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あの日のことを君はまだ覚えてるか (本編)

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この物語は、実話を基に、一部改変したフィクションとして描かれています。
 なお、登場する地名、団体名、個人名などは架空のものであり事実とは一切関係ありません。

Copyright© .24 ayami hoshino


あの日のことを君はまだ覚えてるか
著者 星野彩美

プロローグ

高原…高原…高原。無い
やっぱないよなぁ。あるわけないよな。
ふぅ…と深いため息混じりの吐息をつく。
こんなことなら、もっと早く。
今更、嘆いても仕方のないことなのは自分でも分かってる。
でも、何もしないで手を拱[こまね]いてるよりはマシか。
本を閉じると窓の景色を眺めながら嘆息を漏らす。
ごめん…ごめんな。高原…。ごめん。
無性にやるせ無い思いがより一層込み上げてきて気持ちが昂っては、堪えきれない涙がテーブルの上のノートに染み渡る。
ジワ…と滲んだインクは高原千奈美の書いた手紙の文字を濡らしていた。
ノートに挟んだままの高原千奈美の手紙を再び閉じる。
スマホを取ると写真を開く。
そこには、高原千奈美が肩幅ほどに両脚を開き、こっちを見てすこし膨れっ面をして頬を膨らまして腕組みしている。
まるで、今にも名前を呼ばれそうな表情だ。
すこし甲高い通る声の彼女の怒りにも満ちた叫び声だ。

某日某時間
じゃあね、かける…私帰るね。おばさまには挨拶して帰らないわよ。と、まとめ髪を鏡で確認に余念がない。口に咥えたシュシュですかさず止める。急ぎめに慌てると立ち上がる。
ああ、その方がいいかも。変に誤解されてもな。
こんな時間だからな。帰り道は気をつけろよな。危ないから。
じゃあね〜また明日。
千奈美が帰ったあと、入れ違いざまに母が部屋に来た。
翔…今、誰かと話ししてた?
ん?いや、部屋には俺しかいないだろ?
変なこと言うなよ。怖いなあ。
そうぉ。じゃあ私の気のせいかしらね。

俺は読みかけの雑誌を手にすると、見るわけでもなくパラパラとページをめくっていた。
パタンッ…ドアが閉まる音を背中で聞きながら翔は、急ぎ足で窓から外を見ると、千奈美が振り返りざまに手を振っていた。
俺もそれに倣って手を振った。
…アイツ、何も窓から帰ることないだろ。
夜這いしにきた女かよ…。まだ俺たち高校生だぜ。ったく。
千奈美は同じ高校に通わない、女子高に通っている。

〜俺たちの出会いは不思議な場所だ。お互いが知り合いの人同士。つまりは、親同士が知り合いの葬式に参列していた。
彼女は葬儀場の外にある大きな大木に背中を当てるように佇んでいた。悲しい佇まいだった。
まるで魂が抜けた身体がいるような感覚だ。よほど気落ちしていたに違いないだろう。他を寄せ付けない雰囲気を醸し出していた。憔悴[しょうすい]しきっている様子だった。

俺がそんな彼女を見つめていると、ふッ…と彼女と目が合ったのだ。シビれるような感覚に襲われた。
彼女の悲しげな顔つきに、不謹慎ではあるが…

一瞬でやられた…眼差しで堕とされたしまったのだ。

俺は見つめられて、ふと視線を逸らした。すると彼女は、ふいに近づいて歩み寄ってきたのだ。そして、俺の前に立った。
あの…なんでしょうか?
アンタ…森谷くんでしょ?森谷翔…
ん?ああ…そうだけど。あなたは?
私は、高原千奈美…と背中に手を回して、ポリポリと掻いてる。
ちょっと…翔、背中掻いてくんないかな?
背中?はぁ…背中、背中。と俺は背中を掻いてあげた。すると
違う!そこじゃない!もう少し下のほうよ。下、下!
どこ?下って。
だからぁ…下よ!ブラのホックの周辺あたり。ゴムとワイヤーのブラって、アタシ好きくないんだよね。痒くなるからさ。
デザインは可愛いのが多いんだけどさ、ブラって機能性よね?やっぱ。そうは思わない?
さぁ…俺がブラジャーしてように見えるか?
ははッ!だよね…。あのさ…翔。
何?っうか、馴れ馴れしくないか?俺に、翔って呼び捨てすんの。翔さん…とか翔くん…とか森谷くん…とかさ、言い方あんだろ?普通さ。で?何?
アタシたち、気が合うね…クスッ。
はは…何を言い出すと思ったら、なんてことない。
口説かれてんのかよ。俺…
何?悪い?女がタイプの男を口説いたらいけないって法律でもあんの?
それに、私は八月産まれ、アンタは十二月でしょ?
アタシのほうが四ヶ月もお姉さんなんだからね。
何で俺の誕生月知ってんのさ。
つうかさ、あまり見かけない制服だよね?
ああ、これね。私んち、この辺りじゃないんだ。
だから、ここに来るの大変でさ。
転校手続きとかしないといけないから、何回か通ってんだけど、イマイチまだ把握出来てなくて…。アタシ方向音痴だから。
だから、今度アンタんちに行くからいろいろと教えてよ。この辺のことをさ。ね?と千奈美は両手を合わせて頼みこんでる。
まぁ、俺も部活してるわけじゃないし暇してるからいいよ。
いつにする?と聞き返す?
即、行動あるのみ!
え?い、今からぁ?
どうせ暇なんでしょ?

某日某時間
こんな感じで俺たちのおかしな付き合いが始まった。
いろいろありがとう!私なりには、何となく理解できたかなぁ。
そう…それならよかったんだが…でもさ何故、うちにいる?
悪い?なぁ〜んかさ、アンタといると落ち着くんだよね。
何でだろ?
じゅうぶん寛いでんじゃないかよ。俺のスエットとか普通に着てるし。
臭くないよ?
そういう意味じゃなくて。
さっきは、普通に目の前で着替え始めるしさ。
少しは恥じらいってものはないのかよ。
何で?ね?何で?何か都合の悪いことでもあんの?
だってさ…と、俺は千奈美の胸の膨らみにドギマギしていた。
ま、いいか。でも親には内緒だからな。
バレるとうちの親、うるさいんだよ。
女の子と付き合うのは、きちんと大学を卒業してからとか言うんだよ。
何それ?堅物じゃん。今どき…。
分かった…今んとこ内緒にしといてあげる。

翔?と声がするとドアが開き、母親が顔を覗かせた。
何?母さん。と行く手を身体全体で塞ぐ。
お母さん、明日知り合いの人のお母さんが入院したらしいから手伝いに行かないといけないの。悪いけど、これで何か食べてくれる?と財布から五千円渡された。
ちゃんとしたものを食べなさいよ。それとお釣りとレシートもね。
分かったから早く出てけよ!ったくよう!
変な子ね…じゃあ頼んだわよ。
パタンッ…
別に挨拶すれば良いんじゃん。と千奈美はうつ伏せになりベッドで脚をバタバタさせながら、雑誌を読んでいた。
ダメなんだよ。君はわからないんだよ。うちの母さんは異性関係はとにかくうるさいんだよ。母さんの時は、どうとかって。
俺が怒られるのはいいけど、母さんは女の子を責めるんだよ。
うちの子を誑[たぶら]かして!ってね。
怒られるのは君の方なんだよ。
翔…アンタ優しいね。あのさぁ…
ねぇ…翔ぅ。セックスしよう!

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