【SS】読書石けん②|#毎週ショートショートnote
植物学者の木下は、助手の井上と本を片手に何やら実験中だ。
「オリーブの花言葉は何だろう。井上。」
「平和や知恵ですよ。博士。」
オリーブオイルをガラスのボールに注ぎ、次の作業は何かと改めて本を読む。
「ラベンダーやローズマリーの花言葉は?」
「期待と沈黙、そして、思い出と追憶ですね。」
乾燥させたラベンダーとローズマリーを入れたボールに熱湯を注ぎ蓋をし冷まして濾したものに、今度は苛性ソーダを加える。また本を読み、作業確認した。
「苛性ソーダ液を少しずつオリーブオイルに加えて…」
「次は、マヨネーズ状になるまで攪拌するんです。博士。」
今度は花言葉の辞典を片手に、新種のナズナも加え攪拌を続けた。
「これを型に入れ一晩寝かせ、1か月乾燥させ、やっと石けんができるのか!」
「博士。新種の花言葉、何か思いつきましたか?」
「決めたよ。『発見の喜び』だ。」
二人の思い出の数々が詰まった石けんが、出来上がる。
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木下博士と井上助手の、ハーブ石けん作りのお話でした。