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夫のお母さんを「おかあさん」と呼べるようになるまで

夫のお母さんは明るくて親しみやすく、おしゃべりや冗談が好きで、働き者で優しい、かつ飾り気のなくさっぱりとした、とても素敵な方だ。

住まいが離れているので、実際にお会いしたのは、付き合い始めて8か月後、婚約後のご挨拶、両家両親顔合わせ、今年のお正月の4回だ。

その間にわたしはこの人を大好きになっていった。

早朝から仕事頑張って家事もして、お姉さんたちの子育てもして、そんな中で夫を産み、育ててくださった。そのおかげでわたしと夫は出会うことができた。

そんなことを思っては毎回じーんと来てしまって、一度はその思いをお手紙にしたためてしまったくらいである。

そんな夫のお母さんに対して、わたしは面と向かってまだ「おかあさん」と呼べていない。

4回目にお会いしたときでさえ、極力呼ばない形を選んだし、呼んでも〇〇くん(夫の名)のお母さんとか、〇〇さん(夫のお母さんの名前)でしかなかった。LINEでさえもそうだった。

ためらっている原因は、気恥ずかしさもあるのだろうが、それ以上に、婚姻届という紙を役所に提出した、ただそれだけで、義理とはいえ、そんな簡単に親子関係が成立して良いものなのか。今まで何十年もかけて築き上げてきた家族という尊い共同体に、よそ者がポンと入り、使い込まれた温かい呼称を馴れ馴れしく使っていいのだろうか。という不安が拭い去れなかったことによるものだ、と思う。

夫のお父さんやお母さんも、息子のお嫁さんで義理の娘だけれど、実の娘とはまた違った距離感であるはずだし、急に私がお父さんとかお母さんとか言うことによって、「おとうさん」「おかあさん」という言葉と存在の重さが軽くなってしまうのでは、と恐れたのだ。

自分たちに子供が生まれて、じいじとかばあばとか言う方がまだ言いやすいんじゃないだろうか、とさえ思う。じいじ、ばあばは子どもを通しての初めてわたしと夫の父母にできる血のつながりであり、新しく使われる呼称、続柄だからだ。

一つ言っておきたいのだが、夫の家族の方々と触れ合って孤独感を感じたということは一切ない。おねえさんも「Kaniちゃんみたいな子が妹になってくれてうれしいよ」と言ってくれている。

以前の職場の同期は夫のお母さんを「おかあさん」を呼んでいると聞いたし、夫も私の父母を既に自然に「おとうさん」「おかあさん」と呼んでいる。

きっとわたしが考えすぎなのだ。でも、このもやもや、どうしたらいいんだろう。。


そうこうしているうちに、1月末、夫のお母さんから、LINEで、あるメッセージが送られてきた。

「アルバム、届きました!こちらは例年より雪が少なく雪かきもあまりしなくてよいので、母さんも元気に太ってまーす!」

このメッセージを読んで、夫のお母さんはおかあさんと呼ばれることは嫌じゃないんだな、と気づいた。むしろ、手をつないで和気あいあいと輪になっているグループから一人外れておずおずしているわたしに、「おいで」と手を差し伸べてくれているようにさえ感じた。

それからは、わたしも割とスムーズにLINEで「おかあさん」と呼べるようになった。

これだけでなく、私個人あてに色々と気遣ってLINEしてきてくれている。「Kaniちゃん、一人で住んでて困ってることない?」「マスク足りてる?」それが本当に親からの連絡のようで、温かい。

呼び方が先、関係はこれからゆっくり温めていっていいんだということに自分の中で少しずつ納得できてきている。

いつかはあの素敵な方々を自然とおとうさん、おかあさん、と呼べるようになりたい。わたしは、そういうご縁を頂けたのだから。

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Kani*
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