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2024秋華賞

2023年6月4日(日)、とあるレースが話題になった。

それは東京5Rの新馬戦。その後このレースはボンドガール組と呼ばれ、レベルの高い新馬戦として浸透していった。
今一度、このレースに出走していた馬の現在の成績を見てみよう。

1着 ボンドガール…NZT2着、クイーンS2着
2着 チェルヴィニア…オークス1着、アルテミスS1着
3着 コラソンビート…京王杯2歳S1着、阪神JF3着
4着 マスクオールウィン…フェアリーS2着、朱鷺S2着
5着 アンジュグルーヴ…未勝利1着
6着 キャットファイト…アネモネS1着、アスター賞1着
7着 クォーツァイト…1勝クラス1着
8着 ガジュノリ…1勝クラス1着、2勝クラス2着
9着 ミスファントム…未勝利1着、1勝クラス3着
10着 グランジュール
11着 ファイナルプラン

9着馬までが未勝利戦を勝ち上がり、ほとんどの馬が上のクラスでも活躍していることがわかる。重賞好走馬も4頭おり、改めてみても凄いメンバーが揃っていた新馬戦だと感じる。


なぜこのレースはハイレベル戦だったのか?なぜレース後すぐ話題になったのか?それはレースラップが証明していた。

この新馬戦のレースラップは
12.7-12.0-12.4-12.1-12.1-11.2-11.0-11.1
このようなラップ推移になっている。新馬戦でよく見られるスローペースから直線での末脚勝負といった展開だ。
ポイントは後半のラップ推移。上がり3Fは33.3、上がり5Fは57.5となっており、この数字が優秀なものだった。

2歳時に東京芝1600m以上のレースで、後半5Fが58.0より速いタイムのレースを逃げずに勝利した馬をみてみると…

57.2…グランアレグリア
57.3…クロワデュノール、ジオグリフ
57.4…コントレイル
57.5…ボンドガール
57.6…イクイノックスサリオス
57.7…コートアリシアン、チェルヴィニア、ダノンエアズロック
57.9…エコロブルーム、ナミュール
※太字はGI馬

錚々たるメンバーが揃っていることがわかる。少し話は逸れるが、現2歳世代ではクロワデュノールとコートアリシアンがこの条件に該当しており、速いタイムをマークした前者は特に今後の活躍が楽しみである。

このように、後半○Fを△△秒より速いタイムで走破しているか、というのは東京に限らず能力の裏付けになりやすい。その理由として、速いスピードを持続させることは高い能力がないとできないからである。
極端な話、スローペースなら1F〜2Fの短い区間であれば多くの馬が瞬間的に速い上がりを出すことができる。しかし、これが3F、4F、5Fと伸びていくとそう簡単にはいかなくなる。何故なら馬も全速力で走ることができる距離は決まっているからだ。だからこそ、2歳という早い時期に長い区間を速いタイムで走ることができている馬は、高い能力を秘めている裏付けになるのである。


勝ち馬について触れるまでの前置きが長くなってしまったが、この優秀なラップのレースを勝利したのがボンドガールだ。そして僅差で敗れたのがチェルヴィニア。どちらも優秀な内容だったが、この2頭はその後明暗が分かれることになってしまう。

ボンドガールは次走のサウジアラビアRCで単勝1.4倍の圧倒的な支持を集めることになる。多くの人が勝ちを期待しておりボクもその一人だった。
しかし結果は2着。出遅れに加え激しく折り合いを欠いてしまい、今後に課題が残る結果となってしまった。

一方チェルヴィニアは未勝利戦を一発で勝ち上がると、牝馬限定重賞のアルテミスSに挑戦。ここでこの馬は圧倒的なパフォーマンスを見せる。

-アルテミスSレースラップ-
12.5-11.4-12.0-12.1-12.0-11.4-11.2-11.0

ボクがチェルヴィニアに惚れ込んだのがこのレースだ。
ラスト3Fは11.4-11.2-11.0と加速し続ける流れを詰まりながら差し切り勝利後半5Fは57.7とGI級のパフォーマンスを見せたのである。元々POG指名をしている馬だったので期待はしていたが、この勝ちっぷりにボクは完全にこの馬の虜になってしまった。


その後、二頭は怪我もあり復帰戦は翌年の春となった。
ボンドガールは再び折り合いを欠きながらもNZTで2着、チェルヴィニアはぶっつけのGI挑戦に加え枠や展開にも恵まれず桜花賞で13着と、どちらも勝利を飾ることはできなかった。とはいえ怪我による休養明けだったため、次走に期待していた人も多かったのではないだろうか。

そして次走、再びこの2頭は明暗が分かれることとなる。
ボンドガールが選択したレースはNHKマイルC。東京1600mで行われるGIで、世代のマイル王を決めるレースだ。新馬戦を勝利した舞台でもあり、あの時のパフォーマンスを期待していた人も多かったのではないかと思う。ボンドガールは2歳チャンピオン2頭に次ぐ3番人気に支持されていた。
しかし、ボンドガールに待っていたのは直線でのアクシデントだった。内がごちゃつき、そこにボンドガールも巻き込まれ他馬と接触し減速する不利を受けてしまったのである。結局そこからは無理をせず、勝ち馬から離れた17着でゴールとなった。


一方、チェルヴィニアが選択したレースはオークス。牝馬クラシック二戦目となる2400mの中距離戦だ。
前走の桜花賞は13着と大敗してしまったが、前述した通りこのレースは怪我からの復帰初戦だったことに加え、不利も受けてしまったレースだった。一度レースを使ったことに加え、更に主戦であるルメール騎手が怪我から復帰。巻き返しを期待する人が多かったことを示すかのように、このレースでは2番人気に支持された。そして見事優勝しGI制覇を飾ったのである。



デビューから完全に明暗が分かれてしまった2頭だが、明日の秋華賞では新馬戦以来となる二頭の対決が見られるのだ。この年の牝馬クラシックはこの二頭を中心に回るのではないか…と、昨年6月にはそんなことを考えていたものだが、最終戦でようやくこの二頭が再戦となるのは個人的に熱いものがある。
そしてボクはチェルヴィニア、ボンドガールの両方に可能性を感じている。レースのことを考えるとなんだか熱が入ってしまい長々と書いてしまったが、ここからがいつものような予想の見解となる。


まずチェルヴィニア
この馬が高いパフォーマンスを発揮したのはアルテミスSとオークス。特にオークスは12.2-11.5-11.4の加速ラップの流れを差し切っており、チェルヴィニア自身も最後まで減速の少ないラップで走ることができている。スムーズな競馬が叶ったことは間違いないが、ラップ推移からは着差以上に評価できるパフォーマンスだった。

能力に関しては実績通り世代最上位の一頭であるため、力を出し切れば間違いなく勝ち負けになる馬。不安点は右回りや小回りコースへの対応といったところだろう。
実際に口向きの悪さから左回りの方が高いパフォーマンスを発揮できるのではないか、直線の長いコースで末脚を活かす形の方があっているのではないか、という不安点に関してはボクもその通りだと考えている。ただ、桜花賞に関しては右回り云々よりも他の要因の不利が大きすぎるだけに、右回りが合わなかったから負けたとは断定できない。正直右回りでどれだけのパフォーマンスを発揮できるのか?左回りと比較した時にどの程度パフォーマンスダウンするのか?こればかりは実践にいってみないとわからない。
ただ、これまで見せたレース内容、特にオークスでの最後まで減速の少ない走りで差してきたあの末脚はこの京都の舞台でも間違いなく大きな武器になると考えている。


そしてボンドガール
まず、本馬はデビューから1600mのレースに拘って使われていたように、本質はもっと距離が短いレースが合っているのではないかと思っている。
ダイワメジャー産駒の牝馬は総じてスプリンターが多く、世代限定戦まではマイルまで走れるケースが基本的なパターン。レシステンシアやメジャーエンブレム、レーヌミノルなど、牝馬で好走したGIは1600m以下のレースばかり。同世代のアスコリピチェーノの阪神JFの勝ち馬だ。
もちろん例外的なパターンもある。過去には秋華賞で10番人気3着と穴をあけたシゲルピンクダイヤという馬がいる。この馬は母系に欧州のタフな血を持っており、中距離戦で溜めて伸びる末脚を持っていた馬だった。
ただ、ボンドガールは血統を見てもそのようなタイプではなく、やはり本質は1600m以下のレースが合っているのではないかと思っている。これは行きたがる気性面を考えても、秋華賞の条件はベストではないはずだ。

しかし、この馬をこのタイミングで評価するには理由がある。ここに挑むまでの臨戦過程を改めて確認してみよう。
NHKマイルCで17着に敗れたあと、本馬は距離延長でクイーンSに挑戦。古馬相手に勝負を挑み本馬は2着、スイートピーSの勝ち馬コガネノソラが勝利し3歳勢のワンツーとなった。そこから前走の紫苑S、更に距離を伸ばしてきたのである。結果は3着と続けて惜敗に終わったが、この2戦は明らかにレーススタイルを変えているのである。
元々距離に不安があり、折り合いにも不安がある馬。追い切りでも話題になっていたが、この馬は行きたがる面が非常に強く乗り難しい馬なのだと思う。そしてそのボンドガールを、武豊騎手は意図的にスタートから引っ張って抑え込み、距離を意識しつつ控える競馬を教えているのである。
折り合いを気にしなければもっとポジションが取れても不思議ではないが、前半に出していくとそれだけ折り合いを欠くリスクも大きくなる。ここに至る2戦は秋華賞や更にその先の将来を見据えて、好走するためにできることを教えてきたレースだったのではないかと感じるのだ。前走の紫苑Sも後方から内でロスなく立ち回ったとはいえ、詰まって追い出しが遅れながら加速ラップの流れを上がり最速で追い込んできており、本来のポテンシャルを発揮できれば高いパフォーマンスを発揮できることを再認識させられた内容だった。



さて、ここまで長々と書いてきたが、競馬に絶対はない。チェルヴィニアが馬群でスムーズな競馬が叶わない可能性もあれば、右回りや小回りが合わずに大きくパフォーマンスを落としてしまう可能性もある。ボンドガールも折り合いを欠くなどして本来のパフォーマンスを発揮できない可能性ももちろん考えられる。それに加えてこの世代は全体的にレベルが高い。GIでも崩れずずっと上位争いを続けてきたステレンボッシュを筆頭に、上位人気が想定されるクイーンズウォークも強い馬だ。

ただ、一頭一頭過去のレースを振り返って分析し、考えた結論がこの予想だ。これで外れたら悔いはないと思える予想はできたので、馬券はこの二頭に想いを託して明日のレースを楽しもうと思う。熱いレースが見られることを期待したい。

みんなも後悔のない馬券を買おう、そして良い週末を。


-最終結論-
チェルヴィニア
ボンドガール

◎単勝
◎-○馬連

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碧馬らいむ@競馬はRPG
いつもボクの記事を読んでくださりありがとうございます! これからも根拠のある記事、面白い記事を作成していけるよう努力します!