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せっかく分別したプラごみの約7割は燃やされていることについて

処分する側の意志が表れた「ごみの呼び名」


「燃やすごみ」を「燃やすしかないごみ」に、「埋立てごみ」は、「埋立てるしかないごみ」に――。京都府亀岡市が4月からごみの呼び方を変えるというニュースが流れました。

最近は「燃えるごみ」「燃えないごみ」ではなくて、「燃やすごみ」と「燃やさないごみ」と呼ぶ自治体は増えていましたが、「燃やすしかない…」という表現は新しいですよね。

他にもごみの分別には、プラスチックごみ、紙や金属、ビン・缶とPETボトルなどの資源ごみ…などがあって、皆さんも自治体の指示に従ってそれぞれ決まった収集日に出していると思います。

考えてみれば、プラスチックも紙もPETボトルも燃えるけれど、資源物として燃やさずにリサイクルするために分別しているのであって、「燃える」でなく「燃やす」という表現には処分する側の意志が表れています。そして、亀岡市の「燃やすしかない…」という呼び方には、ごみ処分に対するより強い意志を感じます。

「マテリアルリサイクル」はたった21%


写真はイメージです

ところで、プラごみについては、せっかく分別して収集日に出しても、ほとんどが燃やされているってご存じですか? リサイクルしやすいように、コンビニのお弁当容器などもさっと水で洗ってから出しているという方もいると思いますが、実は約70%は燃やされています。

国内で2021年に排出された廃プラスチックは824万トンですが、このうち62%は「サーマルリサイクル」といって、燃やした熱を発電や温水のかたちで利用しています。水分の多い生ごみを燃やすための“燃料”代わりに使うこともあります。あと、8%は単純に焼却されているので、合わせてプラごみの70%は燃やされているのです。ちなみにサーマルリサイクルは、海外ではサーマルリカバリー(熱回収)と呼ばれていて、そもそもリサイクルとはみなされていません。

分別されたプラスチックの7割は燃やされている

一方、プラスチックから再びプラスチックを作ることを「マテリアルリサイクル」と言いますが、すべてのプラごみのうちの21%です。その他、プラを化学的に処理して、他の化学物質に換えるケミカルリサイクルという手法もあって、それが3%程度です。

しかも824万トンのうちマテリアルリサイクルに回された177万トンのうち、131万トンは、破砕・洗浄してプラ屑として、あるいはペレット(粒)、インゴット(塊)、フレーク(薄片)など再生製品のかたちに加工されて海外に輸出されています。どちらも海外でリサイクル利用されてはいますが、純粋に国内でマテリアルリサイクルされているのはほんの一部ということになります。

プラ新法はどこが画期的なのか


とはいえ日本でも最近は、プラスチックのリサイクルの領域ではいろいろと前向きな動きが進んでいます。例えば、2020年7月にレジ袋が有料化されました。あれは「容器包装リサイクル法(容リ法)」の改正によるもので、レジ袋の過剰な使用を抑制して、マイバッグの携行の啓発など消費者のライフスタイルの変革を促すという狙いがありました。実際、マイバッグを持ち歩く人は随分増えましたよね。

そしてさらに2022年4月1日には「プラスチック資源循環促進法(プラ新法)」という法律が施行されました。これは正式名称を「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」といって、 プラスチックという“素材”を対象にした法律です。

日本では1991年4月に制定された「資源有効利用促進法」によって、リデュース、リユース、リサイクルの3Rと呼ばれる資源の再生利用が進められてきましたが、これまでの規制は「個別物品」に対するものが中心でした。

個別物品というのは、たとえば前述の「容器包装リサイクル法」。これはレジ袋だけでなく、びんやペットボトル、紙製やプラスチック製の容器包装などが対象です。他にはエアコンや冷蔵庫などの大型家電を対象にした「家電リサイクル法」とそれ以外の「小型家電リサイクル法」、食品廃棄物は「食品リサイクル法」、木材やコンクリートなどの「建設リサイクル法」、自動車は「自動車リサイクル法」があります。

つまり、これまでは個別物品ごとに縦割だったのが、今回はプラスチックという素材で横断的に切ったということです。プラスチックが1%でも含まれていれば「プラスチック使用製品」として、リサイクルの対象になりました。

そしてもうひとつ、これまでの法律と違うのは、レジ袋が有料化を義務化されたように、これまでは「規制的」な位置づけだったところ、今回のプラ新法は名前に「促進」と入っているように、「なるべくやってください」とか「やれるように仕組みを整えました」といった内容になっている点です。

コンビニのカトラリーなど「ワンウェイプラスチック」と呼ばれる一度だけ使用して廃棄してしまうプラスチック製品に対しては、今回は有料化ではなく「使用の合理化」が努力義務となりました。合理化の方法は事業者それぞれに任されていて、「プラスチックの代替となる素材を使う」のでもいいし、お客さんに「必要ですか」と聞くのでもいい。「回収とリユース・リサイクルの仕組みを作ります」でもOKです。

曖昧な印象を受けるかもしれませんが、従来の製品ごとのリサイクル法は、それに関わる事業者に回収やリサイクルの仕組みづくりの義務が課されていたのに対して、プラ新法はプラスチックという「素材」が対象だから、プラスチックを使用している企業や団体、すべてが関係するという点で画期的なのです。

たとえば、これまでごみの回収は廃棄物処理業の「業の許可」が必要でしたが、メーカーや小売店、サービス業者が使用済プラスチック使用製品を自主的に回収したいといえば、大臣が認定すればやってよいことになりました。

自治体に対しても、より柔軟な資源循環の仕組みづくりを行うよう促しています。例えば、いま行われている容器包装のプラごみの分別回収ルートに、容器包装以外の使用済製品プラスチックも加えて、再商品化を進めていくとか、近隣の市区町村との連携や、市区町村と再商品事業者が連携して資源循環の仕組みを作るといったことも、これまでに比べてかなりやりやすくなったんです。

TBM横須賀工場が目指す資源循環の輪


TBM横須賀工場

TBMは2022年11月に神奈川県横須賀市で、リサイクル工場としては年間処理能力4万トンという国内最大級の規模を有する工場の運営を開始しました。

横須賀工場は、回収してきた使用済みのLIMEXとプラスチックを近赤外線によって自動選別する技術を持っていて、さらにプラスチックについてはポリプロピレンやポリエチレンといった素材別にも検知・選別することができます。こうして、LIMEXはLIMEXに、プラスチックも素材ごとにペレット化して再生利用することができる最新鋭のリサイクル工場なのです。

LIMEXとプラスチックの自動選別ライン
選別されたLIMEXとプラスチック資源

工場のある横須賀市とはこれまでも、同市が発行する環境啓発フリーペーパーや商品券にLIMEXを採用し、市内各所に回収BOXを設置して回収するなど、さまざまなかたちで連携を進めてきました。

そして2022年12月には横須賀市と共に、プラスチックの再商品化計画を策定、環境大臣および経済産業大臣認定を取得しました。事前に容器包装プラスチックの再生事業者としての登録も完了しています。

横須賀市内から排出されるプラスチックごみについて、これまで分別回収の対象になっていた容器包装プラスチックに加え、従来は燃やすごみとして収集され焼却処理されていた製品プラスチックごみを一括回収して、横須賀工場にて再生ペレットにマテリアルリサイクルします。

再生ペレット

さらに、横須賀工場と同様の設備を有したモデル工場を国内に複数箇所、さらには海外にも展開していく計画です。プラスチックごみの分別が進んでいない東南アジアなどの国々に、各国内で完結する資源循環のプラットフォームを、リサイクル工場ごと輸出していくことを考えています。

こうした資源循環の輪を作ることで、新しい市場や産業も生まれます。大量生産・大量消費とは全く別の、サーキュラーエコノミー(循環型経済)という、環境(エコロジー)と経済(エコノミー)を両立させた新しい社会を作っていく。それがTBMの目指すところです。