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ハンスとマリーと…|#シロクマ文芸部(約1000字)

「星が降るように輝くこんな夜は、思い出すんだ…」

「私の鏡を拾ってくれた日のことね」

ハンスはカーテンを少し開け、夜空を見上げた。今夜はとても星がきれいだ。大好きな北斗七星の柄杓から、星がこぼれてくる…そんな気もした。

「あぁ、マリー。そうだよ。僕たちが出会うきっかけになった、あの日のことさ」

「おばあさまからもらった大切な鏡をどこかに落としてしまって、悲しみの底にいた私を、あなたは救ってくれたのよ」

「本当に不思議な夜だったな」

ハンスは隣に寄り添うマリーの肩を抱き、そっと髪の毛にキスをした。マリーは、そんなハンスにやわらかな微笑みを返し、二人で夜空を見上げるのだった。


「ねぇ、本当に狼と話をしたの?」

「本当だよ。『僕を食べに来たの?』と聞いたら『今は腹がいっぱいだから食わん。お前は何してるんだ』と答えたんだ」

「お腹空いていなくて良かったわ。でも、お腹が空いていたとしても、優しそうな狼だからあなたのこと食べなかったかもしれないわね」

「そうだね。僕が星を眺めるのを不思議そうに見て、何故か一緒に並んで見ていたんだ」

「その頃私は、枕を涙でぬらしながら眠っていたんだわ」

「でも、君が鏡を落としたから、こうして出会えたんだし…」

「不思議だわ」

ハンスはまたマリーにそっと、今度はおでこにキスをした。

「星が流れるのを見て、狼が追いかけて行って『星を拾ってきたぞ』と言って…」

「私が無くしたと思った鏡を持ってきたのよね」

今度はマリーがハンスの頬に軽くキスをした。

「鏡に、名前が書いてあって良かったよ。落とし物を届けに行ったら君に出会ったんだ。花屋さんの可愛い女の子が君で… 一目惚れっていう言葉の意味が初めてわかったよ」

「私も… 自分だけの騎士ナイトってこの人かも、って感じたのは初めてだったわ」

「ありがとう、マリー」

「私もよ、ハンス。そして狼…にも」

「そうだね。狼に出会わなかったら、君とも出会えなかったかもしれない」

「狼にも、すてきな彼女ができたかしら」

「幸せになっているといいね」


二人のそばのベッドから、小さなくしゃみの声がした。

「あ、カーテン開けていたから寒かったかしら」

「僕たちも早く眠ろう。ルイスと一緒に」

二人はカーテンを閉め、幼い息子ルイスの眠るベッドにそっともぐり込んだ。

「良い夢を…」

夜空には、こぼれるほどたくさんの星が輝いている。


なんとなく、以前書いた作品の続きが浮かびました。  ↓

#シロクマ文芸部
#星が降る

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