GO GO!ともみっち厩舎!をいろいろ検証してみた

GO GO!ともみっち厩舎!という動画をご存じだろうか。
ご存じない方は、まずは下の埋め込み動画を見て欲しい。

「ともみっ ともみっ ともみっち」のフレーズがやたら頭に残る

原曲である「GO-GO たまごっち!」は、アニメ「たまごっち!」の第一期OPで、第1話~第73話というかなり長きにわたって使用されており、49話以降は月替わりで歌うキャラが変わるなど、アニメシリーズを語る上ではまず欠かせない一曲と言えるだろう。

筆者にとってたまごっちと言えば子供の頃に遊んだ「新種発見!!たまごっち」(白・スケルトン)とPS1の「星で発見!たまごっち!」の2つであり、昨今のたまごっちにはてんで疎いのだが、それでもこの曲によって「たまごっち」というコンテンツが好きだった時代を思い返す事ができた。

この「GO GO!ともみっち厩舎!」だが、ぽようう氏作成のMAD動画で、題材として現在栗東トレーニングセンターで厩舎を開いている友道康夫調教師(以下、友道師)を取り上げたものであり、彼の厩舎に所属した名馬や友道師の経歴、厩舎の特徴について語っている。

では、なぜこの曲を取り上げる事になったかと言う所についてだが、筆者は「レターパックで現金送れはすべて詐欺です」を筆頭とした特徴的ミーム溢れる混沌の坩堝Misskey.ioというインスタンスに定住している。
当該サーバーに設置されている「Misskey.io 競馬部」が筆者の主な住処なのだが、そこでこの曲が拡散されるや否や大人気となり、今や友道師をイメージした絵文字まで存在する程度には競馬部に浸透している一曲である。

しかし、筆者は競馬好きである事に加えてデータ分析も好きなタイプであり、ある時ふと考え至ったのである。

「この曲で言及されている内容をもっと深掘りしたらどうなるだろうか」と。

折しも検証開始を決めたのは宝塚記念の終了後であり、秋のGIシーズンまではそれなりの時間がある事には違いない。
そこで筆者は「夏休みの宿題みたいなノリで検証するか!なんか面白そうだし!!!」という我ながらあまりにも単調な理由で検証するに至った。
果たして、動画で言及している内容を更に深掘りすると、一体何が出てくるのだろうか。
是非「GO GO!ともみっち厩舎」の動画を片手にご覧ください。
基本的に競馬の予想に役に立つデータはあんまりないです。ネタと割り切っていただけると幸いです。


前提条件

  • 友道厩舎開業初戦となった02年11月30日の中京1R 2歳未勝利戦を起点とし、24年7月21日の全レース終了までを検証範囲とする。

  • 検証範囲のレースは特筆のない限り中央競馬にて友道厩舎管理馬が出走したレース全てとなる5008戦とする。

  • 他厩舎からの転厩や、友道厩舎から他厩舎に移籍した馬であっても、対象レースを「友道厩舎所属」として出走した場合は検証の対象とする。

  • 文中におけるパーセンテージ表記について、原則として少数第一位以下切り捨てとする。

  • (A,B,C,D,E,F)(各アルファベットは数字を指す)という表記について、これは各条件における(1着,2着,3着,4着,5着,6着以下)の成績を表す。

まず「ともみっち」こと友道師って?

友道康夫師はJRA・栗東トレーニングセンターに所属する調教師で、厩務員→調教助手という過程を経て、2001年より調教師として活動を開始している。
前奏終了後の0:16秒頃・1:17秒頃より代表的な友道厩舎管理馬が映像にて紹介されているが、通算で重賞67勝GI19勝クラシック競争6勝ダービーに至っては現役調教師トップの3勝を挙げている、栗東でもトップクラスの腕利きと言える調教師である。
元々の志望する所は小動物向けの獣医だったが、大阪府立大学在学時に馬術部に所属した事から馬への興味に繋がり、89年にはJRA競馬学校厩務員過程に合格、ホースマンとしてのキャリアを歩みだした。
その後は栗東・浅見国一厩舎(1980年のオークス馬ケイキロクを管理)に所属後、96年の浅見師の定年に伴い栗東・松田国英厩舎に移籍して経験を積み、2001年に調教師免許を取得、2002年に栗東トレーニングセンターにて厩舎を開業し現在まで至る。
このように、動画では語感のよさから「ともみっち」と呼ばれているが、成績は現役調教師でも最上位クラスの成績を挙げている凄い人なのだ。
預託傾向としては社台系列のクラブ馬よりは個人馬主からの預託が多く、有名所で言えば図研株式会社の代表取締役会長である金子真人氏(マカヒキ)・「大魔神」でお馴染み佐々木主浩氏(ヴ三姉弟)・近藤夫妻(アドマイヤ冠名)の所有馬を主に管理している。

動画中に紹介された友道厩舎の代表馬
・ジュピタっち(アドマイヤジュピタ/08年天皇賞春)
・バルドっち(アンライバルド/09年皐月賞)
・ヴィルっち(ヴィルシーナ/13・14年ヴィクトリアマイル)
・スカイっち(クラリティスカイ/15年NHKマイルカップ)
・シュヴァルっち(シュヴァルグラン/17年ジャパンカップ)
・ヴィブっち(ヴィブロス/16年秋華賞・17年ドバイターフ)
・マーズっち(アドマイヤマーズ/18年朝日杯FS・19年NHKマイルカップ・香港マイル)
・プレミっち(ワールドプレミア/19年菊花賞・21年天皇賞春)
・おどうっち(ドウデュース/21年朝日杯FS・22年日本ダービー・23年有馬記念)
・ボルトっち(ジュンライトボルト/22年チャンピオンズカップ)
・ポタっち(ポタジェ/22年大阪杯)
・レイクっち(ヨーホーレイク/22年日経新春杯・24年鳴尾記念)
・パーっち(ハーパー/23年クイーンカップ)
・グランっち(サトノグランツ/23年京都新聞杯・神戸新聞杯)

出典:Wikipedia+GO GO!ともみっち厩舎

ちなみに、余談として友道厩舎の細かいデータを以下に記しておく。

・友道厩舎所属馬の合算走行距離:9267.99km
(参考:パリロンシャン競馬場までが9734.21km、独国・ミュンヘン競馬場までが9381.78km)
・友道厩舎所属馬平均順位:6.97位
・タイム収支:+4686.3秒(約78分相当)
・最小オッズ:1.1倍
ブリッコーネ 04年3月27日 3歳未勝利/3着
マイラプソディ 19年9月14日 野路菊S(OP)/1着
フィデル 21年7月4日 2歳新馬/1着
・最大オッズ:599.1倍
スイートナッシング 04年8月14日 3歳未勝利(15番人気/競争中止)
・通算成績(5008戦)(734,559,495,431,397,2392)
勝率14% 連対率25% 馬券率35%
(競争中止16、降着2含む)
人気別成績
1番人気(337,177,139,84,52,188)
勝率34% 連対率52% 馬券率66%
(競争中止5、降着1含む)
2番人気(164,150,104,72,61,182)
勝率22% 連対率42% 馬券率57%
(競争中止3、降着1含む)
3番人気(83,83,83,66,57,216)
勝率14% 連対率28% 馬券率42%
4番人気(56,46,49,62,48,207)
勝率11% 連対率21% 馬券率32%
(競争中止3含む)
5番人気(33,46,36,39,37,217)
勝率8% 連対率19% 馬券率28%
(競争中止1含む)
6番人気以下(61,57,84,108,142,1382)
勝率3% 連対率6% 馬券率11%
(競争中止4含む)
10番人気以下(9,14,18,28,43,604)
勝率1% 連対率3% 馬券率5%
(競争中止3含む)

マラソン厩舎のともみっち?

動画の0:23秒頃にある「マラソン厩舎のともみっち」という歌詞字幕が存在する。
ここに記載されている内容を引用すると、

友道厩舎重賞63勝
平均重賞勝利距離 2090m

出典:GO GO!ともみっち厩舎 0:23頃

という事で紹介されている。
比較要素として、他の名門厩舎の平均重賞勝利距離として動画中には、
國枝厩舎 1892m
中内田厩舎 1747m
手塚厩舎 1828m
という日本を代表する名伯楽の成績が記載されている。

しかし、競馬というのは何も重賞だけがレースではなく、競走馬キャリアの一丁目一番地とも言える新馬・未勝利戦、登竜門となる条件戦(俗に言う〇勝クラス)を経てオープン競走重賞競走に挑む事となる。
2歳・3歳戦のような世代限定戦であれば未勝利でも理論上は重賞に挑むことが可能だが、基本的には複数回の勝利という実績がなければ重賞の舞台には立てないのだ。

勿論、大多数の馬が順風満帆に連戦連勝と行かないのが競馬であり、なかなか勝利を掴むことができないのが現実である。
実際、新馬戦や未勝利戦を勝利できる馬はJRA所属馬の中の3割程度であり、更にそこから〇勝クラスを勝ち上がる馬となると何層もの篩にかけられるようなものであり、重賞に出走するような馬はその時点で上澄みの上澄みといっていいレベルの実力者なのだ。

話が少々脱線してしまったが、今回の検証では前述した通り友道厩舎の管理馬としてレースを行った全5008戦が対象であり、当然その中にはJRAで行われる全てのクラス・馬場のレースが検証対象である事を改めて明記したい。
これを踏まえ、実際に友道厩舎の馬場・距離別成績をご覧いただきたい。

ダートコース通算成績(全1501戦)(187,132,130,121,120,811)
勝率12% 連対率21% 馬券率29%(競争中止3含む)

ダ1000m(3,4,1,3,3,20)勝率8% 連対率20% 馬券率23%
ダ1150m(0,0,0,0,0,2)勝率0% 連対率0% 馬券率0%
ダ1200m(14,2,10,9,5,40)勝率17% 連対率20% 馬券率32%
ダ1300m(0,0,1,0,0,2)勝率0% 連対率0% 馬券率33%
ダ1400m(16,19,10,18,17,138)勝率7% 連対率16% 馬券率20%
ダ1600m(2,0,2,0,3,12)勝率10% 連対率10% 馬券率21%
ダ1700m(51,28,39,28,29,195)勝率13% 連対率21% 馬券率31%
ダ1800m(76,67,53,50,52,306)勝率12% 連対率23% 馬券率32%
(競争中止3含む)
ダ1900m(6,4,5,5,1,31)勝率11% 連対率19% 馬券率28%
ダ2000m(6,4,5,4,1,26)勝率13% 連対率21% 馬券率32%
ダ2100m(6,2,1,2,4,18)勝率18% 連対率24% 馬券率27%
ダ2300m(1,0,0,0,1,2)勝率25% 連対率25% 馬券率25%
ダ2400m(6,2,3,2,4,18)勝率17% 連対率22% 馬券率31%
ダ2500m(0,0,0,0,0,1)勝率0% 連対率0% 馬券率0%

ダートコース出走時平均走行距離:1694.7m

まずダート戦だが、ここでは2つの点について言及したい。
まず最初に、友道厩舎は芝の中~長距離戦を得意としている厩舎であり、ダート馬の大物は実績の割に出ていない傾向にある。
何せGI馬14頭非GIの重賞馬に限っても22頭と驚くべき実績を挙げているのだが、実はこの中でダートの重賞を制した馬はジュンライトボルト(2017年生まれ/父キングカメハメハ)の1頭きりなのだ。
何せ前述の通り友道厩舎が開業したのが2002年11月21日、そしてジュンライトボルトが2022年10月1日のシリウスS(GIII)で勝利するまで、凡そ20年間の長きにわたりダート重賞には縁がなかったのだ。
これは地方競馬で行われる地方・中央交流の重賞を含めても同様であり、次項で述べる芝コースへの出走数に比べ半分以下の出走数に留まっている故、厩舎の強み・方針からするとデータの絶対数が少ないのはやむを得ない所があると言わざるを得ない。

2点目は、ダート戦の距離体形についてだ。
そもそもダート戦と言うのは全体的に短めの距離設定で施行されるケースが多く、芝レースで所謂「クラシック・ディスタンス」と呼ばれる2400mのレースはダート戦で設定される事はかなり少ない。
実際、日本国内で行われるダート戦においてGIが行われる最長距離は川崎記念(JpnI)の2100mであり、2023年に2200m以上の設定で行われたダート戦は条件戦の中山・小倉・函館・札幌におけるダート2400m、中山・新潟におけるダート2500m戦の合計19戦しか存在していない。
また、重賞は名古屋競馬場(現在は弥冨市に移転)で施行されていた名古屋グランプリ(JpnII/2500m)が移転に伴い2100mに短縮された事で、船橋競馬場で行われるダイオライト記念(JpnII/2500m)が現在唯一となる2200m越えの重賞となっている。
世界的に見てもダート戦かつ2200m以上のレースで権威のあるレースと言えば米国三冠の最終戦であるベルモントS(GI/2400m)やアルゼンチン三冠の最終戦ナシオナル大賞(GI/2500m)といったレースがあるが、ダート戦ではブリーダーズカップ・クラシック(GI)のような2000mまでのレースが中心となっている。
話が少々脱線したが、ダート戦は国内外を問わず2000mを越える長距離のレースが組まれにくく、2000m以下のレースが主流傾向にある。
当然、友道厩舎もダート短距離のレースに管理馬を出走させているが、傾向を見て見ると距離が延びるにつれ成績が良化していく傾向が見られる。
特に出走数の最も多いダート1800m戦、次に多いダート1700m戦ではいずれも馬券内率30%台を叩き出しており同じくサンプル数がある程度稼げているダート1400mの戦績と比べると目に見えて良化している
前述の通り、全体的に距離設定が短い傾向にあるダート戦というレース体系でありながら、出走馬の平均走行距離は1694.7mという数字を見るに、やはり距離が延びる程成績が良化するのは友道厩舎が不得手とするダートでも健在であり、マラソン厩舎と呼ばれるだけの実力を見せつけている。

芝コース通算(3440戦)(539,416,359,307,269,1550)
勝率15% 連対率27% 馬券率38%
(競争中止9、降着2含む)

芝1000m(0,0,0,0,1,4)勝率0% 連対率0% 馬券率0%
芝1200m(18,21,20,19,21,106)勝率8% 連対率19% 馬券率28%
芝1400m(31,21,17,20,21,120)勝率13% 連対率22% 馬券率30%
(競争中止1含む)
芝1500m(2,2,3,1,4,12)勝率8% 連対率16% 馬券率29%
芝1600m(78,58,43,40,43,272)勝率14% 連対率25% 馬券率33%
(競争中止1含む)
芝1700m(0,0,0,0,0,2)勝率0% 連対率0% 馬券率0%
芝1800m(116,89,76,73,63,318)勝率15% 連対率27% 馬券率38%
(競争中止2、降着1含む)
芝2000m(171,126,111,82,66,385)勝率18% 連対率31% 馬券率38%
(競争中止4含む)
芝2200m(43,34,34,26,14,110)勝率16% 連対率29% 馬券率42%
(競争中止1含む)
芝2300m(0,0,0,0,0,1)勝率0% 連対率0% 馬券率0%
芝2400m(52,42,36,28,15,95)勝率19% 連対率35% 馬券率48%
芝2500m(7,4,10,4,7,48)勝率8% 連対率13% 馬券率26%
芝2600m(14,12,6,10,12,48)勝率13% 連対率25% 馬券率31%
(降着1含む)
芝3000m(4,5,2,0,1,14)勝率15% 連対率34% 馬券率42%
芝3200m(3,2,1,3,1,7)勝率18% 連対率31% 馬券率37%
芝3400m(1,0,0,1,0,3)勝率20% 連対率20% 馬券率20%
芝3600m(0,0,0,0,0,5)勝率0% 連対率0% 馬券率0%

芝コース出走時平均走行距離:1895.6m

友道厩舎の本職とも言える芝レースだが、前項のダートレースでの結果と同じように距離が延びる程良化するという傾向は同様である。
しかし本職とも言える芝中距離戦においての成績は凄まじく、特に1800mから2400mの成績は圧巻と言っても過言ではない。
例えばクラシック・ディスタンスと呼ばれる2400m戦の馬券内率は48%であり、極論を言えば芝2400m戦に出走した友道厩舎の馬を無心で買い続けていれば大体2回に1回は的中するという事なのだ。わーいらくち~ん
平均走行距離も1895.6mと堂々のマイル越えであり、「マラソン厩舎」という異名も納得の成績となっている。

一方、「マラソン厩舎」の異名から考えれば短距離戦では弱いのではないかとも思えるが、実際の所1600m未満のレースの勝率・連対率は確かに芳しくない。
ただ、友道厩舎の芝短距離戦出走数は芝レースの全体出走数からすると少ない部類であり、主流の距離である1200m戦は204戦(5%)、1400m戦は230戦(6%)しか出走していない。
レース種別で見てみると、オープン未満のクラスではある程度出走しているのだが、レースの選択幅が広がるオープン以上となると、
・1200m戦:全9戦(うちオープン/リステッド5戦・重賞4戦)
・1400m戦:全45戦(うちオープン/リステッド31戦・重賞14戦)
とレース選択数に大きな開きが見られる。
特に1200m戦の重賞という観点で見れば、2017年の函館2歳ステークス(GIII)が初出走(デルマキセキ/4着)であり、厩舎を開業して凡そ15年間スプリント重賞とは無縁だったという非常に珍しい経歴を辿っている。
ただし、勝率・連対率は芳しくないながらも馬券内率は十分な水準に達しており、その点に関しては関西トップ厩舎の意地は十分示していると言えるだろう。

障害コース通算(67戦)(8,11,6,3,8,31)
勝率11% 連対率28% 馬券率37%
(競争中止4含む)

障3000m未満(4,7,2,0,6,17)勝率11% 連対率30% 馬券率36%(競争中止3含む)
障3000m以上(4,4,4,3,2,14)勝率12% 連対率25% 馬券率38%(競争中止1含む)

マラソン厩舎らしく障害競走にも明るいかとも思えるが、実際は友道厩舎の管理馬で障害路線を歩む馬はかなり少ない。
現時点で最後に出走したのは22年2月26日の障害4歳以上未勝利(障2860/小倉)のザレストノーウェア(7着)であるため、丸2年以上障害競走馬を管理しておらず、調教師毎に割り当てられている馬房の上限数が決まっている関係上、平地競走向けの有力馬を中心とした管理体制になるのはやむを得ない所だろう。
出走歴を詳細に見て見ると、キャリア最初の5年間の間に31戦出走させているが、以降は友道師の成績に比例して障害方面での預託馬が減ったのか出走数が徐々に落ちており、初のベスト10入りを果たした15年(この年4位)以降は全部で8戦しか出走させていない。
ただし、障害方面の出走が少なくなっていると言っても2019年にはネプチュナイト(父ルーラーシップ)で障害未勝利戦を勝利し、その後清秋ジャンプステークス(OP)で3着に入っているので、障害馬の預託・育成が全く難しいという事はなさそうである。

チーム友道厩舎、多頭出しでいざ参る

続いての検証項目にあたり、動画0:45秒頃をご覧いただきたい。

毎週 友道 多頭出しするよ

出典:GO GO!ともみっち厩舎! 0:45頃

「多頭出し」とは、1つのレースに自身の厩舎の管理馬を複数頭出走させる事を指す競馬用語である。
当然ながら多頭出しした所で1着になれるのは同着事例が発生しない限り1頭のみであり、特段の事情がない限り「馬主」単位ならともかくとして、厩舎単位での多頭出しは海外では頻繁に見られる一方、日本では珍しい傾向にある。

海外での例。若き俊英シーザスターズにオブライエン一族の包囲網迫る!なお結果は
出典:Timeform Horse Racing

動画でも0:47頃から「サンデーレーシングみたい」という多頭出しに言及した例が流れているが、この映像で言及された2012年のジャパンカップでは確かに大手一口馬主クラブのサンデーレーシングから5頭が出走している。
しかし、あくまでもこの5頭は全て別々の厩舎が管理している馬であるため、今回検証する「同一厩舎における」多頭出しというテーマとは若干異なる点にご留意頂きたい。

その後、動画を進めると1:00頃からの間奏(実際には間奏ではないのだが)部分で2019年のジャパンカップを舞台としたシーンが流れる。

JRA<やばいJC外国馬いないしフルゲートじゃない…
(颯爽と入ってくるともみっちカットイン)
JRA<!?
友道師<JRAさん、私の管理馬5頭出します
JRA<ありがてぇ!
友道師<この馬達でね!
(ワグっち・エタっち・シュヴァルっち・スマっち・マカっちがカットイン)

補足:ワグっちはワグネリアン、エタっちはエタリオウ、シュヴァルっちはシュヴァルグラン、スマっちはユーキャンスマイル、マカっちはマカヒキの事である。

出典:GO GO!ともみっち厩舎 0:59~1:10頃

実際にこのような顛末があったかは不明というか多分ないだが、19年のジャパンカップではここで語られた状況が発生している。
まず外国馬がいないという点だが、ジャパンカップが1981年に創設・第1回が施行されて以来37年の長きにわたり海外からの刺客が日本制圧を目的に襲来していた。
ところが近年の傾向として、海外馬を招待するにあたっての施設面での見劣りや日本競馬のレベルアップやスピード重視の傾向が合わさった事で、過去のような「タダ貰い」ができるレースではなく、超長距離と言えるレベルの遠征に見合った価値を海外勢が見出せなくなったため、参戦数自体が先細っていた。
当然ながらJRAも黙って見ていたわけではなく、賞金額の増額に加え国際厩舎の設立(完成は2022年)で誘致体制を進めていたが、残念ながら2019年のジャパンカップでは海外馬の参戦がなくなってしまったのだ。

続いてジャパンカップの位置付けだが、秋古馬三冠競争の2戦目という立ち位置ではあるものの、実際には有馬記念を目標としない中距離メインの競走馬にとってはここが最大目標となり得るレースである。
ジャパンカップが東京2400mという比較的癖がなく地力を発揮しやすい傾向である一方、有馬記念の舞台である中山2500mはトリッキーなコース造形や年末開催により冬枯れの中山の馬場という走りにくい条件が揃っており、実力を発揮しきれないケースも多い。
よって近年は秋古馬三冠路線を皆勤する馬はめっきり減少し、天皇賞(秋)・ジャパンカップ・有馬記念の中から自らに適したレースを選んで出走する陣営が増えており、ここを年内最終戦とする陣営は完璧に仕上げて出走させるので、毎年ハイレベルなレースを見る事ができるのだ。

改めてこの年のジャパンカップの様相を振り返ると、この年は海外所属馬の出走が0頭だったレースとなってしまったのだが、ここから更に友道厩舎所属の馬を除くと出走馬はなんと10頭にまで落ち込んでしまうのだ。
しかも前年のアーモンドアイのような超世の傑がいて回避馬が相次いだならともかく、この年のジャパンカップはどちらかと言えば群雄割拠の様相であった。
そういう意味では今回の友道師の一挙5頭出しだが、少数頭の迫力に欠けるレースになってしまう事態を回避した点において、結果は伴わなかったとはいえ大きな意義があった事は間違いない。

少々本題から逸れたが、今回検証する「友道厩舎から多頭出しした時の成績」について、まずは出走年別の多頭出し回数を見てみよう。

友道厩舎の年別多頭出し回数(数字は多頭出し回数/全出走数)
2002年:0/14
2003年:0/121
2004年:0/163
2005年:0/180
2006年:1/203
2007年:0/215
2008年:5/197
2009年:2/218
2010年:3/225
2011年:6/228
2012年:2/232
2013年:3/240
2014年:2/261
2015年:2/258
2016年:6/234
2017年:6/235
2018年:12/247
2019年:14/259
2020年:12/265
2021年:21/281
2022年:15/292
2023年:12/288
2024年:5/164

各厩舎には調教師毎に馬房数が割り当てられており、成績に応じて割り当て数が変動するシステムとなっている。
馬房の数が多い調教師はそれだけ実績のある調教師であり、預託依頼の増加に備えて馬房も増やされる傾向にある。
現在の友道厩舎は28馬房と栗東では名門・矢作厩舎に次ぐ馬房数を割り当てられているが、これがどういう事かというと「そもそも管理する馬が少なければ多頭出しできるだけの態勢を整えられない」という事でもある。
これについては以下のデータを見てもらいたい。

友道厩舎の多頭出し回数 レース番号別
1R:0/155
2R:0/259
3R:5/290
4R:2/293
5R:2/459
6R:2/362
7R:1/364
8R:3/373
9R:3/570
10R:11/547
11R:95/983
12R:6/353

このように、友道厩舎の多頭出しはメイン競走の第11レースに極端に偏っている。
基本的に第11Rは2勝クラス以上が割り当てられており、当然ながら重賞もこの位置に割り振られるため、ここに偏るのはある意味自然と言える。
逆に言えばメイン級の競走でない限り多頭出しは起こり辛く、上記の年別多頭出し発生数を踏まえると特筆する程の多頭出しは行っていないという結論に行きつかざるを得ない。

では、視点を変えて絶対数ではなく質の方面からアプローチしてみるとどうだろうか。
前述のジャパンカップのように、友道厩舎からの多頭出しによって少数頭でのレースになる事を避けられたレースはどれだけあるのだろうか。
この方面からのアプローチについて、少数頭の概念を「フルゲートからマイナス5頭以上」(例:18頭立てなら13頭以下)と定義して検証を行った。

友道厩舎からの多頭出しが及ぼした影響について
友道厩舎の多頭出しで少数頭レースになる事を回避できた:25回(19%)
・友道厩舎の多頭出しがなくても少数頭レースにはならなかった:86回(66%)
・友道厩舎の多数出しがなくても少数頭レースだった:19回(14%)

前述の通り、友道厩舎の多頭出しが発生するのはメインレースである第11レースが大多数であり、最低ラインが2勝クラス、場合によっては重賞レースが設定されるため、そもそも友道厩舎が多頭出ししなくても少数頭になるレースが少ないのは合点が行く。
しかし、それでも2019年のジャパンカップのように友道厩舎の多頭出しにより少数頭のレースとなる危機を5回に1回のペースで回避しており、1つのレースに有力馬を複数送り出せる高い厩舎力は関西の上位厩舎の実力を如何なく発揮していると言って差し支えないだろう。
最後に、友道厩舎の多数頭出し時の戦績を記し、次の項に移る事とする。

友道厩舎の多数頭出し時成績(最高成績馬のみ)
(20,17,18,16,12,47)勝率15% 連対率28% 馬券率42%

おおともみっち、貴方はどうして「いっつも外枠」なの?

続いての検証にあたり、動画の1:22頃をご覧いただきたい。

いっつも 外枠 ともみっち

出典:GO GO!ともみっち厩舎 1:22頃

これは前述の項目のように、イメージが先行した要素ではなく、実際の友道師の嘆きが元ネタとなっている。
動画内で言及されたのは有馬記念における枠順抽選後の反応を記した以下の記事である。

この記事において友道師は「うちの馬はいつも外枠ばかり」と漏らしており、枠順抽選で12番を引き当てた吉田隼人騎手も「もっと内が欲しかったです……」と苦笑いしている。
外枠引きは競馬のシステム上致し方ない所であり、吉田騎手も友道師も承知の上だろうが、実は有馬記念には以下のようなデータが存在する。

有馬記念における馬番・枠順データ(2022年時点での過去15年分)
6枠成績(2,1,2,10)
馬番12番成績(0,1,0,14)

このように、全体の成績が芳しくないだけでなく、ポタジェ自身もここまで走った最長距離は2200mと距離不安を抱えており、しかもその両方とも馬券外に敗れている事から可能な限り距離ロスの少ない内を引きたかったであろう事は容易に想像できる。
しかし、天は無常にも友道陣営に外枠配置の運命を突きつけており、結果としてはポタジェは12着に敗れてしまっている。

有馬記念にて大外8枠を引いた歴戦の名騎手の表情。8枠という配置の重みを強く感じさせる。

しかしここで友道師の「うちの馬はいっつも外枠ばかり」という発言について、以下の疑問が浮かび上がる。
「いつも」というほど友道厩舎の馬は外枠に配置されているのか。
今回はこの点について検証していきたいと思う。

まず、前提条件について「外枠」という言葉については人それぞれ定義に揺れが発生する事が多いワードであるため、ここでは前述の記事に則り、6枠~8枠を外枠として定義する。
ご存じの通り競馬は基本的に1から8までの枠番号が割り振られており、観客からも騎手が被っている帽子の色でどの枠順の馬かを判別する事ができる。
そして、6枠以降を外枠として定義する場合だが、この点について一点注意すべき点がある。
それは「競馬の最低開催頭数は5頭」という要素であり、5頭立てとなればそもそも6枠が存在しない事態となってしまうのだ。
そのため、この項目では5頭立てだったレースを省いた全4997戦を検証範囲として再設定の上で検証に臨みたい。

友道厩舎における外枠(6枠~8枠)戦績
6枠時(83,92,68,53,50,310)勝率12% 連対率26% 馬券率37%(競争中止5含む)
7枠時(107,70,59,67,76,384)勝率14% 連対率23% 馬券率30%(競争中止2含む)
8枠時(117,82,86,67,54,387)勝率14% 連対率25% 馬券率35%(競争中止2、降着1含む)
外枠時通算成績(307,244,213,187,180,1081)勝率13% 連対率24% 馬券率34%(競争中止9、降着1含む)

外枠のメリットとデメリットだが、内枠に比べ距離のロスが増えるという制約がある反面、ドン詰まったり内に閉じ込められるというコース取りの不利を回避できる確率が上がる(終始外々を回らされてバテるリスクもある)というのが挙げられる。
当然ながら馬の脚質や気性によって有利不利が異なってくるので一概に内外どちらが有利とは言い切れず、統計の面でもトータルでは内外どちらが有利かという点においては明確な結論を得る程の差は開いていない。
(ただし、東京ダート1600mのように明確に枠順の有利不利があるコースは存在しており、「あくまでJRAで行われたレース全てにおいて」という括りである点に注意)

そんな中で友道厩舎の外枠時成績を見てみると、前述の厩舎通算成績が勝率14%・連対率25%・馬券率35%であり、外枠時の成績は勝率13%・連対率24%・馬券率34%と明確に差が出ているわけではなく、統計の面で見れば至極順当な結果ではある。

では、もう一つのポイントである「外枠を引いてしまう確率」という観点ではどうだろうか。
友道師の言う「外枠」に配置される確率だが、単純計算で行けば3/8、つまり37.5%とそれなりに高い数字になるのだが事はそう単純ではなく、前述のようにそもそも6枠以降が存在しないレースも存在する。
(ただし、8頭登録→1頭取り消しで7頭立てに8枠が存在した(13年の矢車賞(1勝クラス)など)事例はあるので、イレギュラー事例においてはこの齟齬が発生する場合がある)
このように、出走頭数で前提条件が変動するため、このテーマについては「各レースにおける出走頭数をベースに、どの程度の割合で外枠に配置されたか」という観点での分析を行う事とした。
ちなみに、このパターンにおける各頭数での6枠以降を引く確率は以下のようになる。
6頭立て:1/6(16%)
7頭立て:2/7(28%)
8頭立て:3/8(37%)
9頭立て:4/9(44%)
10頭立て:5/10(50%)
11頭立て:6/11(54%)
12頭立て:6/12(50%)
13頭立て:6/13(46%)
14頭立て:6/14(42%)
15頭立て:6/15(40%)
16頭立て:6/16(37%)
17頭立て:7/17(41%)
18頭立て:8/18(44%)
全パターンを踏まえた想定平均値:40%

この基準を踏まえ、この値を上回る外枠配置率を叩き出していれば友道師の「うちの馬はいっつも外枠ばかり」という発言も的を射たものとなる。
13パターンほどあるので、「いっつも」という言葉を使っている以上は最低でも過半数の7つ、ネタ的な観点で取れ高が高いので何なら10パターン程基準値に達して欲しいものであるが、果たして如何ほどだろうか。

友道厩舎のレース出走頭数別外枠引き率
6頭立て:3/18(16%)(基準値16%)
7頭立て:21/67(31%)(基準値28%)
8頭立て:45/137(32%)(基準値37%)
9頭立て:101/205(49%)(基準値44%)
10頭立て:158/286(55%)(基準値50%)
11頭立て:173/305(56%)(基準値54%)
12頭立て:217/398(54%)(基準値50%)
13頭立て:224/505(44%)(基準値46%)
14頭立て:212/452(46%)(基準値42%)
15頭立て:217/528(41%)(基準値40%)
16頭立て:511/1352(37%)(基準値37%)
17頭立て:66/167(39%)(基準値41%)
18頭立て:264/575(45%)(基準値44%)
平均値:41%(基準40%)

当検証の前提条件として、小数第一位以下は全て切り捨てとしているのだが、それでも本当に10パターンで基準値に到達、うち8パターンは基準値を突破するとは想定外であった。
特に10頭立て・12頭立てにおいては基準値をしっかり上回っており、確かにこんな状況であれば友道師も「うちの馬はいっつも外枠ばかり」と嘆きたくなるのも致し方ないだろう。

ただ、実の所を言うと記事で言及される切っ掛けとなった「有馬記念の枠順抽選に限っては」友道師の外枠配置率は基準値より低かったりする。
これまで友道師は回数にして11回・延べ13頭を有馬記念に送り込んでいるが、枠順の配置は以下のようになっている。

友道厩舎の有馬記念での枠順振り分け結果
1枠:2回(09年アンライバルド・14年ヴィルシーナ)
2枠:4回(12年スカイディグニティ・16年ムスカテール・18年マカヒキ・19年エタリオウ)
3枠:2回(20年ワールドプレミア・23年ドウデュース)
4枠:2回(19年ワールドプレミア・21年ユーキャンスマイル)
5枠:2回(17年シュヴァルグラン・23年ヒートオンビート)
6枠:2回(22年ポタジェ・23年ハーパー)
7枠:1回(16年シュヴァルグラン)
8枠:3回(18年・19年シュヴァルグラン・20年ユーキャンスマイル)

有馬記念のフルゲートは16頭であり、前述の表に則れば外枠配置の確率は6/16(37%)となる。
友道厩舎が出走した年の有馬記念は全てフルゲートでの出走であるため、そのままこの値を基準値として採用できるのだが、それを踏まえて考えると実際に外枠を引いた回数は6/18、つまり33%となるのだ。
上記で掲載した画像の反応のように、有馬記念での外枠、特に8枠は鬼門も鬼門と言うべき立ち位置であり、23年の出走前時点では8枠の割り当てとなる馬番15番が(0,0,1,12)16番に至っては(0,0,0,13)どころか、実質的に第一回と言える中山グランプリ時代を含めても馬券に絡んだ馬がいないというかなり絶望的な状況だった。
結果として15番に配置されたスルーセブンシーズは残念ながら12着に敗れてしまったが、16番に配置されたスターズオンアースは1着のドウデュース(ちなみに友道師の管理馬であり、3枠だった)に及ばなかったものの、半馬身差で2着に入る歴史的大偉業を成し遂げている。
そういう意味では友道厩舎にとっては長距離で枠にも恵まれている格好の舞台ではあるのだが、現時点での友道厩舎の有馬記念成績は(1,0,3,0,2,11)となっている。
今後の友道厩舎管理馬の更なる有馬記念での好走に期待したい所だ。

おわりに

今回は友道厩舎にターゲットを絞って様々な観点から調査を行ったが、結論としてはやはり関西トップクラスの厩舎らしく高い実力を備えている事を改めて実感した。
現在の友道厩舎の層としてはエースのドウデュースを筆頭に、本年の皐月賞馬ジャスティンミラノ、動画でも出てきたハーパーサトノグランツヨーホーレイクといった重賞馬が脇を固める強力な陣容となっている。
そうでなくとも現在の管理馬68頭中、11頭が獲得賞金1億円のラインを突破しているというのは友道師の高い調教・管理技術を如何なく示している。
当然ながら現在注目されていない馬であっても、明日の友道厩舎のエースは俺だ・私だと一気に成り上がるチャンスを虎視眈々と狙っているのは言うまでもなく、現時点で日本馬最高のレーティングを獲得したイクイノックスを上回るような優駿が現れる事を願ってやまない。

最後になりますが、この記事の題材とさせていただいた「GO GO!ともみっち厩舎」の作者ぽようう氏、友道師をはじめとする友道厩舎スタッフご一同様、管理馬の皆様に最大限の謝意と感謝を捧げます。
本当にありがとうございました。


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