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【文豪MBTI】太宰治のMBTIを考察する:矛盾と葛藤の中にある人間性

なぜ太宰治のMBTIを考察するのか

太宰治って、どうしてあんなにも人の心をえぐるような作品を書けたんだろうか。彼の小説を読んでいると、他人の話を聞いているというより、太宰自身が心の奥底をぶちまけてる感じがする。『人間失格』なんかはまさにそうで、読んでるこっちが「あ、これ俺のことか?」って思ってしまうほど。そこまで自分をさらけ出せる作家って、そう多くない。

じゃあ、そんな太宰の人間性をMBTIで分析してみたらどうなるのか。MBTI(Myers-Briggs Type Indicator)は、人の性格を16タイプに分ける心理学的ツールだけど、太宰みたいに複雑で矛盾した人物を分析するのは、単なるタイプ分けって枠を超えた面白さがある。

太宰治をMBTIで考える意味って結構あって、一つは彼が自分の内面をかなりストレートに作品に落とし込んでいること。要するに、「作品=太宰の心」みたいなところがあるから、彼の小説を読めば読むほど彼のMBTIが見えてくるって話。

それに、太宰は人との関わり方がかなり独特で、依存と拒絶を繰り返してた部分がある。この辺りはMBTIでいうところの内向的感情(Fi)とか外向的直観(Ne)が影響してそう。理想を追うINFJなのか、感情に振り回されるINFPなのか、それとももっと別のタイプなのか。そういうのを掘り下げていくのが今回のテーマ。

太宰治のMBTIを考えることで、彼の文学への理解が深まるだけじゃなくて、自分自身を見つめ直すきっかけにもなるかもしれない。そんなことを考えながら、これを書いてる。

太宰治の生き様から見る性格の輪郭

太宰治の人生は、彼の作品と同じくらいドラマチックで、複雑だった。常に人を惹きつける魅力を持ちながら、自ら破滅に向かって突き進むような生き方をしていた。たとえば、学生時代から度々自殺未遂を繰り返し、最終的には愛人と共に入水自殺を遂げたことはあまりにも有名だ。

でも、彼は単なる悲劇の人じゃない。太宰は、自己嫌悪にまみれながらも人間の弱さや醜さを直視し、作品を通じてそれを表現することに長けていた。世間に背を向けながらも、人と繋がることを求め続けた。つまり、孤独を愛しながらも孤独を恐れていたという、矛盾した存在だったわけだ。

この矛盾こそが、MBTIでいう「内向的感情(Fi)」や「外向的直観(Ne)」の特徴にかなり近い。自分の内面に忠実でありながら、新しい可能性を常に模索するタイプの人間が持つ傾向だ。

また、太宰は自らの弱さや欠点を包み隠さず語ることで、人々の共感を呼び起こした。『人間失格』では「自分は他人と違う」という意識が強く描かれているが、これはINFJやINFPタイプの典型的な特徴でもある。自分の感情や経験をフィルターなしで言語化し、世界に問いかける姿勢は、まさにこのタイプが持つ資質と言えるだろう。

ただし、太宰が持つ「戦略的な一面」も見逃せない。彼は人間関係を築く際に、相手の心をつかむための演技をすることがあったと言われている。これが「外向的感情(Fe)」の要素とも捉えられ、INFJの特徴とも一致する。

要するに、太宰治はINFJのような理想主義者でありつつ、INFPのような繊細さを併せ持つ複雑な人間だった可能性が高い。そしてその生き様が、彼の作品を通じて今もなお多くの人の心に響いている。

MBTIタイプの候補と考察

太宰治をMBTIで分析する際に、候補として挙がるのがINFJ、INFP、そしてINTPだ。それぞれのタイプには太宰の性格や行動に通じる特徴が見られる。

INFJ(提唱者型) INFJは理想主義的で、人間の本質を見抜く洞察力を持つタイプだ。太宰の作品には、常に人間の内面や社会の矛盾を見つめる鋭い視点が表れている。『斜陽』や『人間失格』は、登場人物の心のひだにまで入り込み、彼らの葛藤や絶望、そして微かな希望を丁寧に掬い取る。INFJの特徴である「世の中をより良くしたい」という願望は、太宰のペシミスティックな世界観の裏側で、救いを求め続ける叫びとして表れているのかもしれない。

INFJのもう一つの特徴は、人と深く関わることを恐れつつも、孤独を嫌うという二律背反の感情だ。太宰はしばしば友人や知人に助けを求め、彼らの温かさを感じながらも最終的には自ら距離を置く。この「他者を求めながらも、同時に拒絶する」という姿勢は、INFJの典型とも言える。

INFP(仲介者型) INFPは感受性が強く、自らの価値観に従い、内面の誠実さを守るタイプだ。太宰の作品には自己嫌悪と純粋な理想が交錯している。『走れメロス』に見られる「人間の善を信じたい」という願いは、INFPが持つ理想への渇望と一致する。

一方で、『人間失格』のような作品では、自らを否定し続ける内省的な側面が強く打ち出される。INFPは現実とのギャップに苦しむことが多く、太宰が社会から疎外感を感じ続けていたのも、このタイプの特徴に重なる。周囲の価値観に染まることなく、自らの心の声に従って生きる姿勢が、INFPとしての太宰を浮き彫りにしている。

INTP(論理学者型) INTPは冷静に物事を分析し、独自の哲学を構築するタイプだ。太宰は作家としての成功だけを求めたわけではなく、作品の中で人間とは何か、生きる意味とは何かを問い続けた。『ヴィヨンの妻』や『津軽』では、社会や自己を外側から観察するような視点が際立っており、まさにINTPの持つ「絶え間ない思索の旅」が表れている。

また、INTPは他者との関係においても一定の距離を保つ傾向がある。太宰が人間関係においてもどこか一線を引き、観察者であろうとする姿勢は、このタイプの特徴を彷彿とさせる。

結論:複数のタイプが交錯する存在 太宰治はINFJ的な理想主義者であり、同時にINFP的な感受性を持ち合わせた複雑な人物だった可能性が高い。さらに、INTPのような冷静な思索家の一面も見え隠れする。彼は理想を持ちつつも、その理想に傷つき、現実を直視しながらも逃避し続けた。そして、その矛盾や葛藤が作品を通して多くの人々の心を捉え、彼の文学が時代を超えて愛され続ける理由なのかもしれない。

作品から読み解く太宰治の心象

太宰治の作品は、まるで彼の魂が文字となって流れ出しているかのようだ。彼の小説を読むことは、ただ物語を楽しむ行為ではなく、太宰の心の奥底に触れる旅に他ならない。自己否定、理想への渇望、救済への淡い希望が、作品の端々に深く刻まれている。読むたびに、彼の抱える苦悩や絶望がじわじわと染み込んでくる。

『人間失格』:自己嫌悪と疎外感の凝縮 『人間失格』は太宰の内面を赤裸々に描き出した告白とも言える作品だ。主人公・大庭葉蔵は社会の中で「仮面」をかぶり、他者と自分を隔てて生きる。仮面を通してしか社会と関われない彼の姿は、太宰自身の「他者と交わりたいのに交われない」という切実な孤独の反映である。

葉蔵が抱える自己嫌悪は、単なる弱さや劣等感ではなく、自分が「他人とは違う存在」であることを強く自覚することから生まれている。これはINFJの特性である「自分だけが世の中から孤立している感覚」に通じる。社会の中で異質さを感じるたびに、葉蔵はますます自分を失格者として追い詰めていくのだ。

『斜陽』:崩壊する理想と時代の流れ 『斜陽』には、太宰が目の当たりにした時代の変化と、取り残される人々の姿が描かれている。主人公のかず子は、貴族階級の没落を目の当たりにしながらも、理想を諦めきれずに何度も手を伸ばす。しかし、理想に向かって踏み出した先には容赦ない現実が立ちはだかる。かず子の揺れ動く心は、太宰自身の「理想と現実の板挟み」にほかならない。

INFPの特徴である「理想に生きるがゆえに現実に傷つきやすい姿勢」が、この作品の根底には流れている。かず子の「純粋さ」と「脆さ」は、太宰が抱え続けた矛盾そのものであり、読者をして「自分にも同じ傷がある」と気づかせる。

『走れメロス』:理想の世界と信念への憧れ 『走れメロス』は、一見すると太宰の作品の中でも明るい部類に入るが、そこにも彼の複雑な心象が刻まれている。メロスは友を救うために走り続けるが、その信念は「太宰自身が持ちたかったもの」である。太宰は理想を持つことを強く望みながらも、現実に打ちのめされ続けた。メロスが走ることで友情を証明する物語は、太宰にとっての「こうありたかった自分」の投影にほかならない。

しかし、太宰自身が「メロスのようにはなれなかった」と感じていたことは、後年の作品に強く影を落とす。『走れメロス』が理想であれば、『人間失格』はその理想にたどり着けなかった現実の告白だ。このギャップが、太宰の作品に独特の緊張感を与えている。

作品を通じて見える太宰治の多面性 太宰の作品は、彼の矛盾と葛藤が織りなす迷宮のようだ。INFJの理想主義、INFPの感受性、INTPの冷静な思索が入り混じり、彼の心は多面的である。理想に手を伸ばしながらも自らを「失格者」と称し、最後にはその矛盾に飲み込まれていく。それでも彼の作品は、人間の心の弱さや儚さを映し続け、時代を超えて共感を呼ぶ。

太宰治を理解することは、自分自身の中に潜む理想と現実の狭間を見つめることに繋がる。彼の作品は、まさに人間の「失格」と「救済」を描く永遠のテーマを宿している。

結論 – 太宰治のMBTIは一つに絞れない

太宰治をMBTIで分析するのは面白い試みだけど、結局のところ彼はその枠に収まるような人間じゃない。INFJの理想主義、INFPの繊細さ、INTPのクールな観察眼。どれも「っぽい」んだけど、全部が太宰を語るには足りない。

彼の作品を読めば読むほど「太宰って本当にめんどくさい人だな」と思う反面、その矛盾や葛藤に妙に共感してしまう。理想を追いかけては現実に打ちのめされ、それでも筆を手放さなかった。そんな姿を見てると、「この人、一生このままだったんだろうな」と思わされる。

「じゃあ結局、太宰はどのタイプ?」と聞かれたら、おそらくINFPが一番しっくりくる。繊細で内省的、理想に燃える一方で、現実に傷つきやすい。太宰の生き方や作品に流れる独特の感傷的な雰囲気は、INFPの特性そのものだ。

ただ、それだけでは説明しきれない部分もある。INFJ的な戦略的な側面や、INTPの冷静な思索も見え隠れするのが太宰の面白いところ。結局のところ「太宰治」というカテゴリが最も彼を表しているんだろう。

それでも、あえてMBTIで答えを出すならINFPが最も近い。彼の作品を通して触れるのは、人間の脆さや矛盾そのもので、MBTIでどうこう語るのを超えた、もっと奥深いものがそこにある。

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