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SADSの忘却の空という曲
現在の時間に放送される最後のミュージックステーションを見ていて、私が10年代の曲が少しも好きになれない事の理由を真剣に考えてみようと思っていた時、無性にSADSの忘却の空という曲が頭の中で流れだし、ずっとリピートしている。
本当は10年代音楽に関して色々書こうとしていた。しかし、かなり痛烈な内容にしかなりそうにない事と、何回かに分けなければ書ききれないと思い、興味が沸いたSADSの曲について書こうと思った次第だ。何より痛烈というだけあり、長々とマイナスの内容を連ねることになってしまう。
今から19年前の曲で、今月に入ってからセリフカバーをされた曲でもあるこの忘却の空という曲。この曲は学生の頃には当然知っていたものの、もうその頃には鬼束ちひろさんや、あの頃活躍されていた女性ソロボーカルの楽曲の方に興味がシフトしていた時期なので、黒夢やSADSの事はチャートに入っていた曲ぐらいしか知らない。
この楽曲を聴いて思う事は、10年代音楽に対する不満(不満と言い切ってしまった)の答えの一つがあるように感じた。
正直リピートするぐら既に嵌っているものの、まだ全然この楽曲を語れる程聴きこんでいない。しかし、音数がシンプルなのに、揺らがぬかっこよさを感じている。これが19年前なのだから衝撃だ。サビが聞き取れないとネタにされがちな楽曲だが、しっかり歌を聴けばこのカッコよさは最近の曲には見られない、我が道な歌だ。
思い返せば鬼束ちひろさんといい、Charaさんといい、女性ソロボーカリストだけではなく、ボーカリストがもう我が道な歌を唄っている。もっとわかりやすい言葉を使えばオリジナリティだ。オーディション番組を見てみると一発でわかる。最近のオーディション番組は彼ら彼女らのように飛びぬけた個性が全くない。全く。言っては申し訳ないが、某ダンサーグループみたいな歌ばかりだ。デビュー出来てもやはり、この方々には遠く及ばない。上手いは上手い。だが、それだけだ。芸術的にビリビリ来るものが全然ない。Aimerさんぐらいか、10年代組でも我が道を行くボーカリストとしてぱっと浮かぶのは。
話を戻すと、楽曲のメロディーとアレンジがカッコいいのは勿論のことなのだが、この独特な巻き舌混じりなしゃくりがすごく攻撃的で、ロックに相応しい魂が垣間見れる。こんなジャキジャキなギターを奏でながらこの攻撃的なボーカルでライブをしようものなら、足を止めて聴き入るよね。
こういう歌い方になった理由に関しては分からないものの、歌の強さに関してはやはりこの方はパンチインアウト(何回かに分けて録音する事)をせずに、一発どりが出来る方だし、今のように何度でも録音がやり直せたり、後から修正出来るような時代ではなく、ミスの出来ない1回ごとのテイクが大事な環境の頃から活動しているからこそ、やはり歌に対する拘りがバシバシ伝わってくる。ボーカリストはこうでなければならない。
鬼束ちひろさんに嵌っていたことは今でも良かったと思っているが、それでもこのようなボーカリストをこの数十年もチャートでしか認識していなかったことをすごく恥ずかしく感じる。
ネタにされがちなこの曲だけれども、90年代に活躍していた魂の一つとして、どうかこの楽曲は聴いてみて頂きたい。