【SS】男子宝石|#毎週ショートショートnote
この世には、憂いというものは常にある。
今日もまた、人目を忍んで参拝に来る女性の姿があった。
参道脇で手水後、賽銭を入れて丁寧に二礼し、柏手を二つ… なにやら深く願いごとをして、最後に一礼をした。
お参りが済むと、女性は神社の裏手にまわった。
小さな鎮守の森の傍に、岩をすり鉢状に削った古い小さな手水があり、その水底にはキラキラと輝くものがいくつも沈んでいる。
「あぁ、これがいいわ…」
女性はエメラルドに輝くそれをそっとハンカチにくるみ、誰にも見られないうちにと帰路を急いだ。
女性が持ち帰ったのは、ビー玉だった。
いつの頃からか、その神社は子宝に恵まれると有名になり、男の子が欲しいならビー玉、女の子ならおはじき玉を持ち帰ると願いが叶うとされた。
願いが叶ったら、倍の数のビー玉又はおはじき玉を返納する。
今日も古い手水の中で、たくさんのキラキラが願いを叶えようと輝き揺らめいていた。
[402字] 博士出番無し
男子・宝石 ではなくて、男・子宝石 ですね。
男女同権とか言われていますが、未だに「跡継ぎに男子が欲しい」とか言われますよね。そういうことで心を痛める女性は多いと思います。
ちょっと複雑な思いも込めて…書いてみました。
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