ばす…のは、後から吹いた方が有利だと思うしな」
「人間というのが考えた風速で測るのはどうだろう」
「ほんの一瞬でもいいのか、ずっと強さが継続しているのがいいのか…」

何をもって『すごさ』を計るのかがわからなくなった。そして、地上のものたちに甚大な影響も与えたくはなかった。ただ「吹雪と台風とどっちの方がすごいか」を知りたいだけだったから。

「5分間力を出して「すごい」とか「怖い」とか言われた数の多い方が勝ちにするのはどうだ?」
「それがいい!」

北風は南半球の極地付近、南風は北半球の赤道付近で力を発揮した。

人間界では瞬く間に「観測史上最大級の…」という形容がついた吹雪と台風のニュースが流れて、どちらも同じくらいの「すごい」「怖い」「早く収まれ」のつぶやきを生み出した。

「なんか余り変わらなかったな…」
「ニュース見たけれど、正直言ってあんな吹雪に遭ったら俺も凍えてしまうと思ったよ」
「俺もニュース見て、吹き飛ばされると思ったよ」
「お前ってすごいな」
「いや、お前こそ」

北風と南風は張り合うのをやめた。

今日は北風もおだやかな良い日だ。

先週は参加できませんでした。
今週も危うい感じの… 変なお話となりました😭
小牧部長、申し訳ございません。

#シロクマ文芸部
#北風と

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